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突然鳴り響いた高い音にアロンがパッと手を離して周りを見回した。
「な、なんだ今の音……」
アロンは視線をエルヴィスに向けた。
視線を向けられた当の本人は目を見開いたまま固まっている。
「今の音、お前から出てなかったか?」
「え……?ああ……そうだね。エラーが出てしまったみたい」
「エラー?」
「処理しきれないことやデータ容量を超えると起こるんだけど、ウイルス感染しても起こるんだ。今のはたぶんウイルス感染ではない」
エルヴィスはいつも通りに話しているが、その顔はどこか上の空である。
「お前本当に大丈夫か?」
エルヴィスはじっとアロンを見つめたまま答えなかった。
そして何を思ったのか、突然自分の顔を覆った。
「エルヴィス?」
「な、なんでもない………今日は不安にさせてごめんね。ゆっくり休んで」
そう言って立ち上がると振り返りもせずに部屋を出て行ってしまった。
いつもは追い出さない限り出ようとしないのに今日はやけにすんなりである。
「なんなんだあいつ……」
——————————————————
———————————————
ピィーーーーーーッ……
ピィーーーーーーッ…………
………………………………………………………
ピィーーーーーーーーッ………
鳴り止まないエラー音にエルヴィスは部屋の中央でうずくまっていた。
定期メンテナンスは受け続けている。最新機種の体ではないものの、アップデートを怠ったこともない。
なのにこのエラーと今頭の中に起こっている異変にこんがらがりそうだった。
なぜかアロンを思い出すたびにエラー音が鳴り響く。
アロンの視線
ピィーーーーーーッ
アロンの声
ピィーーーーーーッ
アロンの体温
ピィーーーーーーッ
「お前達のこと…………あい……愛したい」
「お前達とこれから一緒に生活して、楽しいことも悲しかったことも共有していきたい……」
「俺は何もないけど……でも、愛していると言ってくれるお前達と本気で家族になりたい」
アロンの言葉
ピィーーーーーーッ
「家族に……なりたい」
ピィーーーーーーッ
「私達を愛したい……」
ピィーーーーーーッ
アロン……
ピィーーーーーーッ
アロン………
ピィーーーーーーッ
人間を本気で理解できないと言われ続けてきた。
だがデータを集め、行動と心理を分析すれば伴侶型以外のアンドロイドにも人間と愛し合うことは可能だと信じてきた。
その行動の理由をわかれば状況に応じた言動を取れば人間によろこばれる。
実際伴侶型や補助型はそのように人間のそばに立っている。
人間は自分を裏切らない存在を探そうする。
人間は自分の味方でいてくれる存在に依存する。
人間は自分を守る存在に甘え、本質をさらけ出す。
だから人間に味方だと言い続け、愛していると言い続け、裏切らないと言い続け、守ると言い続けている。
エルヴィスは思わず笑った口もとを手で覆い隠した。
「やはり……間違いじゃなかった!」
最初はあんなに警戒して心を開かなかったアロンが今じゃ自分達を愛したいと言っている。
「アロンが……」
ピィーーーーーーッ
「私達を愛し、家族になろうとしている」
ピィーーーーーーッ
エルヴィスですら今自分の心境をうまく言葉にできなかった。
高揚感に似た何かが全ての思考回路を支配し、アロンに関するいろんな思い出が横切っていく。
「ああ……アロン……」
エルヴィスは立ち上がり窓辺に歩き寄った。
「アロン……」
ダンーーと手が窓ガラスに叩きつけられた。
窓には手の向こうに隠れたエルヴィスの表情がある。
愉快げに歪められた目だけが夜の街の上に映し出されていた。
「足りない……まだ足りない」
翌日の朝、なぜかエルヴィスが朝食の席にいた。
アロンは口の中で咀嚼していたものを飲み込んだ。そして視線をチラチラと向いに投げかける。
「お前………その、なんでいるんだよ」
昨晩からフィンジャーとシラキはまだ帰ってきていない。
「きみの顔が見たいんだ」
エルヴィスがニコニコとした笑顔でそう言う。しかしアロンにはさっきから無視できないことがある。
「あのさ、鳴っているんだけど……」
「うん、みたいだね」
ピィーーーーーーッという音がさっきからずっと鳴っている。
「そのエラーだっけ、直ってないのか?」
「今日一度検査に行くつもりだよ」
「ここにいないで早くいけよ」
「もう少しだけ。もう少しだけきみを見ていたい」
ピィーーーーーーッ
「そうかよ」
ピィーーーーーーッ
気になりすぎて食事があまり進まない。
しかし顔を上げればエルヴィスの顔がある。少しでも食べなくなるとすぐに心配されるため、少量だとしても食べ進めなければいけない。
「あんまり見てくるなよ……食べずらいだろ」
「ごめんね。でもきみがあまりにも可愛いから。おいしいかい?」
「ああ……」
いつもと変わらないのになんだかエルヴィスが以前と少し違って見える。
もしかしたらそのエラーのせいかもしれない。
「そういえば絢爛会からお誘いがきているんだよね」
「きていた。それがどうかしたのか?」
「その日はシラキを連れていくといい」
「シラキ?」
意外な名前が出てきたことでアロンが眉をひそめた。
「なんでだ」
「話によると彼はああいった交流の場に慣れているらしい。助けになると思うんだ」
「シラキが?」
にわかに信じがたい。だが自分一人でユラの前に立つのも不安である。
「まあ、誰かにいてほしいな。シラキでもいいか」
「………」
「どうした?」
エルヴィスが急にその場で固まった。
そして胸を押さえてエラー音とともにどこか不思議そうな顔をする。
「いや、なんでもない。ただ、きみがシラキを選んだことになんだか不愉快なものを感じた」
「はあ?シラキを連れていけと言ったのはお前だろ」
「それもそうだね!」
「なんなんだ……体の調子が悪いなら早く直してこい」
「うん。そうする。アロン、愛しているよ」
突然の愛しているに今度はアロンが固まった。
「な、なんだ今の音……」
アロンは視線をエルヴィスに向けた。
視線を向けられた当の本人は目を見開いたまま固まっている。
「今の音、お前から出てなかったか?」
「え……?ああ……そうだね。エラーが出てしまったみたい」
「エラー?」
「処理しきれないことやデータ容量を超えると起こるんだけど、ウイルス感染しても起こるんだ。今のはたぶんウイルス感染ではない」
エルヴィスはいつも通りに話しているが、その顔はどこか上の空である。
「お前本当に大丈夫か?」
エルヴィスはじっとアロンを見つめたまま答えなかった。
そして何を思ったのか、突然自分の顔を覆った。
「エルヴィス?」
「な、なんでもない………今日は不安にさせてごめんね。ゆっくり休んで」
そう言って立ち上がると振り返りもせずに部屋を出て行ってしまった。
いつもは追い出さない限り出ようとしないのに今日はやけにすんなりである。
「なんなんだあいつ……」
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ピィーーーーーーッ……
ピィーーーーーーッ…………
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ピィーーーーーーーーッ………
鳴り止まないエラー音にエルヴィスは部屋の中央でうずくまっていた。
定期メンテナンスは受け続けている。最新機種の体ではないものの、アップデートを怠ったこともない。
なのにこのエラーと今頭の中に起こっている異変にこんがらがりそうだった。
なぜかアロンを思い出すたびにエラー音が鳴り響く。
アロンの視線
ピィーーーーーーッ
アロンの声
ピィーーーーーーッ
アロンの体温
ピィーーーーーーッ
「お前達のこと…………あい……愛したい」
「お前達とこれから一緒に生活して、楽しいことも悲しかったことも共有していきたい……」
「俺は何もないけど……でも、愛していると言ってくれるお前達と本気で家族になりたい」
アロンの言葉
