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二章 共に逝きる

第二十一話 悪夢

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 ~星の図書館 植物園~

 王都から帰ってきたハロスは植物園の隅で占いをしてるエトアルの様子を見ていた

エトアル「また来てね~」

ハロス「相変わらず人気ですね」

エトアル「でも最近は君目当てで来る子も多いんだよ~?」

ハロス「そうなんですか」

エトアル「うわ~興味無さそ」

ハロス「実際無いですし」

リーベリア「エトちゃん組紐ってどこにある?って…帰ってきてたんだね」

ハロス「ついさっき」

エトアル「組紐ならカウンターの引き出しにあるよ」

リーベリア「ありがとう。ご飯作っちゃうけどハロスくん食べる?」

ハロス「いえ、少し出掛けるので帰ってからいただきます」

リーベリア「了解」

 星の図書館を出てハロスは町の外れへと向かいだした

 ~町外れの一軒家 森の入り口~

ハロス「…五年前…ここから全部…」

【兄さん。行ってくるね!】

ハロス「ラルカ…」

 ~屋敷 ラルカの部屋~

ラルカ「もうすぐ新月かぁ…月明かりで本読めなくなるから嫌いなんだよね」

 窓辺に座っていた少女は空を見上げ呟いた

フィロ「ラルカ、入って平気か?」

ラルカ「お兄様、大丈夫ですよ」

フィロ「また読書?」

ラルカ「知らない事を知れるから好きなんですよね」

フィロ「そっか」

ラルカ「どうされたんですか?」

フィロ「侵入者」

ラルカ「いつぶりですっけ?」

フィロ「三ヶ月くらいじゃねぇかな…人数そんな多くなかったからラルカ行ってみる?」

ラルカ「楽しそうですね。是非」

 ラルカは本を綴じ部屋を後にした。残ったフィロは先程の少女と同じように空を見上げる

フィロ「新月…か、あれから五年。もう十分だろ?少年」

 ~星の図書館 ハロスの部屋~

【お前達だけでも逃げろ!この国は終わりだ!】

【貴方があの子の家族になってあげて】

ハロス「っ…待って!はぁ…はぁ…夢…?」

 図書館に帰ってきて眠っていたハロスは深夜に飛び起きた

ハロス「っクソ…」

 忘れられない悪夢。ただの夢であって欲しいと何度彼は願ったのだろうか…

ハロス「絶対に…助ける…俺が…!」

エトアル「ハロス君、大丈夫?」

ハロス「エトアルさん…すいません起こしちゃいましたか?」

エトアル「いや起きてたからそれは良いんだけど…ホントに大丈夫?」

ハロス「大丈夫ですよ」

リーベリア「嘘つけ。無理して笑ってるから引き攣ってるよ?」

ハロス「リーベリアさん…」

リーベリア「悪夢見ない薬でも調合してこようか?」

ハロス「いえ平気です」

リーベリア「そっか…まぁ俺は調合戻るわ」

エトアル「私も部屋戻るね。なんかあったら呼んで」

ハロス「はい」

 二人が部屋を出た後ハロスは付けていたネックレスを掴んだ

ハロス「レヴナント」

レヴナント「よぉアンクロウ室内で呼ぶなんて珍しいなぁ」

ハロス「お前は…どうやってあの場所から逃げ出したんだ?最期の時まで父さんの側にお前はいたはずだろ」

レヴナント「…さぁ?召喚されてない間のことは忘れちまったなぁ」

ハロス「嘘ばっかりだな」

レヴナント「悪魔の所有物だからな」

ハロス「…」

レヴナント「珍しいなお前が俺にシーユのことを聞いてくるなんて」

ハロス「今は俺以外にお前しか父さんの事を知らないからな」

レヴナント「アンクロウにとっては俺の力を引き出すのはもう限界か?」

ハロス「勝手にほざいてろ」

 沈黙を切り裂くようにレヴナントが音を発する

レヴナント「嬢ちゃんの元へはいつ行くんだ?」

ハロス「明後日の新月。闇に飲まれてる日の方がお前の力が強いからな」

レヴナント「頼むから壊してくれるなよ?」

ハロス「並の武器じゃ刃こぼれすら無理だろ」

レヴナント「いやぁ…ココらへんは妖気が漂ってるからなw」

ハロス「妖気?」

レヴナント「まぁ気にすんなwさっさと寝ろよアンクロウ」

ハロス「…全部終わったら砕く」

レヴナント「お~怖い怖いw」

 ハロスが魔力を流すとレヴナントはネックレスへ姿を変え部屋には静寂が流れた。微かな月明かりに照らされハロスの髪は白く光り輝いた。毒に蝕まれていることは本人すら知らないのだろう
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