ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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心臓の高鳴り

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ユラはシラキの笑みに嫌な感覚がし、早々に離れてしまった。

クラックが「本当にすみません」と謝ってユラのあとを追っていく。

「あの嬢ちゃん、ずいぶんとお前を目の敵にしているな」

「エルヴィスの伴侶になりたいらしい」

アロンはどこかブスッとした表情でそっぽを向いた。

「嫉妬か?」

「は?嫉妬?俺が?何に?」

「安心しろ。あのアンドロイド達はお前を裏切らない」

「知ってーー」

「あいつらの認識のなかではな」

知っている、と言おうとしたが、シラキがあとに続いた言葉にアロンが眉をひそめた。

「どういう意味だ」

「アンドロイドはどうしても利益を優先しがちだ。例えば俺達人間はみんな虫が怖いとしよう」

「は?」

「例え話として聞いてくれ。アンドロイドはそのことを知識やデータとして知っている。だから虫から人間を守る。が、何かしらの事情で人間を虫が大量にいるところへ連れて行かなければいけない。この場合恋人でも家族でもなんでもいい。大事な相手を連れて行かないといけない場面がある。そこにはアンドロイド達が重視する利益が存在する。するとどうだろう?あいつらはその利益をもとに簡単に人間を虫が大量にある場所へ連れて行く。謝りながら、大丈夫だと言いながら、嫌がるお前を連れて行くんだ」

「………」

「身に覚えあるだろ?今監禁されている状況がそうだ。お前は嫌だと言っているのに監禁をする。お前を愛しているのに、大事にしなければいけないはずなのに監禁したほうが何かと便利だと感じたんだろう」

「それは……俺が、毎回勝手に……」

「おいおい、あいつらをかばっているのか?なんだ、ずいぶんとあいつらを気に入っているな。本気かどうかは知らないけど、一つだけ忠告してやるよ。期待はするなよ」

「エルヴィス達にか?」

「そうだ。あいつらは見た目も動きも人間そっくりだから多くの人が勘違いをする。アンドロイドも人間のように感情を持っていて、伴侶型じゃなくても人間と恋に落ちる」

シラキは軽く頭を振りながら嘲りのような笑みを浮かべた。

「ないない……皮一枚を剥いでしまえばその中にあるのは鉄だらけだ。熱を持っているのは機械から発する熱、人間のように振る舞えるのはそうプログラムされているから、見た目も人間そっくりに作られているだけ。そういう存在なんだよ、アンドロイドは。そもそも伴侶型が本気で人間と恋に落ちると思うか?」

「違うのか?」

「伴侶型はいわば人間を愛することが仕事だ」

アロンは前にも似たようなことを聞いた気がした。

「職務型が社会を回し、戦闘型が外敵と戦うことが仕事のように、伴侶型は人間が、自分は愛されている、と感じさせることが仕事だ。そこに本物の愛があるのかなんて誰もわからない。お前のことを知っているからお前が喜ぶ言動を取れる。人間は相手を思って言葉にするし、喧嘩もする。だが伴侶型はそれがない。常にお前を喜ばせ、喧嘩になりそうになれば必ず避ける。一緒にいると気が楽だ。それを愛されていると勘違いする」

「……アンドロイドが嫌いなのか?」

そう聞くのは他でもない。シラキが誰かと似ていると感じたからだ。顔立ちとかの話ではなく、その考え方、話し方から誰かを連想してしまう。

グレイシーがこうではないのだろうか。

なんとなく、シラキとグレイシーなら気が合いそうだと思った。

「アンドロイドが嫌い?いや、嫌いではないけど好きにもなれない。目の前にいられると違和感が半端ない。そもそも貧困区にはアンドロイドなんていないからな。いまだに慣れない」

「そうなのか……でも、エルヴィスやライネス、エルドが例え仕事で接してきてもいい。俺は気にしない」

シラキは黙ってアロンを見つめた。本来ならこのまま迷ったところで自分と人間同士の恋でもすすめるつもりだったが、まさか迷わずにエルヴィス達を選ぶとは思わなかった。しかも相手は監禁してきた相手である。

「はあ………お前達はいつもそうだ。居心地がいいからってアンドロイドのそばを選ぶ。みんなアンドロイドを簡単に思いすぎだ。痛い目を見るぞ」

「関係ねーよ」

シラキは愉快そうに笑うと両手を頭の横でひらひらさせた。

「はいはい。もう何も言わないから、そんなににらむな」













その日の夜フィンジャーとシラキはイアンによって部屋から連れ出された。

まさか、と思っているとエルヴィスが部屋に顔を出した。

しかしどこか慎重げにアロンの顔色をうかがっている。

「ア、アロン……その今日ユラさんが来たと聞いたが、機嫌を悪くしたかい?」

「いや、別に」

「それならよかった」

エルヴィスがホッとしているとアロンが手を伸ばしてきていることに気づいた。

「どうかしたのかい?」

アロンはエルヴィスの頭に手を置いて引き寄せた。

抱きしめるように腕で囲い、頭を擦り付けた。

「ア、アロン……?」

エルヴィスはすぐにハッとした。

まさか甘えられている!?

だがこの状況で甘えられる理由に思いつかない。心配されたことがうれしかった可能性があるが、今まで心配した場面でこのようなことになったことはない。

ユラの存在がアロンを不安にさせたのだろうか?

やはり早めに……ーー

エルヴィスの目の温度がわずかに下がった時である。

「信じているからな」

「え?」

アロンはエルヴィスと目を合わせた。

あまりの至近距離にアロンのほうが恥ずかしくなってくる。

「ちゃんとお前を信じているからな。絶対に裏切るなよ」

「も、もちろん……!」

「お前達がどう俺に接しようとかまわない。仕事で愛していると言ってもいい。でも、俺は……お前達が……」

エルヴィスはまばたきをもせずにアロンを見つめていた。

その先の言葉がなんなのか、何がくるのか予想がつかない。

「俺は……その、お前達のこと……あ、あ……」

「………」

アロンの真っ赤な顔、手に集まる温度、じっとりとにじみ出る汗………エルヴィスは心臓の高鳴りを感じた。

それはどんどん大きくなり、いつもの倍より早く脈を打っている。

アロンの心臓音である。

気になってライネスの真似事をして、愛する相手の心臓音を感じ取れるようアロンの体に秘密にインプラントを埋め込んだ。

本来のエルヴィスならアロンの体調不良を疑うところである。だが、そう考えなかった。ただアロンの次の言葉を静かに待ち続けている。

「お前達のこと…………あい……愛したい」

「………」

「今の自分がお前達のこと、まだ愛しているとは思わない。だけど、愛したい。ちゃんと家族となれるように、お前達とこれから一緒に生活して、楽しいことも悲しかったことも共有していきたい……」

「…………」

「俺は何もないけど……でも、愛していると言ってくれるお前達と本気で家族になりたい」

エルヴィスはその言葉に目を見開き、アロンの心臓の鼓動が高鳴っていくのを聞いて……聞いて………







ピィーーーーーーーーーーーーーーッ







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