カラーメモリー『Re・MAKECOLAR』

たぬきち

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ひと夏の思い出編

106色 リゾートへのご招待

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 やっほー!わたし色野灯いろのあかり! どこにでもいる普通のおんなのこ! この世界では魔法が使えてあたりまえ……以下略!

 太陽がサンサンと輝きジメジメとした暑さが広がる中、わたしは額から汗を垂らしながら教室のドアを開ける。

「おはよー」
「おはよーあかりん! イエイ!」
「いえーい!」

 ゲンキよく教室に入ったわたしはリーンとハイタッチを交わす。

「たく、相変わらず朝から騒がしいね。 全く最近蒸し暑いんだから静かにしてくれたまえよ」
「あ、いろのさんおはよう」

 レータはいつもの様に文句をいいながらも挨拶をしてくれて、みんなも挨拶を返してくれる。 そんなみんなの額からも数摘の汗が流れていた。

「ぼくの風魔法でよかったらだそうか?」

 暑そうにしているわたしたちをみたクロロンが手で顔を仰ぎながら聞いてくる。

「いや、ありがたいけど、君の魔力を無駄にしてしまうから遠慮しておくよ。 寧ろ、君自身が自分の為に使った方が有意義に使えるだろう。 それなのに何で君は手で自分を仰いでいるんだい? 君も暑いんだろ?」
「でも、それじゃ、ぼくだけ涼しんでズルくないかな?」

 レータの指摘に苦笑いで返しながら、クロロンはそう返すと、レータは溜息を付き言葉を続ける。

「何言ってるんだい? 世の中ズルい奴ばかりさ、君は他人に気を使い過ぎだよ。 自分の魔法チカラを自分に使ったって罰は当たらないさ」
「そう……なのかな?」

 クロロンは首を傾げながら返す。

「じゃあさ、クウくんがズルくない方法があるよ」

 すると、リーンは教室のロッカーから数個のバケツを取り出した。

「みっくん、氷って出せたかな?」

 リーンはシアンに聞くとシアンは欠伸をすると答える。

「……氷はムリだけど……冷たい水ならだせる」
「じゃあ、だしてもらってもいいかな?」
「……めんどくさい」
「そこをなんとか、みっくんも涼しくなりたいでしょ?」
「…………」

 リーンに説得されてシアンは数個のバケツに水をだした。

 わたしはその水に触れる。

「ひゃあ! つめたい!」

 シアンのだしてくれた水は思った以上に冷たくてひんやりとしていて気持ちよかった。

「クウくん出番だよ」
「え?」

 突然名指しをされたクロロンは首を傾げる。

「このバケツの水面に風魔法をかけてみて」
「? うん」

 クロロンは頭にハテナを浮かべながらも、いわれた通りに水の上に風魔法をかける。 すると、バケツからひんやりとした風が流れてきた。

「わあ! ひんやりとした気持ちいい風が流れてきたよ」
「随分と古典的だね」

 驚くわたしをよそにレータはメガネをクイッと上げながらいう。

「なんで涼しいのかな?」
「電化製品などがなかった時代の打ち水の様なモノだね」
「打ち水?」
「地面に水を撒いて涼しくなるってやつかな?」

 わたしの疑問にクロロンが首を傾げながいい、それにレータが補足説明をしてくれた。

「気化熱によって水が地面の熱を奪いながら蒸発して水が撒かれた周りの温度が下がって涼しく感じられるようになるやつだね。 それと、地面から上昇した水蒸気を含んで冷たくなった空気が涼しい風となる効果や、地面に直接水を撒くことで表面温度を下げる効果が得られて、さらに、地面が水で濡れているという視覚効果によってヒンヤリと冷たく感じられるようになるんだ。 このように、打ち水で地面を水で濡らすとさまざまな涼しい効果が得られるって訳さ。 それを氷や冷たい水などの入った容器に代用して風を当てるとそれから冷たい風が吹いて涼しく感じてるって訳だね」
「知恵袋おつ」

 レータが教えてくれるけど、わたしは目を回してしまう。

「まあ、こんなことをしなくても冷暖房機を設置してくれればいいんだけどね」
「あはは……たしかに」

 レータの言葉にわたしたちは苦笑いを浮かべる。

「でも、今年からつけてくれるって先生いってたから大丈夫だよ」
「『夏休み中に』だろ。 その前についてなきゃ意味がないじゃないか」
「あはは……そうかもね」

 近年の猛暑によってエアコンをつけてくれるってことになったんだけど『夏休み中に設置』ってことでそれまではこの暑さに耐えないといけないんだ。

「それにしても夏休みかぁ正直家から出たくないね」
「ああ、無駄な体力は使いたくないね。 君もそう思うだろう? ……いや、君には猛暑も極寒も関係ないか」

 レータは何故か今日は会話に入ってこないフラウムに声をかける。

 フラウムはさっきから手元にある端末に目を向けている。

「珍しく嚙みついてこないと思っていたけど、君にしては珍しく端末に目を向けて何をみているんだい?」
「貴方には関係ないですわ」
「そんな真剣そうな顔してなにみてるの?」
「……ええ……実は……」
「おい」