ピィーーーーーーッ
「家族に……なりたい」
ピィーーーーーーッ
「私達を愛したい……」
ピィーーーーーーッ
アロン……
ピィーーーーーーッ
アロン………
ピィーーーーーーッ
人間を本気で理解できないと言われ続けてきた。
だがデータを集め、行動と心理を分析すれば伴侶型以外のアンドロイドにも人間と愛し合うことは可能だと信じてきた。
その行動の理由をわかれば状況に応じた言動を取れば人間によろこばれる。
実際伴侶型や補助型はそのように人間のそばに立っている。
人間は自分を裏切らない存在を探そうする。
人間は自分の味方でいてくれる存在に依存する。
人間は自分を守る存在に甘え、本質をさらけ出す。
だから人間に味方だと言い続け、愛していると言い続け、裏切らないと言い続け、守ると言い続けている。
エルヴィスは思わず笑った口もとを手で覆い隠した。
「やはり……間違いじゃなかった!」
最初はあんなに警戒して心を開かなかったアロンが今じゃ自分達を愛したいと言っている。
「アロンが……」
ピィーーーーーーッ
「私達を愛し、家族になろうとしている」
ピィーーーーーーッ
エルヴィスですら今自分の心境をうまく言葉にできなかった。
高揚感に似た何かが全ての思考回路を支配し、アロンに関するいろんな思い出が横切っていく。
「ああ……アロン……」
エルヴィスは立ち上がり窓辺に歩き寄った。
「アロン……」
ダンーーと手が窓ガラスに叩きつけられた。
窓には手の向こうに隠れたエルヴィスの表情がある。
愉快げに歪められた目だけが夜の街の上に映し出されていた。
「足りない……まだ足りない」
翌日の朝、なぜかエルヴィスが朝食の席にいた。
アロンは口の中で咀嚼していたものを飲み込んだ。そして視線をチラチラと向いに投げかける。
「お前………その、なんでいるんだよ」
昨晩からフィンジャーとシラキはまだ帰ってきていない。
「きみの顔が見たいんだ」
エルヴィスがニコニコとした笑顔でそう言う。しかしアロンにはさっきから無視できないことがある。
「あのさ、鳴っているんだけど……」
「うん、みたいだね」
ピィーーーーーーッという音がさっきからずっと鳴っている。
「そのエラーだっけ、直ってないのか?」
「今日一度検査に行くつもりだよ」
「ここにいないで早くいけよ」
「もう少しだけ。もう少しだけきみを見ていたい」
ピィーーーーーーッ
「そうかよ」
ピィーーーーーーッ
気になりすぎて食事があまり進まない。
しかし顔を上げればエルヴィスの顔がある。少しでも食べなくなるとすぐに心配されるため、少量だとしても食べ進めなければいけない。
「あんまり見てくるなよ……食べずらいだろ」
「ごめんね。でもきみがあまりにも可愛いから。おいしいかい?」
「ああ……」
いつもと変わらないのになんだかエルヴィスが以前と少し違って見える。
もしかしたらそのエラーのせいかもしれない。
「そういえば絢爛会からお誘いがきているんだよね」
「きていた。それがどうかしたのか?」
「その日はシラキを連れていくといい」
「シラキ?」
意外な名前が出てきたことでアロンが眉をひそめた。
「なんでだ」
「話によると彼はああいった交流の場に慣れているらしい。助けになると思うんだ」
「シラキが?」
にわかに信じがたい。だが自分一人でユラの前に立つのも不安である。
「まあ、誰かにいてほしいな。シラキでもいいか」
「………」
「どうした?」
エルヴィスが急にその場で固まった。
そして胸を押さえてエラー音とともにどこか不思議そうな顔をする。
「いや、なんでもない。ただ、きみがシラキを選んだことになんだか不愉快なものを感じた」
「はあ?シラキを連れていけと言ったのはお前だろ」
「それもそうだね!」
「なんなんだ……体の調子が悪いなら早く直してこい」
「うん。そうする。アロン、愛しているよ」
突然の愛しているに今度はアロンが固まった。
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