目指すは正義のコントロール! 〜命がけで魔法犯罪を取り締まる中学生活、始まりました〜

神所いぶき

文字の大きさ
7 / 24
第1章 入学試験は命がけ!?

6.あの時

しおりを挟む
§

「どこにいるのー!? ディアラグスー!」
 ポケットからスマホを取り出して時間を確認すると、十二時半を過ぎていた。つまり、試験が始まって二時間以上経ったことになる。その間、私たちはずっと森の中を歩いて熊の形に似たモンスター――ディアラグスを探していた。だけど、全然見つからない!
「ディアラグスは暗いほら穴を住処にすることが多いと、本に書いてあった気がするのです」
「だけど、ほら穴なんて見つからないでござるな……」 
 私たちの目に飛び込んでくるのは木、木、木! 木だらけ! 森だから木がたくさんあるのは当たり前だけどさあ!
「あっ……」
 突然、ぐううぅ~というマヌケな感じの音が辺りに響いた。
 音がしたのはチトセちゃんの方からだ。
「チトセちゃん。もしかして、お腹空いた?」
「はいなのです……」
「ちょうど昼食時でござるからな……」
「そう言われると私もお腹が空いてきた……。ご飯にしよっか」
 レンさんは、リュックの中に一日分の水と食料を入れていると言った。
 そういえば、ディアラグスを見つけなきゃって思いで頭がいっぱいだったから、今の今までリュックの中身を確認していなかったなあ。食事と一緒に水分補給もしなきゃ。
「何が出るかな、何が出るかな~」
 寝袋、水が入ったペットボトル、小型のナイフ、指で開けられる缶詰がいくつか……。
「非常用の防災グッズみたいなのです」
「うん、私もそう思った……」
 サバ缶、焼き鳥缶、ビスケット缶――。完全に、非常食だこれ。食べれば美味しいんだろうけど、ちょっと物足りなさそう。
「ん? 奥に袋が入っているでござる」
「本当だ。何だろうこれ」
 リュックの奥に、小さな黒い袋が入っていた。袋を開けると、そこに入っていたものは――。
「ニンジン、じゃがいも、タマネギが入っていたのです」
「オイラの袋の中には飯盒とスプーンが四つとお米が入っていたでござる」
「私の袋の中には干し肉とカレールウが入っていたよ。あっ、何か紙も入ってる」
 紙には、いかにも手書きといった文字が並んでいた。私はそれを読み上げてみる。
「『缶詰だけだと味気ないだろうから、カレーの材料も入れておいたよ。キャンプ気分でみんなで料理を楽しんでね。レンより』……だって」
 キャンプ気分で楽しんでねって言われても、こんな試験の最中にそんな気分になれるわけないよ! ひょっとして、レンさんって少しズレている人なのかな? いわゆる残念イケメンというやつな気がする。……カレーは私の好物だから、うれしいといえばうれしいけどさあ。
「キャンプ気分で料理を楽しんでねと言われても、鍋がないでござる」
「もしかしたら、カヤトさんのリュックに入っているのかもしれないのです」
「それっぽいね。カヤトくんが居ないとカレーは作れなさそう。……とりあえず、缶詰を開けて食べよっか」
 ひとまず、私は近くの木によりかかって座り、焼き鳥の缶詰とビスケットの缶詰を開けた。
 チトセちゃんとウィガルくんも近くに腰掛け、缶詰の食料を食べ始める。
 もぐもぐ……。
 うん、すっごく美味しいとは言えないなあ。でも、お腹が空いていたから食べられるだけでもありがたい。そんな気持ちになった。
「……カヤトくん、無事かなあ」
 ディアラグスを探している最中に、カヤトくんの姿を見ることはなかった。一人でどこまで行ったのかなあ。
「もしカヤトさんがモンスターと戦う時は、また魔法の爆発音がすると思うのです。つまり、爆発音がしなければ無事な可能性は高いかと」
 そう言った後、チトセちゃんはビスケットをサクサクとかじり始めた。
「逆に言えば、爆発音がしたらカヤト殿が危ないかもしれないということでござるか?」
「その時はカヤトくんがモンスターと出会った可能性が高いってことだもんね」
「はいなのです」
「はあ。爆発音が聞こえないといいなあ」
 私がそう言った直後のことだった。近くで、ドーン!という音がしたのは……。
「爆発音が聞こえちゃったー!?」
 聞こえないといいなあと言った直後に聞こえるなんて、タイミング悪すぎでしょ! さっきの発言がコントの前フリみたいになっちゃったじゃん!
「ど、どうするでござる!?」
「カヤトくんが危ないかもしれないよね!? と、とにかく音がした方に行ってみよう!」
「はいなのです!」
 私たちは慌ててリュックを背負った後、音がした方に向かって走った!
§

 どうかカヤトくんがディアラグスと戦っていませんように! 
 そう祈りながら音がした方に向かうと、少し開けた場所にたどり着いた! そしてそこには、紙きれを数枚持ったカヤトくんと、熊の形に似たモンスター……多分、ディアラグスが居た! どうやら、祈りは通じなかったみたい! 最悪!
「ウォプロド!」
 カヤトくんが、ディアラグスに向かって紙切れを投げつける! 紙切れは見事にディアラグスの体に当たり、ディアラグスは泡に包まれた! 直後、ドンと大きな音がして泡が弾ける! ……だけど、
「チッ、効いてねえのか……!?」
 ウォプロドの直撃を食らっても、ディアラグスはぴんぴんとしていた! やっぱり、水属性の魔法は効きづらいんだ!
「カヤトくん! そいつ、水属性の魔法はあまり効かないよ! 耐性ってのがあるんだって!」
「正義バカ!? こっちに来るんじゃねえ!」
 私が声を上げると、カヤトくんの方を見ていたディアラグスの視線がこっちを向いた! そう思った次の瞬間、ディアラグスはうなり声を上げる! そして、こっちに突進してきた! まずい! あんなの食らったら体の骨がバッキバキになっちゃう! というか死ぬかも!
「守るのです! 『グラウォル』!」
 私の後ろで、チトセちゃんがそう叫んだ! その直後、地面がぐらぐらと揺れて私の目の前に大きな土の壁が現れる! そしてその土の壁が現れたのとほぼ同時に、ドシン!と鈍い音が辺りに響いた! 多分、突進してきたディアラグスが土の壁に激突したんだ!
「もしかしてこれ、チトセちゃんの魔法!?」
「はい! 地属性の防御魔法を使わせてもらったのです!」
「助かったよ! ありがとう!」
「お礼を言うのはまだ早いのです! 回り込んで、ディアラグスに火属性の魔法をぶつけてほしいのです!」
 ディアラグスの弱点は火! そして、この場で火属性の魔法が使えるのは私だけ!
 ――怖いけど、私が戦わなきゃ!
「わかった! やってみるね!」
 私は土の壁の後ろに回り込んだ! そこには、土の壁に激突して倒れたディアラグスと、隙だらけになったディアラグスに連続でウォプロドを叩き込むカヤトくんの姿があった! ――でも、やっぱりウォプロドは効いていない!
「そいつの弱点は火だよ! だから、そいつは私が倒すよカヤトくん!」
 私は集中し、手のひらに魔力を集めた! そして、開いた右手をディアラグスに向ける!
「当たって! フレビス!」
 火の塊がディアラグスに向かって飛んでいく!
『ガアアァァァァァァァアァッ!!』
 フレビスはディアラグスの顔に直撃した! ディアラグスの悲鳴が辺りに響く! 
 ――よかった、ちゃんと効いているみたいだ! よし、このまま続けてもう一発フレビスを……。
「って、また来たー!?」
 ディアラグスは勢いよく起き上がったかと思うと、また私に向かって突進してきた!
 急いでフレビスを撃たなきゃ! そう思って右手をディアラグスに向けたけど――ダメだ! 魔法の発動が間に合わない! やられちゃう!
「来るんじゃねえって言っただろうが!」
「えっ!?」
 もうダメだと思ったその時、私をかばうようにしてカヤトくんが前に立った! そして、ありったけの紙切れをディアラグスに向けて投げ、連続でウォプロドを発動させた! ドンドンドン、と何度も爆発が生じてディアラグスの突進の勢いが弱まる! ……だけど、カヤトくんの少し前で止まったディアラグスは大きく腕を振り上げた後、鋭い爪をカヤトくんに振り下ろした!
「ぐあああっ!!」
 ――ディアラグスの鋭い爪が、カヤトくんの上半身を傷つける。同時に、赤い液体が私の目の前で噴き上がった。
 これは、血? 私をかばって、カヤトくんが傷ついたの……?
 ……イヤだ。こんなのイヤだ。また“あの時”みたいに、私を守って誰かが死ぬなんて!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

YouTuber犬『みたらし』の日常

雪月風花
児童書・童話
オレの名前は『みたらし』。 二歳の柴犬だ。 飼い主のパパさんは、YouTubeで一発当てることを夢見て、先月仕事を辞めた。 まぁいい。 オレには関係ない。 エサさえ貰えればそれでいい。 これは、そんなオレの話だ。 本作は、他小説投稿サイト『小説家になろう』『カクヨム』さんでも投稿している、いわゆる多重投稿作品となっております。 無断転載作品ではありませんので、ご注意ください。

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

処理中です...