16 / 25
第3章
15.お守り
しおりを挟む§
「……それにしても、みんなはどうしてるかな」
「ナハトさんとあのオオカミさんたちのことですか?」
「うん。多分心配してるだろうなあ」
ティガは、一時的にゲートを閉じると言ったからガオンデパートに新たにモンスターが出てくることはないだろう。デパートに残ったモンスターは、きっとみんなが退治しているはずだ。その後、恐らくオレたちがティガに連れ去られたことを魔王に伝えただろうな。
「仲が良いんですね。あの魔族たちと」
「ああ。みんないい奴らだよ」
「そうですね。魔族はみんな怖いと思ってたんですけど、そうじゃなかったです。誰かを守るために戦うみなさんの姿は、かっこよかったです」
拳を握りながらそう語るユウくんを見て、オレは嬉しくなった。
「もう魔族に食べられるって思わない?」
「それはその、すみませんでした! 失礼な考え方でしたね」
「いや、まあ厳つい見た目してる魔族が多いから第一印象はやっぱり怖いよな。オレも初めて魔王に会った時は怖かったし。実際はそうじゃなかったけど」
「実際は優しかったりするんですか?」
「優しいというか変わり者かも。でも悪い奴じゃないよ。多分、オレたちを助けに来ると思う」
多分来る、と言ったが間違いなく来ると思う。あいつはそういう奴だ。
「でもその魔王さんが来たらまずいんじゃないですか? 詳しい事情は分かりませんが、あのティガって魔族は魔王さんを倒そうとしてるんですよね?」
「そうなんだよなあ。オレたちが人質になってさえいなければ、魔王が負ける要素は無いんだろうけど。どうにかして脱出できたらいいんだけどなあ」
洞窟の出口は竜巻で塞がれている。ここから出るのは自殺行為だ。
「どこかに抜け穴とかありませんかね?」
洞窟の奥を見ながら、ユウくんはそう言った。そういえば、洞窟の奥はどうなっているんだろう。
「ちょっと探検してみるか?」
「そうですね。ひょっとしたら、洞窟の奥はどこかに続いているのかも」
「そうだといいんだけどなあ」
その可能性は低そうだけど、何もしないよりかはマシか。ひょっとしたら何か使えるものが転がってるかもしれないし。
「行動あるのみです! 行きましょう!」
「ユウくんって、結構行動力あるよな……」
ユウくんがオレの手を引っ張って、洞窟の奥に向かって歩き始めた。流されやすいオレとしては、行動力があるユウくんは羨ましく思うな。
§
洞窟の中は薄暗いので、オレは人差し指の先に魔法で小さな炎を灯した。それでも暗いが、無いよりはマシだ。あまり大きな炎を灯して、煙が洞窟内に充満したら大変だからな。一酸化炭素中毒になるのはごめんだ。
「うーん。行き止まりですね」
洞窟の奥に歩き始めて三分くらいで、行き止まりに到達してしまった。ごつごつした岩の壁が行く手を阻んでいる。抜け穴なんて、都合が良いものは無さそうだ。
「外に繋がってれば良かったんだが、そう甘くは無いか」
「でも薄そうですねこの壁」
ユウくんが拳を握って岩の壁を軽く叩くと、コンコンと乾いた音がした。確かに、壁は薄そうだ。
「おっ。丁度いいところに石がありますね」
そう言って、ユウくんは地面に転がっていた、拳ほどの大きさの石をひょいと拾いあげ、壁から少し離れた。
何をするのかと思いきや、そのまま大きく振りかぶり、壁に向かって石を投げた!
