転生と未来の悪役

那原涼

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第五章

脱出1

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夢の中にいたカナトは少し違和感を感じた。

なんだかこのまま寝てはいけないと勘が訴えて来る。

完全に意識が沈み込もうとする手前、全気力を使って重たいまぶたを開けた。

「ア、アレスト」

「どうしたんだ?」

「その、今何やっているんだ?」

カナトはゴシゴシと自分の目をこすり、なんとか周りを把握しようとした。

「何もしてないよ。眠いなら寝たほうがいい」

「いや、大丈夫。それより、なんか持ってないか?」

暗闇の中で目をすがめ、アレストが何を持っているのかをはっきり見ようとした。

あれは………まさかキトウか!!?

眠気が一気に吹き飛んだ。

「待っ!アレスト、それ!」

「ああ、この奇妙な爬虫類のことか?きみのことを傷つけようとしたから処理しようとしたところだ」

キトウが「んっーー!」と激しく体を揺らした。違うらしい。

カナトは引きつった笑いでアレストの腕をつかんだ。

「と、とりあえず離せ!な!息苦しそうだぞ!」

「そうか?」

「そう!それに、俺1人でここにいてもつまらないだけだし、何か側にいてくれたほうがいいなぁって思ってて」

「あの薬を食べていてもつまらないと感じるのか……。量が少なかったかな」

「なわけあるか!!じゃなくて、ちょっとだけ意識戻る時につまらないだけなんだよ。わかるだろ?俺静かに座っていられるような性格じゃないし」

アレストはどこか考えるような仕草をした。そしてうんとうなずく。

「それもそうだな。やっぱりオウムや猫たちを連れてこようか」

「え?」

「じゃあ、とりあえずこの可愛げもない柔らかい毛もない生き物は捨てておこうな」

「いやいやいや!俺ちょうど今無毛が好きなんだよ!無毛最高!」

「ホロロや猫たちの毛を抜いておこうか?」

「は!?さらっと恐ろしいことを言うな!そんなことしてみろ!嫌いになるぞ!」

「……そっか。じゃあもう少し見た目のいい爬虫類をーー」

「そいつがいい!そいつ以外にいらない!」

カナトがビシッとキトウを指さした。

アレストはまた少し考える素振りをすると、にっこりと笑った。

「わかった。カナトがそこまで言うなら仕方ない。はい」

はいと渡されてカナトは手の中のキトウとアレストを交互に見た。

「ほ、本当にいいんだな?」

「カナトが欲しいと言ったんだろう?」

「う、うん!」

「じゃあ、おやすみ」

「はい……」











翌朝、キトウは枕の影に隠れながら着替えているアレストをにらんだ。ムソクが最後に上着を渡すと静かに退室し、まだ寝ぼけ眼のカナトが目をしばたたかせた。

「それじゃあ、カナト、僕は仕事に行くけど朝食はしっかりと食べるんだよ」

朝食はすでにムソクが持ってきてくれている。朝食分しかないのを見ると、おそらく昼食分はアレストが直々に持ってくる可能性が大きい。

「ん~」

「行ってきます」

アレストが出ていくのを見届けるとキトウは慌てて這い出て窓によじ登ろうとした。

「おい!手伝え!」

「お~」

「早くしろ!帰って来たらどうする!?」

寝ぼけ眼のままカナトはキトウをつかみ、立ち上がって格子窓の前に運んであげた。

「ほら、早く逃げろ~」

キトウは格子のあいだから無理やり体をはみ出させると転がるように脱出した。

「じゃあな!1人でアレストに支配されてろアホ!」

自由を得たことでキトウは舞い上がり、ぱたぱたと去って行った。

カナトは頬をかきながら首を傾げた。

「支配されている……?俺が?」

いまいちキトウの言葉が理解できない。しかし、カナトはまるで毎日のルーティンをこなすように朝食を食べ始めた。少し食べ進んだところで、これは薬の入ってない昼食ではないことを思い出して素早く戻した。

