【完結】🧚‍♀️カクヨムコン10中間選考突破作品・マーダ『森の護り人・ファウナ』-ローダ第零章-

🗡🐺狼駄(ろうだ)

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最終部 ファウナ・デル・フォレスタ

第212話 奇行過ぎるオカエリナサイ

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 本物のファウナ・デル・フォレスタ当人から生存報告を二年半越しに受けたフォレスタ家新当主ゼファンナ・ルゼ・フォレスタ。

 さらに新当主の護衛を担うになうラディアンヌ・マゼダリッサとオルティスタの二人。

 驚き・呆れ・怒り・歓喜……そして涙。
 滝の如き勢いで喜怒哀楽きどあいを流す私達の信じた女神。
 ファウナ・デル・フォレスタは死してなお、ド天然であったと思い知らされた。

 双子の姉ゼファンナ、散々振り回された心境。『どうして連絡しなかったのよッ!』と怒気どき転じて笑うより他ない。

 ──二年半前。
Will y私をou kill me殺してくれる?』
Ummう、うん?Sure判った.』

 ──現在。
Sorryゴメ~ン,living 私生きてるI’m fine.大丈夫だよぉ

 途方とほうもなき支離滅裂しりめつれつ。付き合った姉は偉大いだい。『I did私は myベスト best.尽くした』と自分を褒めほめ千切ちぎ算段さんだん決めて此処までやり遂げた。

 加えてゼファンナは今や、妹の扱い良く知り得た最大手。真実の女神をてのひらで転がすすべ熟知じゅくちしている。

 ▷▷全く……貴女は二年経っても相変わらずなド天然よね。処で一度此方に戻って来ない? 皆だって貴女の事、心配してるわ。

 ゼファンナ、再び風の精霊術・言の葉を用いる。『皆、ファウナの元気な姿が見たい』妹の情に訴え掛ける最初の

 然し語るまでもなく危うき行為。
 もしこの場アドノスに二人の女神が居る事実を露呈ろていしようものなら元の木阿弥もくあみ

 ▷▷……えっ?

 黒服の妹、戸惑うとまどう顔で暫くしばらく静止。
 浮かぶ大切な友達の笑顔と涙。ファウナ自身、皆に健在ぶりを示して安堵あんどさせたい。

 Meteonellaメテオネラの力で誰の意識を最後に消すのか。散々悩んだ挙句あげく、デラロサ隊長が送信した仲間達の無償を聴き、涙あふれた思い出蘇るよみがえる

 言葉だけじゃ足らない。触れて、抱き締め、共に歓喜の泣き笑いで踊りたい。
 ホロリッと自然に落ち往く涙。──逢いたい、皆に。ファウナの心に湧き出す感情

 ▷▷そ、そうか……。う、うん、そうだよね。でもどうやって戻れば……。

 体裁ていさいより本音を選んだ妹。
 だが此処は黒海に浮かぶ浮島。誰にも悟られないよう、あの島アドノスへ帰るにはどうすれば良いのか。

 ▷▷──忘れたの? ふふっ、天才過ぎるお姉ちゃんにまっかせなさい。デラロサ達もそこ居るんでしょ? 出来るだけ寄り添いよりそいなさい、後は私が全部やるから!

