64 / 241
第三章
鎖
しおりを挟むお城のパーティーから1週間。
カナトは生きていた。
ただし、アレストの部屋で鎖に繋がれている。
足首の枷を揺らしながらため息をついた。殺されないだけマシに思うべきか、それともこの状況を憂うべきか。
「はあ~!そもそもなんで殺してもいいなんて言ったんだよ!時を遡って当時の自分を殴りたい!」
ベッドの上でシーツが乱れるのも気にせず足をばたつかせた。
ちょうどドアがノックされる。
「こんな時に誰だよ!クソが!」
「失礼します」
入ってきたのはムソクである。今アレストの部屋に入れるのは本人とムソクのみだった。
「昼食持ってきました」
「帰れ!!」
「すっかり元気になりましたね」
「どこかだよ!?自由に動き回れることの自慢か?あぁ?」
「違います。パーティー後、しゃべるのも大変だったじゃないですか。それが今こんなに吠えれるなら回復力がすごいとしか言いようがありません」
もっとも、それはアレストにのどを突かれたせいで毒の一部を吐き出せたおかげもある。
「今日のメシはなんだよ」
カナトはベッドの上で背もたれながら足を交差させた。
「お粥です」
「またかよ!?」
「お腹の調子はどうですか?まだ治っていないならしばらくは消化しやすいものがいいです」
「ふざけんな!何日お粥と汁物食べていると思ってんだ!肉くらいいいだろ!」
「ダメです。アレスト様がダメだと言ってます」
「あーーーッ!!あの野郎!!監禁しといてこの仕打ちかよ!」
「………あなたのためじゃないですか」
「知ってる!でもムカつく!」
「そんなにムカつくのか?」
その声にムソクとカナトがドアを見た。アレストがドアを閉めながら振り返る。
「肉なんて重いもの食べたら消化に悪い。ほら、おやつに果物持ってきたから」
「ケーキは?」
「ごめん、それはないかな」
「出ていけ!」
ため息をつきながらアレストは果物の皿をベッド付近のテーブルに置いた。ムソクに目配りすると、察した向こうは食事のトレーをテーブルに置いて軽く礼をすると出て行った。
「まだ怒っているのか?」
ベッドに腰かけながらアレストが手を伸ばそうとする。それをパシッと打ち落とされた。
「人の足に変なものつけといたやつが言うことか?」
「そんなに怒らないでくれ。きみが療養しているあいだに盗み食いや激しい運動で治りかけのお腹を壊さないためだよ」
「本当か?お前、あの夜……」
そこまで言ってカナトは口をつぐんだ。
目覚めたあと、アレストに首を絞めかけられた夜はカナトのトラウマになりかけていた。そのせいで未だにその目を直視できない。
「カナト、あの夜は忠告だ。僕は本気だよ」
顔を背けていたカナトはちらりとアレストをのぞき見した。やはり目を見れない。しかし、わずかに見えた口もとはいつものように微笑んでいる。
目をそらして口をもごもごとさせ、組んだ腕で自分を守るようにぎゅっと縮こめた。
「もういいだろ。メシは食うから早く出ていけよ。仕事終わってないだろ」
「終わった。残りはユシルの分だからな」
「じゃ、じゃあパーティーの件は?もう解決したのか?これで王族と関係が悪化したら……」
「それも心配ない。あのメイドときみで城の警備に問題があることがわかって感謝しているらしい」
「は?」
「あと危うく第二王子が殺人罪に問われるところだったからな。きみが未然に防いでくれたことで、王妃が非常に感謝しているらしい。だからパーティーは後日改めて開くことになった。先日知らせを聞いたばかりだからまだ教えていなかったな。ぜひきみにも参加して欲しいとのことだ」
「そう、なのか?それはよかったな……」
少し気まずい沈黙が降りた。カナトは凝視されているのを感じながら身をよじった。
「いつまで見るつもりだ?後日のパーティーのために早く準備しに行けよ」
「うん、そうだな。……今夜はニワノエのところのパーティーに参加するから、それまでにきみのことをもっと見ようと思って」
「そうか……よ?え?誰のパーティーに参加するって?」
「ニワノエ」
「あいつの!?なんで誘ってくるんだよ!!」
わざわざ聞かなくてもアレストを貶すためたとわかっている。
「なんでだろうな?意外とヴォルテローノ家とウェンワイズ家は関係が密接だったりするからな。他に優先するべきパーティー招待もないし、同日に開催されるパーティーもなくて断れないんだ」
「お、俺も行く!!」
「………」
瞬間アレストから表情が消える。
「すきを見て逃げるためか?」
「そんなわけないだろ!」
そんな手があったか!
「ダメだ。今は食べ物に気をつけなければいけないし、激しい運動も控えないと」
「自分で気をつけるからさ?俺だって歩き回りたいし、ずっとベッドの上だと疲れるし?」
なおもアレストは無言だった。
「……なあ、どうすれば連れて行ってくれるんだ?」
「そんなに行きたいのか?」
「もちろんだ!」
「ユシルも行くことは知っているか?」
「え?」
「ユシルも行くことになっている」
だよな!さすがに1人だけ誘ってもう1人は誘わないことなんてないもんな!しかもあのニワノエがそんなことするわけないもんな!
カナトは頭を抱えてぐぬぬと策を考えた。どうすれば連れて行ってもらえるのか。
「別に、ユシルのためじゃねぇし。言われるまで知らなかったし」
「………それもそうだな。じゃあ、食べ物や激しい運動に気をつけると誓えるならいい」
「本当か?」
「僕の目を見ろ」
「……何言ってんだ」
「僕から目をそらすな」
カナトは迷ったあと、そろそろと視線を上げた。
「そうだ。それでいい。どんな場所でも僕より注目するならそれ以降は連れ出さない。いいな?」
「わかった……」
アレストはフッと満足げに笑った。
30
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる