転生と未来の悪役

那原涼

文字の大きさ
214 / 241
第五章

意外な来店客

しおりを挟む









お店に戻ると言ってから、カナトは本当にお店に戻れた。

キシューが何やら訝しげに戻って来たカナトの両脚と顔を交互に見ていたが、レリィにいさめの視線を向けられると肩をすくめてそっとその場を去った。

戻ってからは以前と変わらない生活を送っていたが、何かしなければという使命感にも似た衝動でカナトは少しずつお店に関わろうとした。

そんなおり、店には意外な来客が来た。












いつも通り貴族たちが話しかけてくるのをテキトーにあしらっていると、ドアベルがチリンチリンと鳴った。

人の隙間から見やると、なんと来たのはデオンである。

カナトが瞬時に怒りの表情を浮かべて近寄った。

「お前!よく来たな!」

「おー!うまくやっているようだな!」

「じゃねぇよ!俺のこと普通にしゃべってんじゃねぇか!」

「悪いな?」

「思ってねぇだろ!」

「まあ、怒るなよ。実はな、お前を俺の屋敷じゃなくて店を用意してやったのもあいつがあんたに会いやすくするためなんだけど、知ってたか?」

「貴様っ!」

「ハハハッ!」

「ハハハじゃねぇよ!」

怒り心頭のカナトに構わずデオンはますます楽しそうに笑った。そしてお詫びと言ってお店にある菓子をいくつか買って帰った。

「またなー」

「二度と来るな!」

デオンを見送ったカナトは思い切りドアを閉めた。

クソッ!

カウンターに戻ったはいいが、押し寄せてくる貴族たちをうっとうしく思い、ガルルルッ、とにらんで退治した。

もはや貴族たちにおだてられるのに慣れすぎて、対応がどんどん雑になって来ている。

そして夕方近くなってくるとさらに珍しい客が来た。

ドアベルの音とともにカナトが視線を向けると思い切り目をむいた。

「今、少しいいか?」

フードを深く被った人物がそのフードのふちを上げた。

「お前……」

「ん?……ああ!」

あちらもカナトを見て驚いた顔をした。

「なんでお前がここにいる!?」

「なんでも何も、俺ここの店長だし」

「はあ!?」

来店したのはなんとニワノエだった。顔を見るのは割と本当に久しぶりである。

あのトサカみたいな髪型がおちついて、今じゃ中分ショートになっている。

「お前髪型どうした?」

「お前が聞くな!バレないように目立たない格好にしたんだよ!」

目立っている自覚はあるのかこいつ……。

カナトがジト目になっていると、ニワノエは何やら思いつめた顔で歯噛みをした。

「ここで……せ……」

「あ?今なんて?」

「ここで働かせろ!」

「はい?」

カナトは目をまん丸にしてニワノエを見つめた。












さらに数日後。

ニワノエが店員として働き始めた。

なんだこの状況。

カナトはいそいそと開店準備の菓子並べをしているニワノエを見た。

なぜこの人がここで働きたいのか、いくら考えても理由が思いつかない。そもそも働かなくてもいいような人である。

季節は冬入りして、かなり冷え込み、カナトは厚着をするようになった。

そして肝心のアレストからのアタックは今のところない。

店に来るわけでも、誰かを寄越すわけでもない。

だからなのか、カナトがここ最近店の入り口をやけに気にするようになった。

ロンドール領の冬もかなり寒く、今日は大雪が吹き荒んでいる。

本来なら貴族でもほとんど来ない。とりわけ忠誠心を見せたいバカが来るが、寒さに早々退散していく。

だというのに、また誰か来たようである。

ファー付きのローブのフードを被り、よろよろと店の中に入ってくる。目にもまぶしい長い金髪が雪をつけてはらりと肩を滑った。

「な、何か食べ物を……」

そう言ったきり、バタンと倒れた。

「お、おい!」

カナトが慌てて近寄って抱き起こした。

フードを取ると、その顔にニワノエが来た時以上に驚いた。

「お前!!」

その大声に店員たちがぞろぞろと集まる。

「どうかしましたか?」

レリィが肩越しにのぞいた。

カナトは震える手で慌ててフードを引き下げた。

「な、なんでもない!なんか倒れたから部屋に連れて行く!」

言うなり慌ててフランをかついで部屋に駆け込んだ。

そう。店の中に倒れ込んできたのは、この国の第二王子、フランである。

なんでこうもおかしいヤツらばかり店に来るんだよ!!

フランをベッドの上に置いてその容態を見た。

「おい!意識あるか!」

頬をぺちぺち叩くと「うぅ」とうめき声をもらした。

「よし生きているな!」

「アレスト……許さない、お前だけは……」

フランはそう言うとがくりと意識を失った。

「なんだって?アレスト?おい、どういうことだ!」

しかしいくら揺れ動かしてもフランは目覚めなかった。

後々心配して入って来たレリィがカナトの暴挙を止め、なんとかフランの虫の息を取り留めた。



しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

処理中です...