黄泉津役所

浅井 ことは

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祭り

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「大宜都さん!」

「しばらくぶりだね。体はもういいのかい?」

「はい。もうすっかり!下の方は大変そうだったんですけど、食堂は?」

「いつも通りだよ。何か食べるかい?おやつなら今日は笹団子とおはぎがあるよ」

「ください。三人分」

「座って待ってておくれ」

セルフのアイスコーヒーを以前食堂に置いておいたビッグタンブラーに氷を沢山入れてから入れて席に着くと、「すっかりと役所の一員ですね」と言われる。

「そう言えば八上さんは?」

「はい、お待たせ。八上さんなら今神社に行ってるよ。毎日甘いものって帰ってくるから相当疲れるんだろうねぇ」

「大宜都さんは祭りには来ないんですか?」

「もちろん行くさ。今回は猿田様のお宅で食事係なんだけどね、鈿女様がまたよく食べるお方でねぇ」

「鈿女さんて、奥さんの?」

「見たらわかるけど、まあ、楽しいお方だよ」

頂きますと団子を食べると、ほんのりと餡子のいい甘さ。

「丈史君、気をつけるんだよ?」

「祭りですよね?」

「ずっと相手も出てきてないんだろう?」

「あれからは何も。うちも平和そのものです」

風太は久しぶりの自分エリアを堪能しまくり、滑り台をやはり……コロコロ。

「風太、大きくならないんですよね。大口さんいるかな?」

「大口さんならもう帰ったよ。明日風太の兄弟が引き取られるから、その準備って言ってたねぇ」

「ぼくの、兄弟、どこいくの?」

「違う神様のお屋敷だよ」

「そっか……」

「寂しいなら会いに行くか?」

「い、いい。ぼく、仲良くできなかったし」

「ほぉ?そうか!」と闇之助が早く食べろと言うので急いで食べ、ご馳走様と風太を担いで行くのでついて行くと、「あ、あの、今日はもう大口様が帰られたので……」と交代の人。

「ちょっと風太の兄弟と別れの挨拶をさせるだけだ」

「すいません、すぐ済みますから」

「では、こちらに。他の犬と離してあるんです」

「なんで?」

「半年となると新しい子犬達とは場所を分ける決まりなんです。あそこにいる二匹の子がご兄弟ですよ」

中に入れてもらって風太を下ろすと、風太はやはり少し近づくものの距離は保っている。

「こ、こんばん……は」

「あっち行けよ」
「チビのくせに先に出ていきやがって」

「あれ?俺なんで聞こえるの?」

「役所内は聞こえるようになってるだけですよ」と少し様子を見ようと言われたので、壁まで下がる。

「ご、ごめんね」

「なんでお前小さいままなんだよ」
「生まれた時から変なやつだったし」

「怖かったんだもん。ミルク飲むの、みんなが蹴るから」

「一番チビだから弱かっただけだろ?」
「先に飲んだもん勝ちだから!」

「志那さん、闇之助……なんかあの子たち捻くれ者?」

「いや、確かに本能で乳を飲みに行くが、母犬が上手く風太を寄せられなかったのかもしれん」

「赤子が多いとどうしても人の手で母犬の乳まで飲ませにいかなければならないと以前大口さんが言ってました」

「でも何か……それにやっぱり風太って大きくなってないというか」

「小さいが、ちゃんと育ってるぞ?」

「ええ。匂いも特に病気ではなさそうですし」

個体差と言われればそれまでなのだが、風太と兄弟の話が聞いているだけでムカついて、そろそろと思っていると「お前だけ離れたところからみんな見てて気味悪かった!ごめんねっ!」と口は悪いがちゃんと謝るし、「遊びに来なかったから構いに行ったのに嫌な顔してたから遊ばなかった!ごめんね!」と二匹とも素直じゃないけどしっかり謝っている。

さらには「先に人と神様に仕えたんだから、俺たちの分もしっかり働けよなっ」とエールまで。

「ぼ、ぼくも、みんな好きだったよ。元気でね」

チラッと見ると何故か感動中の闇之助。

もしかして涙脆いのか!?

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