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エピローグ
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オレたちはゼーゲンさんとユウくんとも合流し、しばらくキャンプファイアーを眺めながら雑談をしていた。
「……ん?」
ふと、校舎についている時計を見ると、時刻は十九時半を過ぎていた。
そういえば、二十時ごろに屋上に来るようにと魔王に言われていた。ちょっと早いけど、そろそろ行こう。
「おや? クオンさん、どこに行くッスか?」
「ちょっと屋上まで。みんなもついて来てくれ」
「分かりました」
みんなを誘って、オレは校舎の屋上に上がった。
§
「む。来たか。クオンよ」
屋上に広がる光景を見て、オレたちは驚いた。何故なら、屋上には大量の魔素結晶が転がっていたからだ。そして、もう一つ驚くべきことがある。
「おい。どうしてティガがここにいるんだ?」
魔王のすぐ隣には、数日前にオレたちと戦ったティガが立っていた。首元を見ると、黒い宝石の代わりに、見慣れない首輪を着けている。
「こいつが受ける刑について皆にも説明せねばと思ってな」
「ティガが受ける刑ッスか?」
「ああ。まず、今こいつの首元には魔封じの首輪というのが着いている。その名の通り、これを着けた者は魔法が使えなくなるのだ。ただ、この首輪を着けるためには丸一日がかりで儀式を行う必要があるから骨が折れたぞ」
「くっ、我輩がこんな屈辱的な姿を晒すことになるとハ……」
ティガが苦虫を噛み潰したような顔をしている。
今、ティガは魔法が使えないのか。まあ、魔法を使って悪事を働いたのだからこうなるのも仕方がないかもしれない。
「命があるだけありがたいと思うッスよ。下手すれば、お前はゲートと一緒に消えてたかもしれないンスよ。まったく。生きててよかったッスよ。本当に」
「むウ……」
「魔王様。刑ってのはこれだけかよ。魔法を封じてハイ終わりってんじゃ、オレ様は納得できねえぞ」
ヴォルフの意見にも一理ある。あんな騒動を起こしたのだから、もう少し重い罰があってもいいかもしれない。
「無論、これだけではない。ティガには、更生の一環としてしばらくこの学園で雑務作業をしてもらう」
「な、何だト!? 何故、我輩がそんなことヲ!?」
「我は言ったはずだぞ? しばらく、我らの生き方を見ていろと。そして、改めて我を倒すかどうか考えろと」
「ああ。そういえばそんなことを言ってたな」
「うむ。我の仕事も捗るし、ティガは我らの暮らしを見ることができる。まさに一斉日曜だ」
「……一石二鳥って言いたいのか?」
「うむ。それだ」
流石にその間違いは無理があると思ったが、話をややこしくしたくないから黙っておこう。
「でも大丈夫かな? 魔法が使えないとはいえ、また人間を襲ったりするかも」
ナハトが不安げにそう言った。それは、オレもちょっと考えたな。
「案ずるな。我が常に監視しておく。怪しい行動をしたら、仕置きしておこう」
「ひッ……」
魔王に常に監視されるってのは中々にキツい罰かも。ちょっと同情する。
「良いんじゃないですか? まずは知ることから、ですよ。クオンさんたちの暮らしを知れば、ティガさんもまた違った考え方をするかもしれませんし」
おお。ユウくんが大人っぽい発言をした。確かに、知ることは大事だ。知るきっかけを作るってのは大切なことだよな。
「と、いう訳でこれからこの学園でこいつが世話になる。よろしく頼むぞ。ほら、お前も挨拶するのだ」
「ぐうッ……! 貴様、いつか絶対に倒してやるからナ!」
そう言って、ティガは恨みがましい目で魔王を睨んだ。まあ、すぐに考えが変わるなんてことはないよな。
「やれやれ。これはまた賑やかになりそうッスね。まあ、オイラは賑やかなのは好きだからいいッスけど!」
オレたちとティガがすぐに仲良くなるのは難しいだろう。でも、オレたちも知らないといけない。ティガのことを。一方的に否定して、拒絶するのだけはダメなことだと思うから。
いつか、お互いのことをよく知って、分かり合える日が来ると信じよう。
「ティガの件は分かったよ。だけど、どうしてオレたちをここに呼んだんだ? ティガの件を説明するだけならわざわざ屋上に呼ばなくてもいいだろ」
「うむ。勿論、皆をここに呼んだのは理由がある」
「理由?」
「知りたいか?」
そう言って、魔王はオレの前に広げた手をすっと差し出した。
「何だその手は」
「焼きそば」
「は?」
「呼んだ理由を知りたければ、我に焼きそばを献上するのだ。勿論、我の分は残しておるのだろうな?」
魔王があまりにも間の抜けたことを言うもんだから、脱力して盛大にずっこけそうになった。
このタイミングで焼きそばの催促をするなよ! まあ、一応取っておいたけど!
