下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

文字の大きさ
74 / 76
守り

.

しおりを挟む
「なぁ、お前達、俺の膝に乗ってもいいんだぞ?」と秋彪が面白半分で言うと、「と、とんでもない。秋彪様はお社のお狐様なのでそんな失礼なことは出来ないのですー」という紫狐に、煌輝までもがウンウンと首を縦に振っている。

「面白そうだったのに」

「やっぱり、格差みたいなのとかあるの?」

「そりゃあるにはあるさ。でかい社狐の方が威張ってるし。俺たちの神社も結構でかいと思うけど、もっと昔からある神宮とかは仙以上の管轄だからな」

「仙人と仙は違うの?前から気になってたんだけど」

「単に千年で飛ぶだけで終わった者は仙。そこから仙人になるのか、冬弥みたいに天狐になるのかは誰にもわからないとされてるんだ。なんだっけ、素質の問題?だったかな?」

「じゃあ、みんながみんなそうなるとは限らないんだ」

「千年さえ飛べば仙の資格は得られる。力も強くなる。それは、社を守るためでもあるんだが、その分任されることも色々出てくるって聞いてる」

「何か複雑だね。あ、煌輝君お代わりする?」

「あのハンバーグ……」

「うん、中にチーズ入ってるんだ。美味しいよ?」

「ち、チーズ」

「嫌いだった?」

「す、好き。一番好き」

照れながらいうのでハンバーグを取ると、ナイフとフォークで上手に切り分け、中からトロッと出てきたチーズに満面の笑みを浮かべる。

パクパクと勢いよく食べるので、もっとゆっくりよく噛んでと言うと、チラッと見上げられ、「いつもだよ?」と言われる。

「え?」

「だってみんなが取っていくから。最近は外に出てることが多いから、力も使うしって事で那智様が食事を多めにくれたりするんだけど、本来は那智様の中で気だけもらってればいいから、たまの食事はご馳走なんだよ?」

「みんな食欲旺盛なんだね」

「雪翔、影の中でも縦社会の所もあるから。俺のとこはそんな事はないが、やっぱり外に出てることが多いやつ優先にはなるんだよ」

「じゃあ、煌輝君以外にも出てる狐がいるってこと?」

「那智の影武者。仕事でいくつか被った時に、狐達を自分のふりして行かせるんだ。だから、余計に出てこない煌輝に回らないんだろうな」

「それ可愛そう。栞さんの所も?」

「うちはそんなことないけど。みんな仲良く分けて食べてるわよ?やっぱり力を使った子に多くあげるようにはしてるけど、量的には沢山いらないのよ。私たちが怪我とかしない限りはね」

「こ、煌輝君、お代わりあるから」

「だって、美味しい……」

口が小さいので、小さめのハンバーグでも口に含む量は少ないが、パンを食べながら時たま咳き込むので、お茶を渡してゆっくりだよ?と心配する。

翡翠は翡翠で航平に甘え、「おににぎ!」とねだっているが、それをうまく交わしてスプーンで「はい、これ食べてね」と航平の笑顔に騙される翡翠。

焼きもちを焼くかなと思っていた紫狐は、どこで覚えたのか、ラザニアを食べながら「でりしゃすー!」と言いながら食べている。

「秋彪さん、例えばなんだけどね、僕って他にも狐が増えたりするのかな?本では紙に書いた式神っていうのを使うって書いてあって、能力が高いほど本物に変わりなく見えるってあったんだ」

「んー!俺も今迄あったこともなかったからなんとも言えないけど、俺達の国では影……つまり、使役狐とも言うんだが、縁がなければ会えないって言ったりもする。こっちで言う運命とかご縁てやつ?」

「だったらこれからどうなるのか分からないよね」

「相性もあるから、第一印象は大事だぞ?可愛いからって適当に拾うなよ?」

「う、うん」

「俺は?」

「無理だろう。影にも狐が入れないように、なんだっけ、精霊?が守ってるから。嫌ってないのは分かるんだけど、お前を守ってる感じ?」

「そうですか。ちょっと残念かな」

「だが、連れてる分には問題はなさそうだな」

「そうね、嫌がってる感じはしないもの。そんなに気にすることないわよ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

課長と私のほのぼの婚

藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。 舘林陽一35歳。 仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。 ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。 ※他サイトにも投稿。 ※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

処理中です...