下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

文字の大きさ
6 / 68
南へ__

.

しおりを挟む
「親馬鹿だよね?僕、今から侑弥の髪の毛が心配だもん」

「そう言えば、この間那智様が航平坊ちゃんの頭を撫でていてかなり怒られてましたが、人間は頭を触られるのが嫌なのですか?」

「そんなことないと思うけど、みんな撫ですぎなの。それに小さい子じゃないから恥ずかしいんだよ……」

「みんなお好きなのかと思ってました」

「そんなことないよ?褒められたら嬉しいけど、人前では嫌かな」

食事を終えてお風呂に向かう前に、食後の運動だといつものように立って背筋を伸ばすことから始まり、お風呂に入って解されたあとは必ず眠気が訪れるようになってしまった。

朝、ご飯がおにぎりと、焼き魚。漬物に味噌汁と言ったご飯だったので、パクパクと食べて厩に行くと、尾を少し揺らしている馬がこちらを見ていた。

「もう飼い主ってわかってるのかな?」

「撫でてみますか?」

「怒らないかな?」

立った方がいいと言われ、支えて貰いながら胴の部分に触れ、「柔らかい!温かい!」と言っていると、馬が顔を近づけてきたのでそっと頬を触る。

「か、可愛い!」

「でしょう?馬は臆病なんですが、坊っちゃまは気に入られたようですね」

「えへへ。僕、動物と仲良くなるのは早いんだ。でも馬は初めて」

馬と荷台との繋ぎ方を教えてもらいながら手伝い、御者台に座りたいとお願いをして座らせてもらって宿を出る。

「この馬の名前は決めたの?」

「坊っちゃまが付けられますか?」

「いいよ。重次さんの馬だし、つけてあげてよ」

「いくつか考えている名前はあるのですが……」

「どんなの?」

桔花きっかと言うのはどうでしょう?」

「花の名前?」

「ええ。前の馬も花の名前でしたし、思いつくのがそればかりで」

「いいんじゃない?それに、この馬雌だったんだ」

「あ、言うの忘れてましたね」

よろしくね、桔花と言うと、言葉がわかっているかのように、ブルルッと鼻を鳴らす。

「重次さんは馬には乗れるの?」

「皆さん乗れますよ?中でも那智様がなかなかの乗り手でして。冬弥様には適いませんが」

「僕も乗れるかなぁ?難しいんでしょ?」

「落ちることもありますし、落ちた時に怪我をして、馬に蹴られることもあります。最初は誰かに手綱を持ってもらいながらなれていくといいと思いますけど、やってみますか?」

「桔花に乗るってことだよね?」

「はい。鞍など買わないといけませんが」

「やってみようかな」

所々森を抜けると海が見え、「ジイジの家の方?」と聞くと、全く違う海岸に出るとのことだった。

「今日はあそこまで行きます。地図にも乗ってますが、海岸に着いてからは今度は山側に向かいますので、いくつかの大きな街も抜けますし、見る場所も多いです。他は……ここの海鮮が美味いことですかね」

「海鮮かぁ。食べ歩きの旅みたいだね」

お昼は茶屋でお茶漬けで済まし、乗る前にと荷台の四隅と桔花を繋いでいる一番最先端に先の丸い針と札を仕込んでおく。

「これでよし!」

「これで荷馬車は守られるんですね?」

「こんなに大きなのは試したことがないけど、大丈夫だと思う。僕、この旅でもっと強くなりたいんだ!」

「既にお強いと思いますが」

「まだダメだよ。すぐに泣いちゃうし、みんなに頼ってばかりだもん。少しは僕だってみんなを守りたいんだ。それに、九堂からも自分のことは守らないと、みんなの邪魔になっちゃうから……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※ 下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。 毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。 しかし、飛んで仙になるだけだと思っていた冬弥はさらなる試練を受けるべく、空高く舞い上がったまま消えてしまった。 下宿屋は一体どうなるのか! そして必ず戻ってくると信じて待っている、残された雪翔の高校生活は___ ※※※※※ 下宿屋東風荘 第二弾。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 シャルルの父親が子連れと再婚した!  二人は美人親子で、当主であるシャルルをあざ笑う。  でもこの国では、美人だけではどうにもなりませんよ。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

多分、うちには猫がいる

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
傭兵のコウの家には、いつの間にか猫が住み着いていた。 姿は見えないけれど、多分、猫。 皿を洗ったり、洗濯をしたり、仕事を手伝ったり、ご近所さんと仲良くなったりしているけど、多分、猫。 無頓着な傭兵の青年と、謎の猫のステルス同居物語。 ※一話一話が非常に短いです。 ※不定期更新です。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

処理中です...