下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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南へ__

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「山賊にいい思い出ないからなぁ。普通の街道にしよっ」

「女将、勘定を。それとこの辺で荷馬車は通ってませんか?」

「毎度。1060円になります。この辺りは祭りのあとだからまだもう少し来るのに時間が……そうだ。良かったらなんだけどね、うちに古い荷馬車があるんだよ。馬はまだ元気なんだけど、よかったら買わないかい?」

「幌はついてます?」

「ちょっと縫わないと雨漏りするけど、付いてるよ。がたは来てるがね、新しいのを旦那が買っちまって、どうしようかと思ってたんだよ。12000でどうだい?」

「安すぎますね。見せてもらっても?」

「裏にあるよ。ついてきておくれ」

馬車が手に入るに越したことはないが、がたが来てると言われどのくらいなのかが気になる。

裏に周り、馬と馬車を見た重次は「か、買いましょう!馬ごと買います!あ、私の給金からでもいいです。これ欲しいです!」と興奮している。

「みんなからの路銀で買えるからそれで買おうよ」

「はいっ!」

手入れだけさせてくれと女将にお願いし、重次が工具を借りていくつか直し、馬を綺麗にしてから馬車に繋ぐ。

暫くは座布団がないのでお尻が痛いかもと言われたが、途中で買い物をするというので、車椅子と荷物を積んで、お礼を言ってから出発する頃にはもう夕方になっていた。

「坊っちゃま、少し寄り道させてください」

いくつかの店により、座布団や布団、毛布などを買い、それを積んで今夜の宿泊先を探して厩 うまやに馬を放し、部屋に行ってからどういうことなのかを聞く。

「勝手にすいません。あの馬車は5000もあれば買えます。問題は馬です。かなりの上物で、中古で買っても三万はします」

「じゃあ、馬の値段は7000円だったってこと?」

「はい。しかもまだ若く四肢の筋力も問題がなく、俊馬かと」

「それで興奮してたんだ」

「荷馬車があれば宿がなかったり、立ち往生しても休めます。それに、宿には荷馬車を預かってくれる宿は沢山あるので、旅に持っているのと持っていないのではかなり違います。路銀から出したぶん、他のものは自腹切りましたから、気にしないでください」

「でも……」

「旅が終わったらあの馬を頂けないでしょうか?」

「いいよ?それでチャラでいい?」

「ありがとうございます!」

「馬が好きなんだね」

「それはもう!あの毛並みと言い、うるうるとしたあの瞳。可愛いと思いませんか?」

「ぼ、僕、間近で見るの初めてだし」

「きっと坊っちゃまも気に入ると思います」

夕食はおでんにそぼろ庵が乗っており、味噌汁にはエビのつみれが入っていて、結構な量でお腹がすぐ一杯になってしまった。

「こっちにもおでんがあるんだね。具は大根しか分からなかったけど」

「南の国では年中食べられています。夏は冷たいんですよ。あのあんをご飯にかけたりして食べたり、ご飯と混ぜたり。なので上の餡は少し濃いめに作られてます」

「僕初めて食べた!混ぜご飯も食べてみたいな」

「割とよく食べられてますので、どのお店にもあります。でも、やはり坊っちゃまは食が細いですね……お風呂の前にリハビリですよ?今度から食前にしましょうか。そのほうがお腹も空きますし、お風呂の後に食事にしたら薬も飲みやすいでしょう?」

「食べてすぐ寝ちゃったら太っちゃうよ」

「もう少し太られてもいいと思いますが……」

「それよりも身長が欲しいよ。全然伸びないんだもん。だからみんなに頭撫で回されるのかな?」

「ちょうど良い高さに頭がありますから。それに、冬弥様は特に坊っちゃまのことを可愛がっておいでですから」
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