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居候
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もう一本つけようと酒の瓶を持つと、陰から羽織を引っ張られるので、土間の奥へと移動する。
「冬弥様、秋彪様がお出でです」
「社にかい?後で行くと伝えて来ておくれ」
そのまま違う酒を出して席に戻る。
「あの、お狐ちゃんが……」
「大丈夫だよ、伝言を頼んできたからねぇ。それより、ちゃんと食べたかい?昨日も見たと思うけど、凄いでしょう?夕餉の時間は全員そろうとあっという間になくなってしまうんですよねぇ」
「いつもは?」
「大学生の子達はバイトもしてるし、堀内くんは大学に残って働くんです。だからこの三人は居たり居なかったりです」
「僕も、このまま大学に行きたいんですけど、話では二年生から授業が難しくなると聞きました。就職と進学とコースが分かれるんだそうです」
「海都」
「なに?」
「海都は進学でしたっけ?」
「そうだよ!」
「雪翔もだそうですよ」
「お前頭良さそうだもんなぁ。俺堀内さんに教えて貰ってるんだけど、数学だけ駄目なんだよ」
「理数系に行くんですか?」
「俺、文系。でも期末の成績でバイトが出来るかどうかの瀬戸際なんだ」
「僕、ついていけるかなぁ?」
「大丈夫じゃないですか?もっと自信を持ってください。変なモノは紫狐が祓ってくれますから、後は雪翔次第ですよ」
「雪翔は休み中どうするんだ?」と賢司が言うが、「下宿屋の手伝いを……」と下を向いて話してしまう。
「おい、何か賢司がいじめてるみたいになってるじゃん」
「そ、そんなことは……」
「嘘だって!顔を上げて話さないと、声が前に行かないから聞こえにくくなるし、弱く見られるぞ?自信持てよ」とほろ酔い加減の隆弘が元気づけているが、あまり人と関わるのが好きではないのか返事だけして、みんなのやり取りを見ているだけだった。
22時にはいつもお開きとするため、酔っていないものに運んでもらい洗い物をする。
宴会の時は酔いつぶれたものは自分で洗えないので、つい手を貸してしまうが、その分草むしりなどを手伝ってもらっている。
「さて、手伝いはもういいですよ。皆さん暖かくして寝てくださいね?暖房もちゃんと切って寝ないとだめですよ?」
はーい!と返事だけ元気にしてみんなが戻るので、そのまま社に行き、秋彪と会う。
「怪我はもういいのですか?」
「遅かったからもらってるよ」とお神酒と揚げをつまみながらゴロンと横になっている。
懐から酒を出し、御猪口に注いで飲みながら、この後のことを話す。
「なぁ、雪翔だっけ?あいつ変わってるな」
「変わってるとは?」
「ここの狐が見えていても、他の狐には警戒するのが普通だろ?」
「普通そうですよねぇ」
「うちの狐が懐いちまったよ。雪のところに行かないのかうるさくてさ」
「もう寝てますよ?」
「雪翔で飛べるのか?」
「飛びます」
「冬弥様、秋彪様がお出でです」
「社にかい?後で行くと伝えて来ておくれ」
そのまま違う酒を出して席に戻る。
「あの、お狐ちゃんが……」
「大丈夫だよ、伝言を頼んできたからねぇ。それより、ちゃんと食べたかい?昨日も見たと思うけど、凄いでしょう?夕餉の時間は全員そろうとあっという間になくなってしまうんですよねぇ」
「いつもは?」
「大学生の子達はバイトもしてるし、堀内くんは大学に残って働くんです。だからこの三人は居たり居なかったりです」
「僕も、このまま大学に行きたいんですけど、話では二年生から授業が難しくなると聞きました。就職と進学とコースが分かれるんだそうです」
「海都」
「なに?」
「海都は進学でしたっけ?」
「そうだよ!」
「雪翔もだそうですよ」
「お前頭良さそうだもんなぁ。俺堀内さんに教えて貰ってるんだけど、数学だけ駄目なんだよ」
「理数系に行くんですか?」
「俺、文系。でも期末の成績でバイトが出来るかどうかの瀬戸際なんだ」
「僕、ついていけるかなぁ?」
「大丈夫じゃないですか?もっと自信を持ってください。変なモノは紫狐が祓ってくれますから、後は雪翔次第ですよ」
「雪翔は休み中どうするんだ?」と賢司が言うが、「下宿屋の手伝いを……」と下を向いて話してしまう。
「おい、何か賢司がいじめてるみたいになってるじゃん」
「そ、そんなことは……」
「嘘だって!顔を上げて話さないと、声が前に行かないから聞こえにくくなるし、弱く見られるぞ?自信持てよ」とほろ酔い加減の隆弘が元気づけているが、あまり人と関わるのが好きではないのか返事だけして、みんなのやり取りを見ているだけだった。
22時にはいつもお開きとするため、酔っていないものに運んでもらい洗い物をする。
宴会の時は酔いつぶれたものは自分で洗えないので、つい手を貸してしまうが、その分草むしりなどを手伝ってもらっている。
「さて、手伝いはもういいですよ。皆さん暖かくして寝てくださいね?暖房もちゃんと切って寝ないとだめですよ?」
はーい!と返事だけ元気にしてみんなが戻るので、そのまま社に行き、秋彪と会う。
「怪我はもういいのですか?」
「遅かったからもらってるよ」とお神酒と揚げをつまみながらゴロンと横になっている。
懐から酒を出し、御猪口に注いで飲みながら、この後のことを話す。
「なぁ、雪翔だっけ?あいつ変わってるな」
「変わってるとは?」
「ここの狐が見えていても、他の狐には警戒するのが普通だろ?」
「普通そうですよねぇ」
「うちの狐が懐いちまったよ。雪のところに行かないのかうるさくてさ」
「もう寝てますよ?」
「雪翔で飛べるのか?」
「飛びます」
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