黄泉津役所

浅井 ことは

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祭り

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車の中に毛布を縦に折って敷き、いつでも乗れるように開けて、少し荷物を後ろに投げる。

「丈史、落ちなければいいんだ。お前足元に座ってやれ」

「分かった!」

すぐみんなが運び出してくれ、車に乗せたのはいいのだが、指先一つで闇之助を浮かせて二階から車に乗せる月読さんはとても強いんじゃないだろうか?

普段は非弱そうなのに!

「私と月読様は先に医務室に行くから!裏口に連れてきて!あ、桃ちゃんと猿田様もこっちに乗せてく!」

「はい!」

「丈史、着替え。中に手に握ってたのも入れてあるわ」

「うん。母さん、ごめん。行ってきます」

「家のことは心配ないわよ」

扉を閉めて祖父に裏側の駐輪場を過ぎたところで止めて貰う。

「ここは使われてない入口のはずだが……」

「ここから入るんだ。ちょっとみてくるね」

扉を開けるとマスクをした人が五人。

「闇龗神様をこちらの担架に移します」

車をあけて運ばれていくのをポカーンと見る祖父に、「俺行ってくるから。爺ちゃん大丈夫?」と手を顔の前で振る。

「おお、すまん。驚いた」

「少し休む?」

「大丈夫だ。行ってあげなさい」

ありがとうといって中に入り、医務室まで走っていく。

「あの、闇之助は?」

「今中に。ここから先は彼らの領域ですから」

「彼ら?」

誰だろう?と思いながら、長椅子で座っていると、ペットボトルを抱えた桃ちゃんと八上さん。

「もも、もう泣かないの」とお茶を一本くれる。

「ほれ、キャンディじゃ」

「俺にも?」子供じゃないのに。

「桃が、一緒に食べると我慢しておったぞ?」

「そっか」

包を開けて食べるとほんのりといちごの味。

「美味しいね」

「さんかくなの。イチゴ味!」

膝に座らせ、猿田さんに一体何があったのか分からないと手紙のことを話して、その相手に会いに行くと言っていたことを言うと、「喧嘩じゃ。神同士のな。力と力をぶつけ合ってできたんじゃろうが、少し悪い気が混じっておる。言うて闇之助は名前の通り闇深いと思われがちだが、そんなことは無い。同じ水の神の中でも澄んだ性質の神じゃ。相手は多分……」

「誰ですか?俺にも闇之助にも嫌がらせしたヤツ!」

「双子神って分かりますか?」

「月読さん、それ、闇之助が二人ってことですか?」

「神は一対とも双子とも、男女とも言われてまして、生まれによって違うのですが、闇之助には一緒に産まれた神がいます。人の文献では同一視されていたりもするようですが……」

「それ、兄弟って思ったらいいのかな?」

「まあ、そんな感じです。相手は多分、高龗神たかおかみのかみでしょう」

「会ったらぶん殴ってやる!」

「メッ!されるよ?」

「メッされても俺は文句は言う!」

「もも、けんかはきらい」

そう言われるとごめんねとしか言いようもなく、「処置が終わりました」と出てきたのはちっさい人!




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