石は壁にぶつかり、ゴツン、と鈍い音が洞窟に響く。
「うーん。流石に穴は開きませんか」
いくら薄いとは言っても、そう簡単に壁に穴は開かないか。
「ダメか。でも、ナイスピッチング! 流石、野球部員」
「へへっ。ありがとうございます。でも、どうしましょうか。他に穴を開けられそうな方法ってありますか?」
洞窟の壁に穴を開ける方法かあ。もし、オレがとても力強い格闘家だったなら殴るなり蹴るなりすれば穴を開けられたかもしれない。でも、現実はそうじゃないので不可能だ。何か、道具でも使わないと無理だろうな。
「……うーん。爆弾でもあれば穴を開けられたかも」
「魔法でドカンと爆発させたりはできません?」
「爆発させる火の魔法があると聞いたことはあるけど、その魔法は上級者向けらしいから今のオレは使えないな」
「そうなんですね……」
「ん? 爆弾? そういえば……」
オレはズボンのポケットに手を突っ込み、魔王が折り紙で作った不格好な金メダルを取り出した。
「なんですか? それ」
「金メダルだよ」
「え? 丸めた折り紙にしか見えないんですが」
「実際、丸めた折り紙だからな。だけどこの中には……」
ユウくんの目の前で折り紙を開く。すると、ほんのりと赤く輝く結晶があらわになった。
「うわあ。綺麗ですね。宝石ですか?」
「いや、魔素結晶ってやつだよ。強力な魔法を使用するための素材になるらしい」
「そうなんですね!」
「でも使い方を間違えると爆発するらしい」
「えっ」
普段なら、爆発するかもしれないものを積極的に使おうとは思わない。だけど、この状況なら爆発するのはむしろ好都合だ。魔王から貰った次の日に爆発させるのはちょっと心苦しいけど、背に腹は変えられない。
「今から、わざと間違った使い方をしてこれを爆発させようと思う」
「大丈夫でしょうか……?」
壁の前に、魔素結晶をそっと置く。
確か、魔王は昨日こう言っていた。魔素結晶を媒体にして魔法を使う場合は、結晶の中にゆっくりと魔素を流し込むイメージをしろと。そうすれば結晶を爆発させずに強力な魔法を使用することができる。
逆に言えば、一気に魔素を流し込んだら魔素結晶は爆発してしまうということだ。
「多分、爆発させるのは簡単だと思う。問題は、どの程度爆発するのか分からないってことだな。最悪、爆発に巻き込まれるかもしれないし、洞窟が崩れて生き埋めなんてことになるかも……」
「こ、怖がらせないでくださいよ!」
「でもそうなる可能性はある。どうする? やめておくか?」
ここで魔素結晶を爆発させれば、壁を壊して脱出することができるかもしれない。だが、その行動は命を賭けることになる。無茶な行動はやめておくべきか……?
「怖いですけど、このままじっとしてたらもっと怖い状況になりそうですね。やりましょう」
「いいのか?」
オレの問いかけに、ユウくんはこくりと頷く。もうやるしかない。
「よし、じゃあ早速始めるぞ」
まずオレたちは、爆発に巻き込まれないために淡く光る魔素結晶を辛うじて視認できる位置まで距離を取った。そこから、魔素結晶に魔素を一気に流し込むイメージをした。
「――弾けろ!」
直後、前方が赤く輝き、爆発音が響いた!
行く手を塞ぐ壁がガラガラと崩れていく!
……さらば、オレのお守り。まさか、たった一日だけの付き合いになるとは思わなかったよ。
あと、折角くれたお守りを壊してしまってごめん、魔王。
「くっ……!」
まるで大きな地震が起きた時のような振動に襲われ、思わずよろけそうになる。そんなオレの背中をユウくんがしっかりと支えてくれた。
「行きましょうクオンさん!」
「ああ!」
崩れた壁の先に向かって、オレたちは走り出す! 振動のせいで天井から岩が落ちてくるが、それを何とか回避しながら、前に進む!
「うおおおおおお!!」
壁の先は、予想通り外に繋がっていた!
外に出た瞬間、オレたちは勢い余って地面に転がってしまった! その直後、轟音とともに洞窟は崩れた!
「あ、危なかった……!」
少しでも外に出るのが遅れていたら、生き埋めになるところだった! 心臓がバクバクする。
「怖かったですが、遊園地のアトラクションみたいでちょっと楽しかったですね!」
「嘘だろ!? 度胸ありすぎだろ! ……あ、やばい。腰抜けた」
「大丈夫ですか? どっこいしょ」
安心して腰を抜かしたオレを、ユウくんが背中に担いだ。
「ありがとう。力持ちだな……」
「野球部員は身体が資本なので。毎日筋トレして鍛えてますから」
「道理でオレより身体がしっかりしてるわけだ。オレより身長も高いし……」
「クオンさんももっと大きくなれますよ。多分」
多分かあ。そこは絶対と言ってほしかったな。
「これからどうします?」
「ひとまずここから離れよう。ティガに見つかったら何にもならないからな。すまないけど、オレが立てるようになるまで担いで歩いてくれないか?」
「分かりました。任せてください!」
元気よく返事をした後、ユウくんはオレを背負って歩き始めた。
まさか年下の子に背負われてゲートの中を進むことになるとは。悲しくなってきた。
……いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない。とにかく進もう!
「あっ」
「えっ? うおおっ!?」
何かに躓いたのだろう。ユウくんが盛大に転けて、オレは地面に投げ出されて泥まみれになった。
「す、すみませんクオンさん!」
「びっくりしたけど大丈夫。気を取り直して行こう……」
そうだった。ユウくんはちょっとドジなところがあってよく何も無いところで転んでいた。これは、早く背負われなくても自分の足で歩けるようにならねば。でなければ、余計に泥まみれになりかねない。
0
あなたにおすすめの小説
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍2冊発売中!
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる