クロックワーカーの遺したモノ

杏珠

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一章 歪んだ生活

第十三話 一緒にいる理由

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 暗がりからうめき声や水音が時折聞こえる。不気味で無機質な石の道をフィロの持つランタンの灯りを頼りに二人は入り組んだ地下牢の奥へと進んでいた
「ラルカはぐれないようにな?ここに照明なんてないから戻れなくなるぞ」
「わかりました…でも本当に真っ暗で何も見えないですね。人がいるとは思えない…声がしてるから居るんでしょうけど。それにどこまで進むんですか?結構歩いてますよね」
「地下牢の規模は本館の地下全体くらいあるんだよ場所は本館と少しズレてるけどね。あとラルカに見えてないだけで一つの牢に大体五人位居るからあんまり牢の方に近付くと足掴まれるよ?w」
 からかい半分でそう言ったんだろうな…でも…私からしたら怖いよ…
 静かに後ろから震えた手で裾を掴んできた
「意地悪しないでください…というかお兄様見えてるんですか?」
「基本的には気配だよ?ラルカも分かるようになると思うけど…でも俺は夜目が効く方だからな、ランタンの灯りがあれば多少は見えるさ。まぁ完全な闇の中じゃ無理だけど…それに俺等の故郷が月明かりくらいしかなかったんだよね」
「慣れ…っていうことですか…でもお兄様達はこの町で生まれた訳じゃないんですね。というか王国生まれでは無いんですか?」
「うん。こっちに来たのは五年くらい前だな…王国との関わりができて面白そうだったからさwでもこの屋敷も来た時はこんなんじゃなかったからな…」
 五年前…か私もその頃から王国に居たのかな?思い出せないけど…
「屋敷…お兄様達が来る前に誰か他の方が住んでたんですか?この大きさだと貴族様…ですよね?」
「誰が住んでるとかではなかったよ?領主が後ろ暗い事隠す為にこっそり建てたお屋敷ってだけwまぁ良くある話だね…貴族の所有物ではあったのかな?そんな屋敷だったからこっち来た時に脅して奪い取った」
 脅した…お兄様らしいな
「でもこの規模なら管理している人達が居た筈じゃ…」
 ラルカが呟いた言葉を聞いて少し当時を思い出したフィロは笑いながら言った
「あぁ居たなw使用人とか…兵士とか?でもフシールが最初に屋敷に入って行ったから逃げ出した奴以外は俺は知らないよ」
「逃げ出した人って…」
「…敷地から出る前に刀の錆になった…かな?w」
 そう言いながら刀に手をかけた。普段から持ち歩いては居るけれどラルカが来てからフィロはまだ一度も戦うために刀を抜いてはいない。ラルカの前で抜いたのも最初にハロスと対時した時や【真っ黒な剣なんて初めてです。それにこんなに長いブレイドも…見てもいいですか?】と言われ造りや名称をラルカに教えた時くらいだ。だからこそ想像がつかなかった
「逃げなかった人達はとっくにお姉様に撃たれてるんでしょうね…」
「でもあいつ面倒くさいこと嫌いだから片付けする為に何人か生かしてたな」
「そうなんですねw…あの、お姉様も…それからエトアルさんとリーベリアさんもお兄様の事【化け物】とかって言ってましたけどお兄様は一体どれほど強いんですか?」
「化け物って…あの人達がそう言ってるだけでそこまで強くないさwそうだな…..フシールが本気出したらどっちが勝つか分からないくらいかな?」
「えっ、そうなんですか?」
「銃と刀じゃ相性悪いしフシールの気分が良ければあの子は最強だよ?戦闘中でも頭回ってるし俺のことも良く知ってるから本能的に近付いて来ない。俺が一番相手にしたくない奴ではあるな…めんどくせぇだろ?」
 めんどくさい…でもそう言ってるけどお兄様楽しそう
「そういえばお姉様もお兄様とは戦いたくないって言ってますよねw喧嘩ばかりだしお互いの事を恐れていても一緒に居るなんて、本当に大事な存在なんですね」
「どうだろうな…大事かって聞かれたら俺もフシールも分かんないって答えるぞ。例え兄妹でも敵に回るなら容赦はしねぇ…それはアイツも同じだろうからな」
「…それでも一緒に居る時のお兄様達は楽しそうです。もっと前から私も一緒に過ごせてれば良いのにって…どうしても思っちゃいますよね」
「…前…ねwホントに俺がラルカから奪った記憶を知りたいとか思わないの?」
 あれからも聞く事はあったがラルカは今の生活を望んでいるようだった
「過去の記憶はどうでもいいんです。今の私にはお兄様達が居るし、それに私は魅せられてしまいましたから…目の前に面白そうなことがあるなら楽しむべきでしょう?」
「そういう考え方は本当に俺等の妹なんじゃないかと思うわwまぁラルカが今まで生きて来て染み付いてるものなんてそう簡単には消えないから、ずっと無くならないその丁寧口調とかも昔が原因だろうな」
「過去の私の事は私だって知りませんよ…?」
「でも俺等が教えなくても一通りの事はできるよな。何者だったんだろうな~w少なくともただの町娘…とかではねぇよなぁ?」
 どうなんだろう…でもなんとなくわかるだけだ
「それ…知った所でメリットありますか?」
「ん~?面白そう」
「お兄様の行動理由って大体それですよね…ってあれ、行き止まり?いや…扉がある…」
「話してたら着いたね。あの部屋に地下の管理に関することは大体ある」

 フィロが鍵を開けて部屋の中へ入るとランタンを部屋の中央に置いた。炎に照らされた室内には資料が並んでいる棚と拳程の赤い宝石、それから大量の鍵があった
 これ…鍵の形が全部違う?それにこの宝石…少しだけ光ってる
「それは牢の鍵だよ、ダミーもあるけどな。こっちの資料はここに居る奴等の名簿みたいなものかな…管理は俺じゃないけど」
「この赤い宝石は何ですか?」
「それは投影石だよ」
 管理室にあった赤い宝石は投影石という魔法石の一つだった。魔法石という言葉の通り魔力を篭めておくことができ、場所を指定すればそこの映像がリアルタイムで投影石上空に映し出される。魔法士がその存在を消されてから表には魔力の篭った魔法石は出回らなくなったが、リーベリアを通してこの屋敷には魔法関連のものが多く存在している
「投影石…」
「屋敷内なら見れるよ?監視する為のモノ…かな?w気に入ったならまだあるからあげようか?」
「良いんですか?」
 綺麗なもの…私のも貰えるなんて
「うん、後で渡しに行くよ。魔力が無くなったらリーベリアさんに言えば篭めてくれるから」
「わかりました」

 科学が発展しているわけではないこの世界で魔法の力はとても便利なものだった。しかし王族からすれば【魔法】も【武力】 もそして…【人知を超えた者】 も全て脅威でしかなかった
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