ブレイブ&マジック 〜中学生勇者ともふもふ獅子魔王の騒動記〜

神所いぶき

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第4章

23.夢

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 §

「すっかり暗くなったな」
 屋台の片付けが終わると、空はすっかり暗くなっていた。見上げれば、星が瞬いている。
 冬が近づくと、暗くなるのが早くなるなあ。
 校庭の中央にはキャンプファイアーと催し用の舞台が用意されていた。
 しばらく舞台の上で繰り広げられる出し物を楽しんだ後、肌寒くなったのでオレはキャンプファイアーに近づいた。すると、そこにはナハトも居た。
 オレはナハトの隣に座り、声をかけた。
「――予想はしてたけど、人間はあまり来なかったな」
 このトラオム学園の文化祭に訪れたのは、殆どが魔族だった。わざわざ訪れた人間は、ほんの一握り。
「そうだね。人間は少なかった。でも、ゼロじゃなかったから良いと思うよ。そりゃ、沢山の人間と仲良くなれたら嬉しいけど、そういうのって時間がかかるものだと思うし。焦らず、少しずつだよ」
「焦らず、少しずつか。確かに、すぐに結果を求めちゃいけないよな。あんなに魔族を怖がってたユウくんも、文化祭に来てくれたんだ。きっと、今、魔族を怖がってる人もいつか仲良くなれる時がくるよな」
「そうそう。ゆっくり、のんびりと、無理をせずやっていこうよ。クオンくん」
 ゆっくり、のんびりと、無理をせずか。いい言葉だ。そうだな。オレはオレのペースで、できることをやっていこう。肩肘を張っても疲れるだけだからな。
「何の話をしてるんだ?」
 オレとナハトの間に、ヴォルフがひょっこりと挟まってきた。
「クオンくんと、焦らずゆっくり、魔族と人間が仲良くなれたらいいなあなんて話をしてたとこだよ」
「そうか。真面目な話をしてやがるなあ」
 そう言って、ヴォルフはどっかりとその場に座った。
「そういえば、先週までクオンくんとヴォルフくんは仲が悪かったよね。それがいつの間にかすっかり仲良くなっちゃって」 
 ナハトがそう言うと、ヴォルフは気まずそうに頭をポリポリと掻いた。
「それは、その、すまなかったと思ってる。今思えば、オレ様、人間だからって理由でクオンを怖がってたかもしれねえ」
「オレを怖がってた? そんな怖がらせるようなことしたか?」
「いや、お前は何も悪くねえよ。多分、兄貴から聞いてるんだろ? オレたちが魔界からこの世界に来たばかりのこと」
「前にデパートの駐車場で、少しだけ聞いた」
「そっか。なら、話ははええな。この世界に来たばかりの頃、オレ様たちを怖がる人間が沢山いた。石を投げつけるようなヤツもいた。この傷は、その時についたんだよな」
 そう言って、ヴォルフは右目に着けている眼帯を指さした。
 眼帯を着けている理由は前々から気になっていたけど、まさかこんな理由だったとは。
「それから、オレ様は人間の近くにいると、また石を投げられるかもしれねえと思うようになってしまったんだ。だから、人間と距離を取りたかった。そして、人間を恐れて距離を取ろうとしていることに気づかれたくねえから、クラスメイトの魔族も遠ざけようとしちまった」
「なるほどね。遠ざけたいから、クオンくんやクラスのみんなにきつく当たってたんだ」
「今思うと、すっげえだせえよな。無関係なクオンやクラスメイトに当たって、本当に悪かったと思ってる。すまねえ」
「謝るなよ。結果的に、こうしてオレたちは仲良くなったわけだしさ」
  オレは右手で握り拳を作り、そっとヴォルフに突き出した。
「ありがとな。これからも、よろしく頼むぜ」
 オレとヴォルフは、笑顔で拳と拳を軽くぶつけ合った。
 ちょっとクサい考え方かもしれないけど、友情が芽生えた感じがして嬉しい。
「いいなあ。青春してるねえ」