 自分は無視されたのに同じ質問をしたリーンにあっさり答えたフラウムにレータは突っかかるけど、それを気にせずにフラウムは答える。

「黄瀬家がスポンサーを務める、とある会社でリゾート地のプレオープンがありまして」
「リゾート地!?」

 リゾート地という言葉にリーンは眼を輝かせる。

「その招待を受けまして、スポンサーである黄瀬財閥の令嬢のワタクシにもその招待がきて、その友人も何名か招待していいとのお話を受けたんですの」
「いこう! いこう! 今すぐ即決! すぐ行こう!」

 リーンはグイグイとフラウムに迫る。

「君、さっき家から出たくないって云っていたじゃないか」
「それとこれは別、リゾートは例外ならぬ、別腹だよ」

 リーンはもう行く気満々で話を進める。

「……その……非常に言いずらいのですが」

 そんなリーンをみてフラウムはなにかいいずらそうしている。

「ワタクシも是非ともお誘いしたいと思っていたのですが……」
「もしかして、人数制限とか?」
「『悪いね、このリゾートは五人ようなんだ』ってやつかな?」
「いえ、リゾートですから、さすがに最低でも数百人は入れますわ」
「全員分の招待券がないとか?」
「それか『お前のチケットねーから』ってやつ?」
「招待券は友人の人数分送って頂けるみたいですので大丈夫ですわ」
「なら、何を気にかけているんだい?」
「……それは」

 レータが溜息を付きながらいうと、フラウムは重い口を開いた。

「『怪奇現象』が起こるとのことですの」
「はあ? 怪奇現象?」

 フラウムの言葉にレータは呆気に取られたような声をだす。

「もしかして、幽霊でも出るって云いたいのかい?」

 レータは鼻で笑いながらいうけど、フラウムは真剣な顔で話を続ける。

「そうとも言い切れないかも知れないんですの」
「え?」

 真剣な顔を向けられてわたしたちは静かになる。

「リゾート地の開発は順調だったのですが、数週間程前から従業員や開発担当のものが視察や準備に赴き『行方不明になる』という事件が多発しているんですの」
「えっ!? それってかなりの大事件じゃない!?」

 さっきまでノリノリだったリーンの顔が青くなってこわばった表情になる。

「そんなに大事件ならニュースになっていると思うけどね」
「それでなのですが」
「?」

 レータの質問にフラウムは答える。
 
「『行方不明になったもの全員が翌日までには戻って来ている』んですわ」
「はあ?」
「ええ!?」

 あまりに不思議な答えにわたしたちは唖然とする。

「戻って来てるなら問題ないじゃないか」
「ええ、その通りですわ。 ですが、問題はこの後ですの」

 まだ話に続きがあるようでわたしたちは耳を傾ける。

「『行方不明になったもの全員が失踪時の記憶がない』とのことですわ」
「!!?」

 これまた不思議な答えにわたしたちは今度は驚愕する。

「ん? どういうことだい? 『記憶がない』?」
「記憶関係っていったらもしかして『魔法にかけられた』とか」
「その人達はそれ以降特にカラダには異常はなく普通に過ごせているとのことですわ」
「なら、原因は何なんだい?」

 レータの質問にフラウムはタブレットを見ながら答える。
 
「専門家を雇って調べさせたところ、恐らく、『なにかの魔法の呪い』があるかもとのことで『魔除け』の魔道具をリゾート地の至る所に置いたところそれ以降の被害は確認出来ていないとのことなのですが、原因は判らないとのことですわ」

 フラウムはレータにタブレットを渡し、わたしたちもそれを覗く。

「確かに君の説明通り対策以降の被害はないみたいだね」

 レータはタブレットをスワイプしながら内容を読んでいく。 わたしはなにが書いてあるかまったくわからないからなんとなく頷く。

「よかった、それなら安心だね」
「いえ、そうとは限りませんわ。 それ以降の被害が出ていないとはいえ、原因が判っていない以上、正直招待するのは気が引けて」

 喜ぶリーンに向けてフラウムは心配そうにいうけど、リーンは「へいきへいき」と返す。

「まあ、もしまた被害があったとしても、その調査も兼ねて、わたしたちで確かめればいいんだよ!」
「君、捜査とか関係なく行きたいだけだろう」

 レータはフラウムにタブレットを返しながら、リーンにジト目を向ける。

「まあ、そうともいえなくもあるね」
「開き直ってるじゃないか」

 リーンとレータのわちゃわちゃとした会話をみたフラウムは微笑みを浮かべるとわたしたちにいう。

「そうですわね。 あまり気を張り詰めづ楽しみましょうか、なにかあった時はその時ですわ」

 フラウムの言葉が意外だったのかレータは少し驚いた顔をする。

「君にしては珍しく柔軟な考えだね。こいつらの呑気さが移ったかい?」
「かもしれませんわね」

 レータの言葉にフラウムはクスリと笑いながら返す。

「じゃあさ、マルたちも誘おうよ!」
「いいね! この前のお礼もかねてね!」
「なら、こちらで招待券を郵送しますわね」

 マルたちも誘うことにして早速いろいろと話し合うことにした。

「『リゾート地 みんなで行けば 怖くない』ってやつだよ!」
「そうだね、そしてだれもいなくなるってやつだね」
「あかりんクウくん、それ違う」
「フラグの連鎖してどうするのさ」

 二人になぜかつっこまれちゃったけど、わたしたちみんなでリゾート地に遊びに行くことが決まった。 今から考えるだけですごい楽しみだ。

 しかし、この時のわたしはしらなかった……楽しいリゾートに潜む『ナニか』によって起こる騒動のことを……
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