 たわわな胸をボフッと叩く音。姉には妙案みょうあんが在る。いや、妹とて見知ったやり方だと言い切るゼファンナ。

 ゼファンナから言われるがまま、ファウナを真ん中に互いの身を寄せ合うデラロサ夫妻。
 ファウナ、記念撮影する様な笑顔でアルとマリーの肩を抱く。

 夫妻は長い捜索そうさくにより溜りたまり重ねたかさねた体臭汚れと、ファウナにからだ預ける恥じらいで顔を酷く紅潮こうちょうさせた。

「済まない、俺は此処に残……!?」

 独りだけ空気を読めない青過ぎる男、レグラズ・アルブレン。
 ジト目で見つめるファウナ達。

 折角せっかく己が城へ戻れたのだ。『俺は浮島に骨を埋める覚悟。このが沈んでも共に逝く』語る迄でもなく周囲は理解を示すと確信していた。

 グィッ。

我儘わがまま言ってんじゃねぇ事務方レグラズッ! 覚醒者の手前テメェだけ残すとか絶対在り得ねぇッ! 最後の最期までファウナの護衛を全うまっとうしやがれッ!」

 青い軍服の胸倉むなぐら掴みつかみつば散らすアルの無愛想ぶあいそうな友情。唾と口臭の二重攻撃受けて辟易へきえきせずにいられぬレグラズ。

 何時の間に自分は女神ファウナの護衛任務を仰せつかった? 堅物かたぶつなる軍人が女神の付き人? 引き受けるには生き方すら変えなきゃならんとまゆひそめる。

「──レグラズ・アルブレン。どうか私からも御願いします。二年半、貴方が居てくれた御陰でとても心安らげたわ」

「──ッ?」

 女神ファウナから何とも穏やかな気持ち抱かせる微笑みと所作しょさを受け、堅物レグラズの決心が大きく揺らぐ。

 当然、荒波にまれる苦痛の揺らぎではない。神々こうごうし過ぎる存在から頼られる幸福。無垢むくな少年めいた感情が自分に残ってるとは知らなかった。

 グッ……。
 レグラズ、顔背け戦友デラロサの背中に自分の背を預ける密着。

 ──さらば浮島、俺もと共に余生よせいを歩もう。

 レグラズとアルの不器用な男の友情。ファウナに懺悔ざんげし続けたマリアンダの目が、元同僚軍人同士の馴れ合いを見てようやくなごむ。

「帰ったら皆でお風呂に入りましょう。私の地元なら良い温泉があるわ」

 あのファウナから、驚き過ぎる裸の付き合い宣言飛び出す。人知れずな深夜を態々わざわざ選び入浴していたあの頃が嘘のよう

『それってまさか、この面子4人って意味じゃねぇよなぁ!?』

 文字面通りの男女水入らず混浴風呂を妄想し、ことさら真っ赤に染まるアルとレグラズ。ファウナ以外、戦場の付き合いしか知らない三名。マリアンダ、遂に女性らしきやわらいだ笑顔を見せた。

 フォレスタ家当主の広過ぎる部屋では、部屋の主ゼファンナが「オルティスタ、それ貸して」軽い口調でアーミーナイフを一振り借り受ける。

 さらにスッと右手首にそれをあて、驚く姉貴分二人を尻目しりめに血染めの魔法陣を絨毯じゅうたんの上に描く。描き終えるとスカーフで切り口の上を固く縛り止血した。

「さあ行くわよ──『生物召喚アルボケーレ』」

 かつしかばねと化したエルドラ・フィス・スケイルを宇宙そらから引き寄せた術式。生物召喚アルボケーレ、術者の血で描いた魔法陣を用い生物を自分の元へ誘ういざなう

 浮島の隠れ家から光のつぶてに転じてやがて失せ往く4名。同じ輝きが魔法陣の中心に集合し4人の形を成してゆく。

 森の魔導に於ける真祖しんそであり、自ら魔導書に記したファウナが未だ成し得ぬ術式。
 だから知らぬ訳がない。然し行使こうししてない術、言わば忘却ぼうきゃく呪文スペルなのだ。

