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    いじめられていた君へささぐ




 しんたく【神託】
 神が自分の判断や意思を巫女などの仲介者、あるいは夢・占いなどによって知らせること。神のお告げ。『goo辞書』


    プロローグ ~ 人物紹介 ~


 やあ、僕の名前はラクト。
 フバイ帝国の首都に住む。ごくごく平凡な十六歳の少年さ。
 体型も顔も普通だし、剣術も魔法もぱっとしないけど……。
 
 “いつか賢者になる”
 
 なんてギルド館のなかで噂になっている。
 まあ、おそらく僕のお父さんが戦死したからかも。
 誰かが、気を使っているのだろう。
 だからかな、そうしたら……。
 なんと勇者パーティが僕を入れてくれた!
 自分でもびっくり!?
 
 ところで、僕が住む、このフバイ帝国の総人口は五千万。
 アステールの大地にある複数の民族や王国を支配している。
 その軍事力は半端じゃない。
 騎士、魔法使い、僧侶、総勢百万人を超える。
 だから、魔族のやつらだって簡単には手を出してこないんだ。
 そんなフバイ帝国のなかにある、トップクラスの勇者パーティのひとつに僕は所属しているんだよ。
 
 さて、今日は勇者パーティのみんなことを紹介するね。
 まずは、僕の勇者様から。
 
 勇者様の名前はアフロ。二十一歳。
 出身はフルール王国。
 ワイルドな銀髪に漆黒の双眸。
 背が高いイケメンで、剣術も魔法もなんでもこなす万能型。
 ちょっと口が悪いときもあるけど、まあ、勇者様だから仕方ない。
 僕は忠義を尽くすよ。
 
「ラクト……おまえなにやってんだ? 早く荷物の整理しろ」
「はい」

 アフロ様にそう言われ、テキパキとみんなの荷物を片付けていると……。

「ラクト! 着替えるからテントから出てって」

 キリッと僕のことをにらむのは、女戦士のアーニャさん。
 出身はフバイ帝国の首都。つまり、僕の先輩パイセン
 二十歳。都立学園を首席で卒業した超エリート戦士。
 サラサラ金髪にブルーの瞳。
 スタイル抜群のセクシーなお姉さんだけど、男っぽいのが玉に傷。でもその代わりに剣の腕前は勇者をも超える。そんなアーニャさんの脱ぎっぷりはすごい。
 
 兜ぬぎっ、金髪がふわり。
 鎧ぬぎっ、おっぱいがぷるんッ♡

「……おい、ラクト……早く出てけっ!」
「はいっ」

 ひ~こわ……っ。
 とりあえず、僕は秒でテントから離れた。
 
「やれやれ……」

 このテントは僕が張った。
 冒険の豆知識だが、いったんフィールドに出たら街や村に帰れないときもある。そんなときは、こんなふうにテントを張って宿を取るんだが……。
 まあ、僕がこのなかで寝たことは一度もない。
 自分で作ったくせにな。
 雨の日も風の日も、僕は野宿さ。あっはは。
 テントで寝られるのは勇者様と女子たちだけ……。
 おっと、僕にはまだまだ刺激が強すぎる。
 
「ねえ、ラクト……ごはんってまだですか?」

 ん? 振り返ると、ちょこんといたのは、猫耳魔女っ子のミルクちゃん。
 一五歳。論理的思考のツンデレ美少女。
 幼児体型なことがコンプレックス。
 ボブヘア黒髪に紅蓮のキャットアイ。
 どうやら、勇者様のことが好きで猫耳族から離れて暮らしているみたい。
 ふぅん、愛は種族を超えるってことかな?
 そんなミルクちゃんは、あらゆる魔法を使いこなす最強の魔法使い。その華奢な手から放出される火炎系攻撃魔法は、世界を一瞬にして地獄と化す。

「はいは~い、いま作りますよぉ~」

 トントン、と僕はタマネギ、ニンジン、ジャガイモなどの野菜を切り。
 ファイヤーと詠唱し、手早く鍋で炒め。
 なじんだら鶏肉を入れ、塩コショウを少々。
 で、ウォーターと詠唱して水を注ぎ、香辛料をドバドバ入れて煮込む。
 グツグツ、と。
 うーん、スパイシーな良い香りがしてきたぞ。
 そう、今夜はカレーさ。すると……おや? 匂いに誘われたかな?
 
「あら、ラクトくんって料理がうまいのね」

 横から顔をだして鍋をのぞくのは、巨乳僧侶のノエルさん。
 出身はフルール王国。勇者アフロ様とは同胞。
 十八歳。僕の初恋の女性。
 クリーム色のゆるふわロングヘアに翡翠の瞳。
 可愛いくて穏やかな性格をしている。
 誰にでも優しいけど、できたら僕にだけが良いのになぁ……。
 
「ノ、ノノノ、ノエルさん」
「はい……」
「う、うう、うちは母子家庭なので……」
「ん?」
「あのその、ぼぼ、ぼ、僕が料理担当なんです」
「偉いんだね」
「そ、そそそ、そんなことはなくてですね、とと、当然のことですっ」

 うふふ……と、ノエルさんは苦笑い。
 あっちゃぁ……。
 どうも好きな人の前だとあがっちゃう。
 ダメだ、僕はコミュ障だ。つら……。
 それでも、
 
「わたしも手伝うね」

 と、ノエルさんは言ってお玉で鍋のなかを混ぜてくれた。
 おお! 素敵なお嫁さんになれそう。
 うわぁぁ、ずっと見つめていられる……。
 
「どうしたの? ラクトくん?」
「あ! いやややや……僕はみんなを呼んできます……」

 ん? と首を傾けるノエルさん。
 僕は逃げるようにアフロ様のもとへ向かった。
 その途中に、ふと、フィールドの遠くのほうを見つめた。
 光り輝く神殿があるのだ。
 それは、夕陽に赤く染まった大地のなかに、キラキラと輝く……。
 
 クリスタル神殿。
 
 僕ら勇者パーティはそこへ向かっていたのだ。
 フバイ帝国の皇帝から、
 
「魔族の手に落ちたクリスタル神殿を奪還せよ!」

 と、あらゆる民族と王国にクエストがでていた。
 うーん、帝国を震撼させるクエストに参加できるなんて……。
 僕はなんだか誇らしい気持ちになって叫んだ。
 
「よーし! 僕の冒険はこれからだー!」
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