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攫われるカイル
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秋の気配を感じて、リスさんが冬支度を始めました。
リスさんは、美味しそうな木の実や種を見つけては、巣穴に運んだり、土に埋めて隠したりしました。
リスさんは小さいので、木の実を少しずつしか巣穴に運べません。
「ふぅ~。1度にたくさん運べたらいいのに」
リスさんの呟きを、ルカとカイルが聞いていました。
「リスさん、私たちも一緒に運ぶわ」
「いいの? ありがとう! ここにある木の実を運びたいの」
「そう。じゃあ、これで運びましょう。便利なのよ」
ルカがポケットから出したのは、唐草模様の風呂敷。
ルカはかなり渋い趣味のようです。
風呂敷を広げ、リスさんの運びたい木の実を全部入れると、よいしょと背負うルカ。
ひと仕事終えた泥棒さんに見えなくもない風情です。
「助かるわ~、ルカちゃん」
「これくらい、お安い御用よ」
リスさんの巣穴がある木の下で、風呂敷から出した木の実を土の上に置くと、異世界の木の実がいくつか自発的に土に根を張り、にょきにょきと成長しはじめました。
そのうちのひとつの木が細枝を伸ばし、カイルを捕まえると空へと伸びてゆきました。
「カイル~!」
「ルカ~!」
カイルを追いかけ、木を登ってゆくルカ。しかし、ルカを振り落とそうと木の幹がぐねぐねと曲がっては揺らし、無数の細枝はルカを払い落とそうとしてきます。
「わはは!こちょこちょしないでよ~!カイルを返しなさいってば!」
木の幹や枝の姑息な攻撃をかわしながら、木を駆け上がってゆくルカ。
(連れ去られたお姫様を奪還する話はよくあるけど、いつもカイルが攫われて私が追いかけてゆくという構図。イケメン過ぎるのも問題だわ~!)
木の幹の頂上には大きなヒマワリのような花が1輪咲いていて、大きな口を開けています。
カイルが花の口に飲み込まれる寸前、ルカはカイルと一緒に花の中に飛び込みました。
「まぁ、だぁれ? あなたまで招待した覚えはなくってよ」
ヒマワリの花を模したような奇天烈な服を着た少女が腕組みをして睨んでいます。
「おまけにカイルに抱き着くなんて!」
きぃぃ!とハンカチを噛む少女。破れたついでにムシャムシャと食べています。
「ルカ、うれしい。僕、ずっとこのままでいたいよ」
「なに言ってるの。今、枝をほどいてあげるからね」
しかし、枝はほどけず、少女のところへ枝とカイルは引き寄せられていきます。
少女はそれはうれしそうにカイルを抱きしめました。
「ふふ。やっと捕まえた。ずっと、唐草模様の風呂敷の中からカイルを見つめていたのよ。ねぇカイル。ここで私と暮らしましょう。美味しい木の実が食べ放題だし、ヒマワリを模した服も着れるわよ♪」
あまり羨ましくない条件を出されて絶句するカイル。
木の実はあまり好きではないし、ヒマワリの花のような服も、着たいとは思えない斬新なデザインです。股間に大きなヒマワリの花がポンと付いていて、お盆芸かと見間違われるかもしれません。まだ、イロモノにはなりたくないカイル。しかし、少女を侮辱するわけにもいきません。
「僕は、木の実が食べれなくても、ヒマワリの服を着れなくても、ルカと一緒に居たいんだ」
カイルは少女をまっすぐに見て、言いました。
「えぇっ? 木の実が食べれなくても、ヒマワリの服を着れなくてもいいですって?! お尻にもヒマワリが付いてるのよ? 本当にいいの? 後悔しない?」
こんな好条件を蹴るなんて信じられない!という瞳でカイルを見つめる少女。
「ええ。僕はルカさえ傍にいてくれれば、それで満足なんです」
お尻や頭にもヒマワリが付いてる服なんて着たら変態かと思われちゃう、とは言えないカイル。
「そんなに、ルカさんがいいの? ルカさん、どうやってカイルを虜にしたの?」
「虜になんて…あっ、そうだ! 花の口を開けて太陽の光を見せてくれたら、教えますよ!」
(とにかく、ここから脱出しなきゃ!)