「ふぁ、ファウナさ…ま」
 ──ぐっ。

 女性向けの黒いスーツを着ているだいぶ大人びたファウナと目が合い、声より先に驚喜きょうきで震えるラディアンヌ。

 隣でオルティスタ、歯を食い縛り必死に涙こらえて赤に転じた目を思わずらす。

「うわッ、きゃあぁぁぁッ!!」

 感動の再会と涙の抱擁ほうようが始まるかと思いきや、背後からムンズッと抱かれつかまれ、さも悲鳴を上げるファウナ。

 姉ゼファンナの行き過ぎた悪戯いたずら。ガッツリ両手で妹のしきってさも満足げ。ニタリッと口角上げる。

「ちょ、ちょっとォォッ!! な、何なのよもぅッ!! レヴァにだってのにィッ!!」

 ファウナ、一挙に染まった赤ら顔。両腕で胸抱え、床に崩れ落ち姉に大声で訴えながら恥じらう。短いスカート捲れめくれ黒パンスト履く太腿ふとももが妖しく乱れる。


『レヴァにだって

 何気なにげに昔の愛なる育み進捗吐露とろする恥ずべき発言。ラディアンヌの脳内で響き渡りて愛の誘爆ゆうばくを生む。ゼファンナ以外の連中も驚きで帰宅の御挨拶ごあいさつが吹き飛んだ。

「ふふっ……良きッ! 何とも良き感触ッ! 背もも二年でしっかり成長したわね!」

 両手の動き危う過ぎるゼファンナ。自らの手に残る感触を反芻はんすうしながら独りにやける。

 ──せ、? 嗚呼……何とに成られて。ラディは大変嬉しゅうございます。

 すっかりラディアンヌが釣られ、ファウナが隠した谷間を視界の端で覗きのぞき込む。従者じゅうしゃというより最早もはや乳母うばの心境。

「身長もと……。いんや、何でもないわ。兎に角とにかくこれで私は

 背丈は丁度自分と同じ位に伸びた。手ずから採寸したは……。ゼファンナ、口をつぐんで話題を挿げすげ替える騒乱そうらんまねいた真なる理由をこれより体現たいげんするのだ。

 ザクッ。

「え……」

 何とゼファンナ、手首の次は己の長く美麗びれい金色こんじきの髪を惜し気なく斬って捨てた。意味ありげな『卒業』の二文字と共に。

 これには自分の成長したモノを鷲掴みわしづかみで奪われたファウナすらも茫然自失ぼうぜんじっしつ。全てを見透かす蒼き瞳も見抜けない姉の奇行きこう

「髪も切ったし、緑に染めるわ。私のファウナはこれで終いよ」

 ファウナの名を返上する機会チャンスうかがってた姉。魔導書に記された緑髪、翠眼緑の目を抱く森の女神像を驚く妹へニヤリッとわらって押し付けた。

「え……ファウナにと言うの? ゼファンナ姉さん?」

 森の女神の自画像を残すべく、絵師に描かせた緑色の肩まで伸びた髪を抱く少女の絵を見せられファウナは蒼き瞳を多分に見開く。

 正式名ファウナ・デル・フォレスタが『ファウナに戻れ?』と傾げるかしげる異様。然も世界的には死去扱いのゼファンナ・ルゼ・フォレスタに『ゼファンナ姉さん』と続ける

 最期の審判事件以来、黒服・蒼服・黒い女神の代行者・偽りの姉&妹……。挙げ出したらキリない双子の異名いみょうなる

 ガタッ! ゼファンナが机の引き出しを無造作むぞうさに引っ張る音。

「えっと……。あ、在ったぁ。コレコレ」

 やけに楽しげな様子。大きい瞳を指でさらに広げ、両の目に対し同様の仕草。次いでに口紅ルージュも引いてる模様。さらに下の大きな引き出しからも何かを取り出す。

「じゃーんッ!」
「ええ……う、噓ん」

 ゼファンナ……女性が緑の瞳に転じた姿をさも見せびらかす。緑色の短い髪、取り合えず緑のウィッグを頭に被るかぶる。その上、緑の口紅ルージュという念の入れ様。

 化粧……。女は殊更ことさら化ける才能秘めた生き物。即興そっきょうでも知らない女性が異空間から召喚しょうかんされたかの様な絵面。衣服も変えればいよいよ別の

 ファウナ困惑こんわく、まさかカラコンすらこの日の為準備してたと知り、引き気味な真顔で受けるしかない。
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