「ほら。一応持ってるよ」
魔王の手のひらに焼きそばが詰められたパックと割り箸を乗せる。すると、魔王はパッと顔を輝かせながら、その場で焼きそばを啜り始めた。
「うむ! 美味である! 疲れた身体に染み入るようだ!」
「口に合ってなにより」
こんな風に美味しそうに食べてくれるなら、作った甲斐があったな。
「あ、そうだ」
ちょっと多めに焼きそばを確保してたんだった。ビニール袋から、焼きそばが入ったパックをもう一つ取り出す。
「ほらよ」
オレは、取り出した焼きそばをティガの前に突き出した。
「何の真似ダ?」
「焼きそばだよ。食べたことないだろ? 折角だから食べてみろ」
「馬鹿にするナ! 貴様の施しなど受けヌ!」
そう叫んだ直後、ティガの腹から盛大な音が鳴った。よほど腹が空いてるんだろう。
「くうッ! 腹の虫メ……!」
「意地を張らなくてもいいッスよ。『食べられる時に食べる。それが戦士の鉄則』だ。魔界に居た頃、お前はよくそう言ってたはずッスよ?」
ゼーゲンさんがそう言うと、ティガはくやしそうに歯軋りした。
「――勘違いするナ! これは施しを受けたわけではなイ! 腑抜けた人間から奪取したもノ! すなわち戦利品ダ!」
「くだらない理屈を並べてねえでさっさと食いやがれ。みっともねえぞ」
ヴォルフにみっともないと言われたティガは、ちょっとしゅんとしながらもオレの手から焼きそばを奪い取り、ガツガツと食べ始めた。
「……ふン。人間が作ったものにしては、悪くなイ」
「素直に美味しいって言えばいいのに」
ナハトが呆れたように肩をすくめる。
ティガは、素直になれないヤツなのかもな。けどまあ、ちゃんと食べてくれて良かった。
「さて、魔王。食べ終わったなら、説明してもらおうか。オレたちをここに呼んだ理由とやらをさ」
「良かろう」
口の端を手で乱暴に拭った後、魔王は説明を始めた。
「クオン。まず、この屋上にあるものは何か答えよ」
「大量の魔素結晶があるな」
「そうだ」
オレたちの足元で、色とりどりの魔素結晶が月の光を浴びてキラキラと輝いている。数えきれないほど転がっていて、足の踏み場もないといった感じだ。
「あ、分かった! これ、先週の授業で私たちが集めたやつだ!」
「うむ! その通りだナハトよ! それに加え、デパートで皆が倒したモンスターから出てきた魔素結晶もあるぞ」
「僕は先週、赤いまそけっしょーというのを見ましたが、改めて見てもキラキラして綺麗ですね。しかも赤以外にも青や黄、緑もあります!」
ナハトとユウくんが、魔素結晶の輝きに負けないくらいに目を輝かせている。まあ、綺麗な物を見ると、ついテンションが上がってしまうよな。見ているこっちも釣られてテンションが上がる。
「けど、これをどうするつもりだ?」
「ふふ。クオンよ。我は言ったはずだぞ? これは、近い内に皆のために使うと。今が、その時だ」
そう言って、魔王は右手を天に突き上げた。すると、魔素結晶が次々と空に浮かんでいった。
「さあ、目に焼き付けろ! これが記念すべき、第一回トラオム学園文化祭のシメだ!!」
魔王が叫ぶ。その直後、空に浮かんだ魔素結晶が次々と爆発し、赤、青、緑、黄――夜空に色とりどりの火花を咲かせた!
校舎の下から、歓声が上がる!
「うわあ! 綺麗!」
ナハトが満面の笑みを浮かべて、カラフルな火花が炸裂する空を指差した。
「すげえな! めっちゃ派手だ!」
「うおおお! 盛り上がるッスねー!」
ヴォルフとゼーゲンさんは、尻尾をパタパタと振りながら飛び跳ねた。
「たーまやー! です!」
そう叫んだのはユウくんだ。
「ちッ。うるさい奴らダ」
そう言いながらも、ティガの視線は空に釘付けになっている。
「どうだクオンよ! 驚いただろう!」
魔王が、次々と魔素結晶を空に飛ばしては、爆発させていく!
「まったく。お前はやることが派手なんだよ! でもまあ、派手なのは嫌いじゃない! というか好きだ!」
心臓が、どくどくと鳴る。
今、オレはワクワクしている。今、この瞬間。そして、これから先も続くであろう楽しい未来に。
「そうだろう! 我はこれからも派手に皆を喜ばせることをする! 魔族も、人間も、関係なくだ! そう生きると決めたのだ! クオンよ! お前にはその手伝いをしてほしい!」
「言われなくともそのつもりだ! 魔王! ――――いや、グランツ!」
数日前、魔王がオレに教えてくれた、真の名前を叫ぶ!
名前で呼ぶのは何となく気恥ずかしかったから今の今まで呼べなかった。でも、オレがオレであるように、グランツもグランツだ。
これからは、あいつのことを名前で呼ぼう。
「よし、約束したからなクオン! この花火は我らの誓いの証だ! 絶対に忘れるな!」
「忘れるかよ! こんな綺麗な景色をさ!」
今、魔族も人間も関係なく、花火を見上げて笑顔を浮かべている。花火も綺麗だけど、笑顔を浮かべるみんなの姿もとても綺麗だと思った。
オレたちは、一人一人、姿も形も考え方も違う。だけど、こうして綺麗なものを見た時に笑顔が浮かぶのは、魔族も人間も同じだ。そのことを忘れずに、生きていこう。
――――この日見た景色を、オレはきっと、一生忘れない。
【了】
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