ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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感謝と謝罪

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翌日の朝、アロンが目覚めると部屋に見知らぬ青年アンドロイドが入ってきた。

テキパキと動いて、カーテンを開けるとアロンにとびっきりの笑顔を見せた。

「おはようございます!アロンさん!」

「誰だ、お前……」

アロンが警戒してドアのそばまで逃げると青年はきょとんとした顔をした。

「昨晩帰ってきた時、市長と一緒に出迎えたはずですよ……」

妙なにしょんぼりした顔で言われた。

それでもアロンは警戒を解かずににらみ続ける。

「アロンさん、僕ですよ!クラックです!」

「え……?お前、クラックなのか?」

「はい!もとの体は壊れてしまって、幸いメモリーカードはエルドさんがなんとか取り返してくれたので……今の姿はいやですか?」

「そうだったのか……別にどんな姿でもかまわねぇよ」

「本当ですか!よかったです!もとの機体より身長が高いので、なんだか視界も新鮮です!」

「お前が楽しんでいるならいい……。そうだ。あいつは?」

「あいつ?」

「ラ、ライネスのことだ。もう帰ったのか?」

「少佐でしたらまだここにいますよ。呼びましょうか?」

「いい!その、場所だけ教えてくれ……」

「……?わかりました。それにしても、少佐も酷いですね」

「何が?」

「アロンさんをあそこまで怖がらせるなんて。しかも血まみれじゃないですか。見た時てっきりアロンさんが酷い怪我をしたんじゃないかと心配でした」

アロンは思わず項垂れた。

「ライネスのせいじゃない……」

「それもそうですね……。やっぱりあのテロリストのせいですよね!?まったく思い出すだけでイライラしてきた!僕を使ってアロンさんを危険に晒したと聞いて怒り心頭でしたよ!しかも話によると変態のもとに送られたって!?まったくもってあり得ない!あのゴミが!!」

「その、お前はどうやってグレイシーに入られたんだ?」

「体を乗っ取られたことですよね。実は僕もよくわからないです。聞いた話ではハッキングされたようです。それ以前からもよく機体がおかしなことになっていたのですが、関係があるかどうかはまだわかりません。街中の様子じゃ、もしかしたら僕もウイルス感染された可能性が高いですけどね」

機体がおかしいと言えば、イアンの様子も少し変だとアロンは思い出した。

「イアンは?あいつは平気なのか?」

「イアンは……えーと、街中にいるアンドロイドと同じように暴走しちゃったんです」

「なっ!今は!?」

「今はその、ウイルス完全によってメモリーカードが破損してしまって、何も覚えてないんです」

「そんなことが……」

「まあ、大丈夫ですよ!まったく同じ外見と人格のイアンができあがるので、そのうち連れてきますよ!」

それを聞いてアロンは微妙な気持ちになった。

「お前はいいのか?」

「何がですか?」

「イアンはお前のことまで覚えてないんだよな?悲しくないのか?」

「悲しいですよ」

そう言うクラックの表情は少し沈んだ。

こうして見るとよくわかるのだが、軍部にいるアンドロイド達と比べ、クラックもエルヴィス達も本当に表情豊かである。

今までただの機種型の違いと漠然と考えていたが、今はよりその違いを実感できる。

「でも、悲しいからと言って現状が変わるわけではないので、これから新しいイアンとたくさん思い出を作って笑えたらなと思います!」

「それもそうだな。現状が変わるわけでもないし……」












クラックからライネスの居場所を教えられたが、場所はエルヴィスの事務室だった。昨日入ってから出ていないという。

アロンはライネスが出てくるのを待つつもりだった。せめて感謝と謝罪はしたほうがいい。

だがいくら待っても出てこず、アロンが寝かけた頃、大きな影が目の前に落ちた。

ハッとして顔を上げると顔をしかめたライネス、そしてその後ろから顔を出しているエルドの姿が見えた。

「外で動かないやつがいると思えば、やはりお前だったか。こんなところで何をやっているんだ」

その固いしゃべり方にアロンが視線を床に落とした。

考えたはずの言葉達が、本人を目の前にしてすべて忘れてしまった。頭のなかに何度もライネスが死体のなかで血まみれになりながら立っている光景が浮かぶ。そして母そっくりの女性の頭をつぶす場面である。

「お、俺………いい、たいこと…ぁ……」

「なんだって?」

「そ、その………っ」

「新しい機体は軍部にある。まだもとに戻っていない。その言い方が記憶のある俺との交流の仕方だと言うなら文句はないが、せめて今はわかるようにしゃべってくれ」

そう言われてアロンはますますしゃべれなくなった。

言葉がのどでつっかえたかのように一つも出てこず、息だけが苦しくなっていく。

体が震え出したところで、見守っていたエルドが声を出した。

「ライネス、アロンを怖がらせている」

「見ればわかる!だけど今のどこかダメだったんだ。何が怖い?お前のこと責めているわけでもない。追い詰めているわけでもない。何がそんなに怖いんだ」

「お、俺……!」

そこへエルドが手を伸ばしてアロンを抱きしめた。頬に、額に、目に、軽く触れるようなキスをし、頭をなでながらなぐさめた。

「大丈夫だ。アロン。何も怖くない。ここできみを傷つける人は誰もいない」

言いながらアロンを抱き上げ、その背中を軽くたたく。

その光景にライネスは目を細めた。

見つめる先にはアロンの手がある。自分が抱き上げる際は自分を守るように抱きしめていた手が、今はエルドの服をぎゅっとつかんですがりついているように見える。







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