ルカがそう言うと、頑丈に閉まっていた花の口がゆっくりと開きはじめました。
ルカは、少女のところへ移動し、少女とカイルを抱いて、外へと瞬間移動しました。
秋晴れの空の下を、ふたりを抱いたまま飛び回ります。ジェットコースターみたいに回転したり、急降下したり。
魔法で、昼でも見れる花火も上げました。空を覆いつくすような大きな滝のような花火に森の動物たちも大喜びです。
「わかったわ、ルカちゃん。私もカイルを楽しませてあげれるような女の子になる」
少女は微笑んで、カイルをルカに返しました。
「カイルを捕まえないって約束してくれるなら、また会いましょう」
「うん。カイルを独り占めなんて贅沢よね。またふたりで会いに来てね」
少女を花の上に降ろすと、ルカとカイルは家に帰ることにしました。
空を飛んで帰る途中、カイルはルカに言いました。
「ルカはいつも僕を助けに来てくれるね」
「これからも、イケメン王子を護衛させていただきますよ?」
「なるべく攫われないようにするね?」
「そうして」
「でも、ルカが僕を追いかけて来てくれるのが嬉しいんだよね」
「だめだよ!心配するから」
「ルカが悪いんだよ。僕の心を攫っていくから!」
「えっ?カイル、待ってよ~!」
大空の下、じゃれあいながら飛んでゆくルカとカイルでした。
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森の樹とカイルのプレゼント
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うららかな昼下がり。
カイルとのんびり空中散歩していた私は
静かな湖面のそばに 美しい花の樹を見つけた。
「カイル、きれいな紅い花が咲いてる。近くで見ましょう」
「そうだね」
着地して その大木を見上げると
ごつごつとした太い頑丈な幹
太い枝の先々には 大輪の薔薇を肉厚にしたような 光沢のある華やかな花々が
美しさを競うように 咲き誇っていた。
「とても綺麗ね」
「こんなに綺麗な樹を ルカと一緒に見れて幸せだ」
私たちは うっとりと樹々を眺め 動けずにいると
樹は気を良くしたのか 満開のひと房の枝を 私たちの前に落としてくれた。
それは 桜の枝先のように花がびっしりと並んだ大きな房。
「私たちにくれるの? お花さん、ありがとう」
樹は まるで 頷くみたいに 優しく揺れた。
カイルは それを手に取ると 優しく笑って、
「ルカに花冠を作ってあげる」
と言って座ると 器用に枝を編み始めた。
「カイルって 編み物が上手ね」
「そうかな。なぜか冬になると ももひきを編んでほしいって 大勢の女の子に頼まれるんだ」
「そう」
「つい虎柄に編んじゃうんだよね」
「ああ、それでヤギ子さんのももひきが虎柄だったのね。妙に可愛かったわ」
「さぁ、出来たよ」
カイルの会心の出来!
紅い花が何十個も付いたキラキラ輝く王冠のような花冠。
私のために編んでくれたのね。
じぃぃんと 胸が熱くなる。
カイルの優しさに。
「僕だけのお姫様。とてもきれいだよ」
カイルがそっと 花冠を私の頭に乗せてくれた。
その瞬間。
私は後ろにバターンと倒れた。
「えっ?ルカ?大丈夫?なんで?」
焦って私を抱き起すカイル。
この花冠 重過ぎるよ~! 一体何キロあるの~?
異世界には とても重い花があり
カイルはとても力持ちになってると知った 春の午後。
「ルカ!今すぐ王都の病院に連れていってあげるからね!」
「大丈夫だよ。少し重かっただけだから」
軽量と保存の魔法をかけて
私の部屋で ずっと飾り続けるね。
************************************
モグタン なりゆきで
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ぼくは モグラのモグタン。
土を掘るのが 得意なんだよ♪
異世界モグラのぼくは 力持ち。
どんどん 掘り進んでしまう。
今日も楽しく 穴掘りしていると
蟻さんの巣穴の壁を 突き破ってしまった。
「蟻子さん、やっと二人きりになれたね」
「蟻夫さんっ!」
ひしっ!
とラブラブで抱き合ってるところへ
バリッ!ズボッ!
壁に穴を開け コンニチワしてしまった。
わざとじゃないんだけど・・
「すみませ~ん! 穴掘ってたら勢い余ってズボッといっちゃいました!
お詫びに 僕特製のピンクのハート模様の壁紙を貼っておきますね♪
あっ、気にせず さっきの続きをどうぞ!」
「できるわけないだろ!」
「もぅ~、その壁紙、蟻美さんの巣穴でも見たわよ。
あちこちの壁を破ってるでしょう!」
小っちゃい蟻さんに 腕組みして仁王立ちされてしまった。
そうなのだ。
蟻さんの巣穴だけじゃなく、地下魔物の住処も壊しちゃったし、
地下ダンジョンの壁にも穴を開けて 叱られた。
地下アイドルもいるし どこを掘ればいいのやら。
などと考えながら 無意識に深く掘り進んでいると 水脈に当たった。
「やった! 井戸を作れる!」
ぼくは 井戸を作って その近くで畑を始めた。
土を耕し 種を蒔く。楽しいな♪
気付けば 広大な畑を作ってしまっていた。
数か月後。
「ズンタッタ大根にポンポコかぼちゃ、ヒョロ~リきゅうり、妖怪キノコ、
他にもいろいろ 収穫が楽しみだな。自給自足、楽し~♪」
畑で水やりをしていると 柵の向こうから ぼくを見つめる大勢の村の仲間たちがいた。
「ねぇ、モグタン。そのヒメスモモ、売ってくれない? おいしそう」
「私は ピーヒャラ豆がほしい!」
「ぼくにも売って!」
いつの間にか モグタンの作物は大人気!
それから モグタンの採れたて八百屋は 毎日大繁盛なのでした♪
************************************
ポムの真心
************************************
♪ピ~ヒャラ、ピ~ヒャラ♪
♪ピ~ヒャラ、ピ~ヒャラ、ピ~ヒャララ♪
青空の下、今日も賑やかに ピ~ヒャラ豆が鳴いている。
モグタンの獲れたて八百屋で買ってきたピ~ヒャラ豆は
根っこが付いたままピョンピョン跳ねて 人懐っこく笑うと
「庭に植えて!」と言ったので
茹でて食べるつもりだったとは言えず
庭で繁殖活動に励むピ~ヒャラ豆を見守る日々。
ピ~ヒャラ豆は 枝豆をジャンボにした感じのお豆さん。
とても聴力が優れていて よくしゃべるの。
「ルカちゃ~ん!カイルく~ん!喉が渇いた~!お水ちょうだい!たっぷりね!ピ~ヒャララ♪」
魔法で小雨を降らせてあげると大喜び♪ 可愛いな♪
鳴き声が笛の音みたいで お祭り気分になってくるし。
「「「ズンタッタ、ズンタッタ♪」」」
「「「ズンタッタ、ズンタッタ♪」」」
ピ~ヒャラ豆の隣では ズンタッタ大根たちが踊ってる。
大根の先が足みたいに二つに分かれてて 歩くのがとっても上手。
この子も可愛くて食べれないなぁ・・^^;
「この先のゴロゴロ沼で 子供の悲鳴が聞こえたわ!
ルカちゃん、カイルくん、助けてあげて!
ワニに食べられちゃう!ピ~ヒャラ!」
「「「僕たちも応援に行く、ズンタッタ!」」」
というわけで ズンタッタ大根有志10本を背中に乗せて 私とカイルは空を飛んだ。
ポンポコ山を越えた先に ズンドコ谷があり そのそばにゴロゴロ沼があった。
「ふっふっふ。美味そうな坊ちゃんだぜ。久し振りのご馳走だ」
不敵な笑いを浮かべながら よだれダダ洩れのワニに
小さな男の子は 恐れをなして腰を抜かしていた。
「僕を食べちゃダメだ! この龍の髭でママンの病気を治してあげるんだから!」
必死で叫ぶ男の子に ワニは冷たい目で、
「坊ちゃんの握っている物は 龍の髭ではない。ただの枯れた野草だ。
そんなものは 何の役にも立たない」
「嘘だっ! 僕を食べたいからそんなことを言うんだろう!」
「活きがよくて 美味そうだ」
「キャ~~ッ! いやぁん!」
「オカマの振りしてもダメだっ!」
「えぇっ!? これで逃げれると思ったのに・・」←なんで?
じりじりと間合いを詰めてくるワニ。
絶対絶命の その時、
「「待って~~~っ!!」」 by ルカ&カイル
「「「ズンタッタ大根、参上!!」」」 by ズンタッタ大根ず
「ママンのところに連れていってあげるよ。僕の背中に乗って、案内して」
カイルが男の子を背負うと
「「「ここは僕たちに任せて! ルカちゃん、2時間後に迎えに来てね!」」」
ズンタッタ大根ずが 自信満々に胸を張った。
「えぇっ? 大丈夫なの? 無理しなくていいのよ?」
「「「大丈夫だよ、ルカちゃん。早く行って!」」」
大根ずに背中を押され、
「そ、そう?」と空を飛んだけど、
こっそり魔法で 大根ずの皮を薄い鋼鉄製にしておいた。
数キロ飛んだ森の中に 男の子の家はあった。
小さな木造のお家には 体調の悪そうなお母さんが男の子の帰りを待ちわびていた。
「ママ~~!」
「ポム!心配してたのよ!」
抱き合い 無事を喜びあうふたり。
「ママンに龍の髭をあげたくて! これできっと病気が治るでしょう?」
必死に訴えるポムに 頷くママ。
それが 龍の髭じゃなくて 枯れた野草だとしても ポムの真心を受け止めたい気持ちが溢れていた。
ママは涙ぐみ 微笑むと
「ありがとう、ポム。でも もうこんな危険なことはしないで。
ポムが元気でいてくれないと ママは悲しいのよ?」
「ごめんね、ママン」
ポムは小さな手で そっとママの涙を指で拭った。
「ポムを助けていただき ありがとうございました」
「ありがとうごじゃいました」
私とカイルに深々と頭を下げるポムママンとポム。
もらい泣きで滝涙のカイル。
なんとかしてあげたいなぁ・・。
あれ・・?
ポムママンのお腹に黒い闇のようなもやが見える・・。
もしかして・・
ダメで元々。やってみよう。
手のひらに 体内のエネルギーを集め 念を込める。
(ポムママンのお腹の闇よ、消えて!!)
