ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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狼の狩り

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この日は朝から騒がしかった。

ユラが住み込んでくると知るやいなや、クラックとイアンはアロンを守るために部屋から出ようとしない。

そして仲の悪いクラックとフィンジャーが何かと口論をし、火に油を注ぐようにシラキがイアンにちょっかいを出して4人の間であれこれ言葉が飛んでいた。

そのめんどくさい光景を眺めながらアロンは不思議と心強く感じた。

本心を言うとユラが本当に尋ねてくるのが怖かった。

言葉では勝てないうえ、エルドの弱みを握り、エルヴィスを脅してさらに婚約者の身分になった相手をなんとも思わないはずがない。

本当に来たとして自分ではうまく対処できる気がしなかった。

しかししばらく過ぎた頃、クラックとイアンに何やら連絡が入ったようで、ふたりはそろって謝り、部屋を出ていった。

去り際にはしっかりとフィンジャーとシラキにアロンを守るように言いつけている。

「早く出ていけ!邪魔者!」

「うるさい!この社会のゴミが!」

クラックとフィンジャーはドアが閉まる最後までお互いにらみ合っていた。

「なんなんだあのロボット!何がお友達ロボットだ。罵詈雑言言うしよ!っすよね!アロンさん!」

「いや、あながち間違ってないだろ」

「酷いっす!!」

しかしクラックとイアンが去ってしまったせいで部屋の中がずいぶんと静かになった。

フィンジャーが伸び伸びと床に転がった時である。

突然ドアが開いた。

「ア、アロンさん……」

先ほど出ていったクラックが気まずい顔でそこに立っていた。

「どうした。忘れ物か?」

「そうではなく、その……」

やけに歯切れが悪く、不思議に思っているとドアの影から誰かが歩み出た。

その人物が誰なのかを確認するとアロンが大きく目を見開いた。

「ユラ?」

その名前に寝転がっていたフィンジャーが飛び上がり、壁に寄りかかって目を閉じていたシラキが薄っすらと目を開けた。

「昨晩はよく眠れましたか?」

「なんでお前が……」

ユラの隣にいるクラックが申し訳ない顔で答えた。

「すみません、アロンさん。僕とイアンはこの女……じゃない。ユラさんがここにいる期間のお世話係になりました。命令には逆らえず……こうして連れてきました」

「お前のせいじゃねぇよ。そんな泣きそうな顔するなよ。それより、ユラお前は何をしにきたんだ」

「そんなに敵対心出さなくてもいいじゃないですか。もしかしたらわたし達も仲良くなれるかもしれないのに。それにしてもエルヴィスさんと結婚したのにこんなみすぼらしいお部屋にしか住まわせてもらえないのですね」

「ちょっと聞き捨てならないな!」

フィンジャーが立ち上がってビシッとユラを指さした。

その声にユラがびっくりして見やった。その目がフィンジャーからシラキに移るとさらに驚いたように見開かれる。

アロンと同じ輪っかをつけた男以外にもう1人革製の首輪をつけた男に訝しげな目を向けた。

「あなた達、誰……?」

どうやら立っている角度からフィンジャーとシラキは見えなかったようである。

「俺はアロンさんの犬だ!唯一のな!」

「い、犬……?」

ユラは、何言っているの?と言いたげな表情を向けた。

しかしフィンジャーはどこか得意げに胸を張って続けた。

「そうだ!この俺以外にアロンさんの愛犬となる資格のやつはいないから、敬意を払えよ?」

その視線がちらりとシラキに向く。敵対心がメラメラと燃える目にシラキは下を向き、軽く頭を振った。

エルヴィスの調教によりもはやフィンジャーの頭の中でアロンの犬になることになんの疑問もないようである。

自分から進んで名乗るのを見るにもう手遅れだろう。その点シラキは冷静的だった。

「お前が犬で俺は友達だな」

「犬は家族ーー」

「家族だからそれ以上の関係にはなれないし、友達は恋人になることもあるにはある」

「恋人だと!?貴様アロンさんを狙っているのか!?」

「当たり前だろ」

「当たり前じゃねぇだろ!このオオカミが!」

「まあ、確かに狼としてここに来たな。狼だよ俺は」

「アロンさんに手出しはさせないからな!特別な関係になろうとするんじゃねぇぞ!!」

「お前如きが?」

フィンジャーとシラキが言い合っているあいだ、ユラは頭痛するように目を閉じていたが、やがて耐えられなかったのか鞄から何かを取り出すとそれを部屋の床に投げ捨てた。

「これは絢爛会からのお誘いです。日にちは2週間後、場所はここの庭園にある温室です。詳しいことは招待状を見てください。逃げずに絶対来てくださいね?」

「なんで俺が行かなきゃならないんだ」

「あなたが来ないとこのクラックという子ともう1人のイアン?という子が酷い目に会うかもしれませんね!」

「お前……!」

「そんな怖い顔をしてどうしたのです?もしかしてわたしを殴るつもりですか?いいですよ?記者に垂れ込みをすればあなたはもう終わりでしょうけどね!」

「……っ!」

アロンがぐっと歯を噛み締めているとシラキが突然口を開いた。

「なあ、お嬢ちゃん」

「なんです?」

「狼の狩りの仕方って知ってるか?」

「はい?」

シラキは壁にもたれかかりながら、立てた両ひざに腕を乗せて世間話でもするような口調で続けた。

「狼は群れで狩りをする。それぞれ役割があってな、何より持久力が強いんだ。自分より遥かに大きな獲物だけでなく、弱った個体や老いた個体など見抜ける能力もある。だから獲物が疲労困憊になるまで追い続ける。追い続けて追い続けて……やがて疲れて逃げれなくなるところでトドメをさす」

シラキは自分の鋭い犬歯を見せて笑った。

「お前、狼の巣穴に入ってきて大丈夫か?」

ユラはその言葉に思い切り部屋の出入り口から一歩のいた。

「こ、こんなところでわたしに手を出すつもり?」

シラキは何も言わずにただ読めない笑みを浮かばせていた。







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