下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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順調に馬車が進み街が見えてくる。

「おじさんの言ってた洞窟あるかな?」

「宿を探してから見に行きましょうか。大体の場所は分かりますから」

お昼をすぎて街に入り、海の見える高台の宿に荷馬車を預けてから重次と出かける。

「まだ充電は大丈夫ですか?」

「うん、あとひとつあるし。出来るならしておきたいけど」

「途中にあると思いますので寄ってから行きましょうか」

金物屋さんのような所で重次が札を見せ充電したいというと、三時間くらいしてから取りに来てくれと言われ、そのまま洞窟を目指す。

ちゃんと看板が出ており、洞窟→と立て看板に書かれていた。

「思ったより人いないんだね?」

「街の人はもう見たのでしょう。それにここは温泉も何も無いので、観光地ではありませんから、知らないものの方が多いかと思います」

洞窟について中を覗くと、薄らと緑色に奥が光っており、車椅子でも入れそうだったのでそのまま押してもらう。

「何か……すっごい土の匂い」

「苔もすごいですね。奥に壁画があるのでしょう。他には何も無いですが」

「うん。でもこの苔、海の匂いがしない?」

「そう言えば……」

指で苔を触ると湿っており、指の匂いを嗅ぐとやはり海水の匂いがする。

「街の中なのにね」

「どこか繋がってるんでしょうか?」

先へ先へと進み、壁一面に書かれた天狐のような天女のような壁画を見て、誰がなんのために書いたんだろうねと重次と話しながら見、隅の分かりにくいところに小さな丸い穴が空いているのを見つける。

「これ何かな?」

「棒でも入れるんでしょうか?」

「隠し扉だったりして!ほら、よく本とかにあるじゃない」

「こんな岩が動きますかねぇ?」

暫くなにか落ちてないかと探してみたが、特に何も落ちてもなければヒントになるようなものもないので、洞窟を出る。

「うわぁ、出たら出たで今度は冷えるね」

「中は暖かかったですから。膝掛けを掛けてください。宿に戻りましょう」

宿に戻るあいだにも、景色が綺麗な場所で海を見たりしながら進み、充電を取りに行ってから宿に戻る。

「さ、坊っちゃま。リハビリしましょう!」

「リハビリの時だけ元気じゃない?」

「そんなことは無いですよ?坊っちゃまの足は気持ちの問題もあると聞いてます。数歩は歩けるのですから、少しずつ動かして行けばきっと歩けると思うんです。それに、姿勢が良くなれば馬に乗る時にも役に立ちますよ?」

「う、うん」

立つことだけは難しくなかったが、腕を伸ばして姿勢を正して居ると、少し気持ちも落ち着くような感じがしたので嫌ではない。

立ち上がって、腕を伸ばそうと思ったら、「足を肩幅に開いてください」と言われる。

「えっと……」

「大丈夫です。ちゃんと支えますから」

そう言いながら持ってくれないので、ゆっくりと足を動かしてなんとか肩幅まで開く。

「出来たじゃないですか!」

「ホントだ。横の動きしたこと無かったのに」

「もしかして、潜在意識の中に怖いって思いがあるのかもしれませんね」

「うん。でも、怖がってたら前に進めないもんね。で、ここからどうするの?」

「あ、はい。いつもと同じです」
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