そして朝食を食べきったか確認しにきたムソクによって結局すべて食べることになった。

ぼんやりしながら時間の進みもよくわからないなか、ドアが誰かによって開かれ、カナトが音に気づいてゆっくりとベッドの上で首を回した。

「アレスト……」

「うん。朝食を全部食べて偉い」

「そうかぁ?」

漠然とほめられたとわかったカナトが、へへ、と笑った。

だが目の前にひょいと何かを持ってこられ、うん?と首を傾げる。

「逃げて行ったよ。代わりに檻に閉じ込めておいたから」

「このクソが!!」

何やら騒がしい気がする。だがカナトは目の前の檻を見て自然といつも檻にいるホロロを連想し、うれしそうに手を伸ばした。

「ありがと、な……」

「どういたしまして。お昼一緒に食べよっか」

「うん」

やがて昼食も済ませ、アレストが仕事に戻り、キトウが声を出した。

「おい、カナト!」

「んぁ~?」

「なんだそな夢現みたいな顔は」

「おー……」

「しっかりしろ!何食べさせられたんだよ!」

「んぅ~」

「寝るな!」












カナトの目が覚めたは夕方過ぎだった。

「頭イッテ!」

「やっと起きたか」

「え?」

顔を向けるとなんと、檻の中にキトウの姿があった。

「あれ?キトウ!?なんでここにいるんだ!」

「頭がハッキリしてきたか?たっく、どんだけ寝るんだよ」

「おかしいな……確か送り出したような。夢か?」

「現実だアホ。……また捕まえられたんだよ」

カナトがぎゅっと目を細めた。

「バカか?」

「お前が言うな!」

「マジか……アレスト何か言わなかったか?

「お前の代わりに檻に閉じ込めておいたとさ」

「殺されなくてよかったな!」

「基準おかしくなってないか?閉じ込められても死ぬほど嫌なんだが?」

「でもアレストのことだし……正直お前が息しているのもすごいと思うし」

「毒されてんなぁ……。まあいい。お前はそういうやつだもんなぁ」

「言い方イラつくな」

「はいはい。それより、少し気になることがある」

「なんだ?」

「この屋敷の場所は城からかなり近い。そして今日檻に入れられて連れてこられたが、ずっと違和感のようなものを感じた」

「ん?どういうことだ?違和感ってなんだ?」

「最後まで聞け。お前が寝ているあいだに色々と考えた。この部屋含め、壁の表面の作りや質感が城の地下とそっくりだ。しかも見た感じ罠もある。不思議なことにお前を探すあいだ、この屋敷が建てられる前に地下トンネルが掘られていた話を聞いた。それが城と繋いでいるらしい。噂程度だけど。その掘られた場所がちょうどこの屋敷の位置と近い」

「はぁ………」

「……ああ、もう!なんでこんなにも鈍いんだよ。もしかしたらこの地下は城の地下に繋がっているかもしれない」

「嘘だろ!」

「可能性としてだけど」

「でも…それって俺と何か関係あるのか?」

カナトが頭の後ろをかきながら不思議そうにした。

どのみちそんなことを知ってもこの部屋から出られるわけじゃない。

「話を聞いておおよその答えはわかっていたが、お前さあ……少し頭鍛えろよ。ユシルが幽閉されたのが城の地下なんだろ?じゃあ、助けられるかもしれーー」

「そうか!!」

「声でかい!」

ハッとカナトが口をふさいだ。キトウは大きなため息をついてから言った。

「なんとかしてこの部屋の鍵を手に入れて脱出する!いいなカナト!」

「わかった!あと俺の足枷の鍵も!」

「あー、そうだった……」

「まあ、皿割れば切れるだろ!」

「けっこう太いけど、この縄」

キトウは行き先の不安にさっきよりも大きなため息をついた。

だが、これがアレストに復讐する唯一の方法である。

キトウがフッと笑った。

覚えていろ、アレスト。俺を連れ戻したのはお前だ。俺にしたことで必ず後悔させてやる!











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