黒い闇を包み込むように、そっとエネルギーを放った。
一瞬、部屋が柔らかな光に包まれ 闇が消えてゆく。
ポムママンの顔色は みるみる良くなっていった。
土気色の肌が 桃のような薄ピンクの明るい肌に。
「ママンが若くなっちゃった!」
「体が軽いわ・・あんなに苦しかったのに、全然苦しくないの・・!」
ポムママンとポムの幸せそうな笑顔に 胸が熱くなる。
「「よかった・・・」」
うわ~~ん!と 皆で嬉し泣きしていた頃、
ズンタッタ大根は ワニとダンスを踊っていました。
「くそう! 俺様は肉食だから大根を食べる気にもならないし、
楽しそうに皆で踊るから つられて踊っちゃったじゃないか!」
「「「イェ~~イ♪」」」
通りすがりの狸さんのポンポコ腹太鼓伴奏も効いたようです。
踊りすぎて腰痛になったワニを じっと見つめる大きな黒い影がありました。
「美味そうなワニだな。食ってやろう」
巨大怪獣が涎を垂らしながら ワニを見下ろしていました。
「ひぇ~~っ! 俺はワニの被りものをしたリスですよ! 大してお腹もふくれませんよ!」
真っ青になって苦しい言い訳をするワニに、
「そんな訳あるか! 今日のメインディッシュ! 待て~~っ!!」
「待たない~~~~!!」
腰痛のワニは必至こいてズンドコ谷の隣の妖怪山まで逃げましたが
そこも妖怪がいっぱいで狙われ
とにかく頑張って逃げたのでした。
************************************
妖怪ウナ~ギ~
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爽やかな風を浴びながら ふたりで青い空を飛んでいると
突然 後ろからやってきた 空飛ぶ大きな鰻にカイルが捕まった。
腕が生えているところを見ると・・
「妖怪ウナギね! カイルを放しなさい!」
妖怪ウナギは カイルを抱っこして放さない。
「妖怪ウナ~ギ~よ! そこは譲れないわ!」
譲れないのか・・ウナギもウナ~ギ~も たいして変わらないような・・
それはそれとして
「なんて美しい虎の子。魔王様への献上品にしよう。
この子のエネルギーは なんて美味しいのかしら・・」
「カイルのエネルギーを吸ってるの? だめよ!」
この手は使いたくなかったけど 仕方ないわね!
妖怪ウナ~ギ~に飛びつき
こちょこちょこちょこちょ~♪
「うははははははは!ちょっと!こそばゆいじゃないの!
うひょひょひょひょひょひょ!ひ~~っ!あっ、そんなとこっ!やぁん!うひょひょひょひょ~~!」
「カイルを放すのよ~~!こちょこちょこちょ~!」
「もう、ダメッ!」
バシン!
妖怪ウナ~ギ~の尻尾が 私の後頭部を蹴り上げ カイルを抱いたまま逃げた。
尻尾をくねらせながら豪快に空を泳ぎ 妖怪山へ向かってる!
「カイルを返しなさ~~い!」
その時、妖怪を追いかける私を見ている漁師さんたちがいた。
「あれ、巨大鰻じゃないか?」
「おぉっ! かば焼き1000人分くらい取れそうだ!」
「残暑の疲れを吹っ飛ばすぜ!」
「残暑が暑いざんしょ~!」
「おやじギャグ炸裂!」
「あまり疲れているようには見えんが 獲れるものは獲っておこう!」
「空飛ぶ漁船で追いかけるぞ!」
「カイルくん、攫われてるんじゃないのか?」
「助けるぞ!」
「「「お~~~っ!!」」」
漁師さんたちは意気揚々と 大漁旗を掲げた空飛ぶ漁船に乗り込んだ!
「「「今夜は蒲焼パーティーだ!!」」」
焦った妖怪は振り返り 私に数百本の矢を放ってきた!
「矢よ、放った者に戻れ!」
降り注ぐ大量の矢に魔法をかけると、
全ての矢は 回れ右をして 妖怪の元へと飛んでいった!
「なんでよ~~~っ!!」
妖怪が 矢に気を取られている間に 瞬間移動で妖怪の腕の中からカイルを取り戻すことに成功♪
矢の後ろからは 巨大投網を打とうとしてるやる気満々漁師さんたちの漁船が追いかけてきてるしで
妖怪は必死のパッチで逃げて行った。
エネルギーを吸われて眠っているカイルを抱っこして 森の泉へと飛ぶ。
ここは 初めてカイルと出会った場所。
大樹の太い枝に座り 体力回復効果がある赤い実をもいできて カイルに食べさせた。
しばらくして 目を覚ましたカイル。
「体は大丈夫?」
「うん、もう平気」
やっぱりこの実は 万能薬だね。
空の向こうでは まだ 妖怪と漁船が追っかけっこしてる。
「なんで あの空飛ぶ漁船からは 甘い醤油タレの香ばしい香りが漂ってくるんだろう・・?」
不思議そうなカイル。虎人だから鼻がすごく効くのね。
「まだ 妖怪ウナ~ギ~が獲れてないのに 蒲焼の準備万端みたいだね ^^」
ポンポコ村の上空は 甘い醤油タレの香りが充満していったのでした♪
リスさんは、美味しそうな木の実や種を見つけては、巣穴に運んだり、土に埋めて隠したりしました。
リスさんは小さいので、木の実を少しずつしか巣穴に運べません。
「ふぅ~。1度にたくさん運べたらいいのに」
リスさんの呟きを、ルカとカイルが聞いていました。
「リスさん、私たちも一緒に運ぶわ」
「いいの? ありがとう! ここにある木の実を運びたいの」
「そう。じゃあ、これで運びましょう。便利なのよ」
ルカがポケットから出したのは、唐草模様の風呂敷。
ルカはかなり渋い趣味のようです。
風呂敷を広げ、リスさんの運びたい木の実を全部入れると、よいしょと背負うルカ。
ひと仕事終えた泥棒さんに見えなくもない風情です。
「助かるわ~、ルカちゃん」
「これくらい、お安い御用よ」
リスさんの巣穴がある木の下で、風呂敷から出した木の実を土の上に置くと、異世界の木の実がいくつか自発的に土に根を張り、にょきにょきと成長しはじめました。
そのうちのひとつの木が細枝を伸ばし、カイルを捕まえると空へと伸びてゆきました。
「カイル~!」
「ルカ~!」
カイルを追いかけ、木を登ってゆくルカ。しかし、ルカを振り落とそうと木の幹がぐねぐねと曲がっては揺らし、無数の細枝はルカを払い落とそうとしてきます。
「わはは!こちょこちょしないでよ~!カイルを返しなさいってば!」
木の幹や枝の姑息な攻撃をかわしながら、木を駆け上がってゆくルカ。
(連れ去られたお姫様を奪還する話はよくあるけど、いつもカイルが攫われて私が追いかけてゆくという構図。イケメン過ぎるのも問題だわ~!)
木の幹の頂上には大きなヒマワリのような花が1輪咲いていて、大きな口を開けています。
カイルが花の口に飲み込まれる寸前、ルカはカイルと一緒に花の中に飛び込みました。
「まぁ、だぁれ? あなたまで招待した覚えはなくってよ」
ヒマワリの花を模したような奇天烈な服を着た少女が腕組みをして睨んでいます。
「おまけにカイルに抱き着くなんて!」
きぃぃ!とハンカチを噛む少女。破れたついでにムシャムシャと食べています。
「ルカ、うれしい。僕、ずっとこのままでいたいよ」
「なに言ってるの。今、枝をほどいてあげるからね」
しかし、枝はほどけず、少女のところへ枝とカイルは引き寄せられていきます。
少女はそれはうれしそうにカイルを抱きしめました。
「ふふ。やっと捕まえた。ずっと、唐草模様の風呂敷の中からカイルを見つめていたのよ。ねぇカイル。ここで私と暮らしましょう。美味しい木の実が食べ放題だし、ヒマワリを模した服も着れるわよ♪」
あまり羨ましくない条件を出されて絶句するカイル。
木の実はあまり好きではないし、ヒマワリの花のような服も、着たいとは思えない斬新なデザインです。股間に大きなヒマワリの花がポンと付いていて、お盆芸かと見間違われるかもしれません。まだ、イロモノにはなりたくないカイル。しかし、少女を侮辱するわけにもいきません。
「僕は、木の実が食べれなくても、ヒマワリの服を着れなくても、ルカと一緒に居たいんだ」
カイルは少女をまっすぐに見て、言いました。
「えぇっ? 木の実が食べれなくても、ヒマワリの服を着れなくてもいいですって?! お尻にもヒマワリが付いてるのよ? 本当にいいの? 後悔しない?」
こんな好条件を蹴るなんて信じられない!という瞳でカイルを見つめる少女。
「ええ。僕はルカさえ傍にいてくれれば、それで満足なんです」
お尻や頭にもヒマワリが付いてる服なんて着たら変態かと思われちゃう、とは言えないカイル。
「そんなに、ルカさんがいいの? ルカさん、どうやってカイルを虜にしたの?」
「虜になんて…あっ、そうだ! 花の口を開けて太陽の光を見せてくれたら、教えますよ!」
(とにかく、ここから脱出しなきゃ!)