「そういえば、ナハト。前から気になってたことがあるんだけど聞いていいかな」
「どうしたのクオンくん。いいよ」
「ほら、オレはこの学園に通う生徒の中で、唯一の人間だろ。だから距離を取るクラスメイトが多かった。それなのに、何で積極的にオレに話しかけてくれたんだ?」
 失礼な考え方かもしれないけど、学園に通い始めたばかりの頃は何か裏があるんじゃないかとも考えた。浮いた存在であるオレに関わっても、ナハトにメリットは無いはずだから。
「ああ。それはね、クオンくんのこと、昔の私にちょっと似てるかもしれないと思ってたんだ」
「昔のナハトに?」
「うん。私、魔族の中では見た目が変わっている方なんだ。殆どの魔族は、ヴォルフくんみたいに全身が毛皮で覆われているのに、私はそうじゃない」
 確かに、ナハトの姿は人間に似ている。うすうす感じてはいたけど、やっぱりそういう魔族は珍しいんだな。
「だから、見た目がヘンって理由で昔は同年代の魔族から距離を取られてたんだ」
「そうだったのか」
「要は、クオンくんに昔の自分を勝手に重ねてたってわけ。笑っちゃうでしょ」
「そんなことない。理由はどうであっても、ナハトが親身に話しかけてくれるのはとても嬉しかった。ありがとう」
 もし、誰も親身に話しかけてくるクラスメイトがいなかったらどうなっていたか分からない。もしかしたら、学校に行きたくないと言っていたかもしれない。そうなれば、きっと魔族と仲良くなりたいなんて考えを持つことも無かっただろう。
「お礼を言われると照れ臭いな。こちらこそありがとね。友達になってくれて」
 そう言って、ナハトはいつも被っているベレー帽を外した。耳がぴこぴこと動いている。
 なるほど。ヴォルフやゼーゲンさんは尻尾である程度の感情を読み取れるけど、ナハトの場合は耳である程度の感情が読み取れるな。
 恐らく、今、ナハトは嬉しいと思っている。そんな気がした。
「おいクオン。オレ様たちにばかり恥ずかしいことを言わせんじゃねえ。お前も何か言え! 恥ずかしいことを!」
「はあ!? 無茶ぶりがすぎるだろ!」
「あ、私も聞きたい! クオンくんの恥ずかしい話!」
 どうしてこうなった。ヴォルフは尻尾を、ナハトは耳をパタパタ動かして待ちわびている。オレが恥ずかしい話をすることを。 ……ええい、腹を括るしかないか。
「そうだな。じゃあ、今のオレの夢というか、目標みたいなものを語っても大丈夫か?」
「いいねいいね。青春する若者らしいよお」
「お前も同い年だろうが。でも、オレ様も聞きてえな。話してみろ」
 うう。本当に恥ずかしいな。でも、後には引けない。言うだけ言ってみるか。
「ごほん。あー、最近のオレの夢、というか目標はな、魔王の手伝いができたらいいなと思ってるんだ」
「魔王様のお手伝いかあ。具体的にはどんな感じでお手伝いしたいの?」
「ほら、もしかしたらまた、シュトライトって組織のヤツが来るかもしれないだろ。幸い、ティガの襲撃では大きな被害が出ずに済んだけど、次にまた似たようなことがあった時にどうなるかは分からない」
 最悪、誰かが命を落とす可能性だってある。そうなるのは、絶対に嫌だ。
「だから、強くなりたいんだ。強くなって、周りのヤツらをしっかりと守れるような男になりたい。そして、異世界の住人と絆を深めて生きたいという魔王の願いを叶える手助けができたらいいなって思うんだ」
 我ながら、大それた夢だと思う。だけど、これがオレだ。誰が何と言おうと、流されず、夢を叶えてやる。絶対に。
「そうか。じゃあ、強くなるために修行しねえとな」
「そうだな。もっと魔法の勉強をして、色々な魔法を使いこなせるようになりたい」
「なら、私たちも修行を手伝うよ。ね、ヴォルフくん?」
「おう! 一緒に強くなろうぜ!」
 良かった。二人が一緒なら、心強い。
 必ず、オレたちは強くなれる。
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