ルカがそう言うと、頑丈に閉まっていた花の口がゆっくりと開きはじめました。
ルカは、少女のところへ移動し、少女とカイルを抱いて、外へと瞬間移動しました。
秋晴れの空の下を、ふたりを抱いたまま飛び回ります。ジェットコースターみたいに回転したり、急降下したり。
魔法で、昼でも見れる花火も上げました。空を覆いつくすような大きな滝のような花火に森の動物たちも大喜びです。
「わかったわ、ルカちゃん。私もカイルを楽しませてあげれるような女の子になる」
少女は微笑んで、カイルをルカに返しました。
「カイルを捕まえないって約束してくれるなら、また会いましょう」
「うん。カイルを独り占めなんて贅沢よね。またふたりで会いに来てね」
少女を花の上に降ろすと、ルカとカイルは家に帰ることにしました。
空を飛んで帰る途中、カイルはルカに言いました。
「ルカはいつも僕を助けに来てくれるね」
「これからも、イケメン王子を護衛させていただきますよ?」
「なるべく攫われないようにするね?」
「そうして」
「でも、ルカが僕を追いかけて来てくれるのが嬉しいんだよね」
「だめだよ!心配するから」
「ルカが悪いんだよ。僕の心を攫っていくから!」
「えっ?カイル、待ってよ~!」
大空の下、じゃれあいながら飛んでゆくルカとカイルでした。
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森の樹とカイルのプレゼント
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うららかな昼下がり。
カイルとのんびり空中散歩していた私は
静かな湖面のそばに 美しい花の樹を見つけた。
「カイル、きれいな紅い花が咲いてる。近くで見ましょう」
「そうだね」
着地して その大木を見上げると
ごつごつとした太い頑丈な幹
太い枝の先々には 大輪の薔薇を肉厚にしたような 光沢のある華やかな花々が
美しさを競うように 咲き誇っていた。
「とても綺麗ね」
「こんなに綺麗な樹を ルカと一緒に見れて幸せだ」
私たちは うっとりと樹々を眺め 動けずにいると
樹は気を良くしたのか 満開のひと房の枝を 私たちの前に落としてくれた。
それは 桜の枝先のように花がびっしりと並んだ大きな房。
「私たちにくれるの? お花さん、ありがとう」
樹は まるで 頷くみたいに 優しく揺れた。
カイルは それを手に取ると 優しく笑って、
「ルカに花冠を作ってあげる」
と言って座ると 器用に枝を編み始めた。
「カイルって 編み物が上手ね」
「そうかな。なぜか冬になると ももひきを編んでほしいって 大勢の女の子に頼まれるんだ」
「そう」
「つい虎柄に編んじゃうんだよね」
「ああ、それでヤギ子さんのももひきが虎柄だったのね。妙に可愛かったわ」
「さぁ、出来たよ」
カイルの会心の出来!
紅い花が何十個も付いたキラキラ輝く王冠のような花冠。
私のために編んでくれたのね。
じぃぃんと 胸が熱くなる。
カイルの優しさに。
「僕だけのお姫様。とてもきれいだよ」
カイルがそっと 花冠を私の頭に乗せてくれた。
その瞬間。
私は後ろにバターンと倒れた。
「えっ?ルカ?大丈夫?なんで?」
焦って私を抱き起すカイル。
この花冠 重過ぎるよ~! 一体何キロあるの~?
異世界には とても重い花があり
カイルはとても力持ちになってると知った 春の午後。
「ルカ!今すぐ王都の病院に連れていってあげるからね!」
「大丈夫だよ。少し重かっただけだから」
軽量と保存の魔法をかけて
私の部屋で ずっと飾り続けるね。
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モグタン なりゆきで
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ぼくは モグラのモグタン。
土を掘るのが 得意なんだよ♪
異世界モグラのぼくは 力持ち。
どんどん 掘り進んでしまう。
今日も楽しく 穴掘りしていると
蟻さんの巣穴の壁を 突き破ってしまった。
「蟻子さん、やっと二人きりになれたね」
「蟻夫さんっ!」
ひしっ!
とラブラブで抱き合ってるところへ
バリッ!ズボッ!
壁に穴を開け コンニチワしてしまった。
わざとじゃないんだけど・・
「すみませ~ん! 穴掘ってたら勢い余ってズボッといっちゃいました!
お詫びに 僕特製のピンクのハート模様の壁紙を貼っておきますね♪
あっ、気にせず さっきの続きをどうぞ!」
「できるわけないだろ!」
「もぅ~、その壁紙、蟻美さんの巣穴でも見たわよ。
あちこちの壁を破ってるでしょう!」
小っちゃい蟻さんに 腕組みして仁王立ちされてしまった。
そうなのだ。
蟻さんの巣穴だけじゃなく、地下魔物の住処も壊しちゃったし、
地下ダンジョンの壁にも穴を開けて 叱られた。
地下アイドルもいるし どこを掘ればいいのやら。
などと考えながら 無意識に深く掘り進んでいると 水脈に当たった。
「やった! 井戸を作れる!」
ぼくは 井戸を作って その近くで畑を始めた。
土を耕し 種を蒔く。楽しいな♪
気付けば 広大な畑を作ってしまっていた。
数か月後。
「ズンタッタ大根にポンポコかぼちゃ、ヒョロ~リきゅうり、妖怪キノコ、
他にもいろいろ 収穫が楽しみだな。自給自足、楽し~♪」
畑で水やりをしていると 柵の向こうから ぼくを見つめる大勢の村の仲間たちがいた。
「ねぇ、モグタン。そのヒメスモモ、売ってくれない? おいしそう」
「私は ピーヒャラ豆がほしい!」
「ぼくにも売って!」
いつの間にか モグタンの作物は大人気!
それから モグタンの採れたて八百屋は 毎日大繁盛なのでした♪
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ポムの真心
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♪ピ~ヒャラ、ピ~ヒャラ♪
♪ピ~ヒャラ、ピ~ヒャラ、ピ~ヒャララ♪
青空の下、今日も賑やかに ピ~ヒャラ豆が鳴いている。
モグタンの獲れたて八百屋で買ってきたピ~ヒャラ豆は
根っこが付いたままピョンピョン跳ねて 人懐っこく笑うと
「庭に植えて!」と言ったので
茹でて食べるつもりだったとは言えず
庭で繁殖活動に励むピ~ヒャラ豆を見守る日々。
ピ~ヒャラ豆は 枝豆をジャンボにした感じのお豆さん。
とても聴力が優れていて よくしゃべるの。
「ルカちゃ~ん!カイルく~ん!喉が渇いた~!お水ちょうだい!たっぷりね!ピ~ヒャララ♪」
魔法で小雨を降らせてあげると大喜び♪ 可愛いな♪
鳴き声が笛の音みたいで お祭り気分になってくるし。
「「「ズンタッタ、ズンタッタ♪」」」
「「「ズンタッタ、ズンタッタ♪」」」
ピ~ヒャラ豆の隣では ズンタッタ大根たちが踊ってる。
大根の先が足みたいに二つに分かれてて 歩くのがとっても上手。
この子も可愛くて食べれないなぁ・・^^;
「この先のゴロゴロ沼で 子供の悲鳴が聞こえたわ!
ルカちゃん、カイルくん、助けてあげて!
ワニに食べられちゃう!ピ~ヒャラ!」
「「「僕たちも応援に行く、ズンタッタ!」」」
というわけで ズンタッタ大根有志10本を背中に乗せて 私とカイルは空を飛んだ。
ポンポコ山を越えた先に ズンドコ谷があり そのそばにゴロゴロ沼があった。
「ふっふっふ。美味そうな坊ちゃんだぜ。久し振りのご馳走だ」
不敵な笑いを浮かべながら よだれダダ洩れのワニに
小さな男の子は 恐れをなして腰を抜かしていた。
「僕を食べちゃダメだ! この龍の髭でママンの病気を治してあげるんだから!」
必死で叫ぶ男の子に ワニは冷たい目で、
「坊ちゃんの握っている物は 龍の髭ではない。ただの枯れた野草だ。
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「嘘だっ! 僕を食べたいからそんなことを言うんだろう!」
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「キャ~~ッ! いやぁん!」
「オカマの振りしてもダメだっ!」
「えぇっ!? これで逃げれると思ったのに・・」←なんで?
じりじりと間合いを詰めてくるワニ。
絶対絶命の その時、
「「待って~~~っ!!」」 by ルカ&カイル
「「「ズンタッタ大根、参上!!」」」 by ズンタッタ大根ず
「ママンのところに連れていってあげるよ。僕の背中に乗って、案内して」
カイルが男の子を背負うと
「「「ここは僕たちに任せて! ルカちゃん、2時間後に迎えに来てね!」」」
ズンタッタ大根ずが 自信満々に胸を張った。
「えぇっ? 大丈夫なの? 無理しなくていいのよ?」
「「「大丈夫だよ、ルカちゃん。早く行って!」」」
大根ずに背中を押され、
「そ、そう?」と空を飛んだけど、
こっそり魔法で 大根ずの皮を薄い鋼鉄製にしておいた。
数キロ飛んだ森の中に 男の子の家はあった。
小さな木造のお家には 体調の悪そうなお母さんが男の子の帰りを待ちわびていた。
「ママ~~!」
「ポム!心配してたのよ!」
抱き合い 無事を喜びあうふたり。
「ママンに龍の髭をあげたくて! これできっと病気が治るでしょう?」
必死に訴えるポムに 頷くママ。
それが 龍の髭じゃなくて 枯れた野草だとしても ポムの真心を受け止めたい気持ちが溢れていた。
ママは涙ぐみ 微笑むと
「ありがとう、ポム。でも もうこんな危険なことはしないで。
ポムが元気でいてくれないと ママは悲しいのよ?」
「ごめんね、ママン」
ポムは小さな手で そっとママの涙を指で拭った。
「ポムを助けていただき ありがとうございました」
「ありがとうごじゃいました」
私とカイルに深々と頭を下げるポムママンとポム。
もらい泣きで滝涙のカイル。
なんとかしてあげたいなぁ・・。
あれ・・?
ポムママンのお腹に黒い闇のようなもやが見える・・。
もしかして・・
ダメで元々。やってみよう。
手のひらに 体内のエネルギーを集め 念を込める。
(ポムママンのお腹の闇よ、消えて!!)
黒い闇を包み込むように、そっとエネルギーを放った。
一瞬、部屋が柔らかな光に包まれ 闇が消えてゆく。
ポムママンの顔色は みるみる良くなっていった。
土気色の肌が 桃のような薄ピンクの明るい肌に。
「ママンが若くなっちゃった!」
「体が軽いわ・・あんなに苦しかったのに、全然苦しくないの・・!」
ポムママンとポムの幸せそうな笑顔に 胸が熱くなる。
「「よかった・・・」」
うわ~~ん!と 皆で嬉し泣きしていた頃、
ズンタッタ大根は ワニとダンスを踊っていました。
「くそう! 俺様は肉食だから大根を食べる気にもならないし、
楽しそうに皆で踊るから つられて踊っちゃったじゃないか!」
「「「イェ~~イ♪」」」
通りすがりの狸さんのポンポコ腹太鼓伴奏も効いたようです。
踊りすぎて腰痛になったワニを じっと見つめる大きな黒い影がありました。
「美味そうなワニだな。食ってやろう」
巨大怪獣が涎を垂らしながら ワニを見下ろしていました。
「ひぇ~~っ! 俺はワニの被りものをしたリスですよ! 大してお腹もふくれませんよ!」
真っ青になって苦しい言い訳をするワニに、
「そんな訳あるか! 今日のメインディッシュ! 待て~~っ!!」
「待たない~~~~!!」
腰痛のワニは必至こいてズンドコ谷の隣の妖怪山まで逃げましたが
そこも妖怪がいっぱいで狙われ
とにかく頑張って逃げたのでした。
************************************
妖怪ウナ~ギ~
************************************
爽やかな風を浴びながら ふたりで青い空を飛んでいると
突然 後ろからやってきた 空飛ぶ大きな鰻にカイルが捕まった。
腕が生えているところを見ると・・
「妖怪ウナギね! カイルを放しなさい!」
妖怪ウナギは カイルを抱っこして放さない。
「妖怪ウナ~ギ~よ! そこは譲れないわ!」
譲れないのか・・ウナギもウナ~ギ~も たいして変わらないような・・
それはそれとして
「なんて美しい虎の子。魔王様への献上品にしよう。
この子のエネルギーは なんて美味しいのかしら・・」
「カイルのエネルギーを吸ってるの? だめよ!」
この手は使いたくなかったけど 仕方ないわね!
妖怪ウナ~ギ~に飛びつき
こちょこちょこちょこちょ~♪
「うははははははは!ちょっと!こそばゆいじゃないの!
うひょひょひょひょひょひょ!ひ~~っ!あっ、そんなとこっ!やぁん!うひょひょひょひょ~~!」
「カイルを放すのよ~~!こちょこちょこちょ~!」
「もう、ダメッ!」
バシン!
妖怪ウナ~ギ~の尻尾が 私の後頭部を蹴り上げ カイルを抱いたまま逃げた。
尻尾をくねらせながら豪快に空を泳ぎ 妖怪山へ向かってる!
「カイルを返しなさ~~い!」
その時、妖怪を追いかける私を見ている漁師さんたちがいた。
「あれ、巨大鰻じゃないか?」
「おぉっ! かば焼き1000人分くらい取れそうだ!」
「残暑の疲れを吹っ飛ばすぜ!」
「残暑が暑いざんしょ~!」
「おやじギャグ炸裂!」
「あまり疲れているようには見えんが 獲れるものは獲っておこう!」
「空飛ぶ漁船で追いかけるぞ!」
「カイルくん、攫われてるんじゃないのか?」
「助けるぞ!」
「「「お~~~っ!!」」」
漁師さんたちは意気揚々と 大漁旗を掲げた空飛ぶ漁船に乗り込んだ!
「「「今夜は蒲焼パーティーだ!!」」」
焦った妖怪は振り返り 私に数百本の矢を放ってきた!
「矢よ、放った者に戻れ!」
降り注ぐ大量の矢に魔法をかけると、
全ての矢は 回れ右をして 妖怪の元へと飛んでいった!
「なんでよ~~~っ!!」
妖怪が 矢に気を取られている間に 瞬間移動で妖怪の腕の中からカイルを取り戻すことに成功♪
矢の後ろからは 巨大投網を打とうとしてるやる気満々漁師さんたちの漁船が追いかけてきてるしで
妖怪は必死のパッチで逃げて行った。
エネルギーを吸われて眠っているカイルを抱っこして 森の泉へと飛ぶ。
ここは 初めてカイルと出会った場所。
大樹の太い枝に座り 体力回復効果がある赤い実をもいできて カイルに食べさせた。
しばらくして 目を覚ましたカイル。
「体は大丈夫?」
「うん、もう平気」
やっぱりこの実は 万能薬だね。
空の向こうでは まだ 妖怪と漁船が追っかけっこしてる。
「なんで あの空飛ぶ漁船からは 甘い醤油タレの香ばしい香りが漂ってくるんだろう・・?」
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「まだ 妖怪ウナ~ギ~が獲れてないのに 蒲焼の準備万端みたいだね ^^」
ポンポコ村の上空は 甘い醤油タレの香りが充満していったのでした♪
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