いつか賢者になる僕は、追放された勇者パーティから溺愛をうけていた!?〜ごめん、女神様とパーティーを組んでるから戻れません〜

花野りら

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   第二章  火の女神リクシスの加護

  32  火の神殿での修行 ⑤

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 涙を流す僕は、クリちゃんを抱いたまま顔をあげた。
 リクシスさんは頬を赤く染めると、また語り始める。

「ラクトくんは私の友達にはなれません。よって、願いを叶えることが不可能になりました」
「……はい。僕は非道にはなれないみたいでした。すいません」
「いえ、大丈夫です。むしろ、よかったのかも」
「え? どういうことですか?」
「私とラクトくんは、友達にはなれませんが、私からひとつ提案があるのですが、いいですか?」
「……はい」
「私、どうやら、ラクトくんのことを好きになってしまったようです。なので……その……」

 え? と驚いた僕の頭のなかは白い光りに包まれた。温かくて優しい気持ちがあふれ、リクシスさんの次の言葉を待ち望んでいる。リクシスさんは唇を噛み、覚悟を決めたように言葉を放った。
 
「私の彼氏になりませんか?」
 
 力の抜けた僕の手からクリちゃんが離れていく。
 すっと立ち上がった僕は、リクシスさんの正面を向くと返事をした。
 
「はい。僕もリクシスさんのことが好きです。彼女になってください」

 うるる、と涙目になっていたリクシスさんは、「わーん」と泣いて僕に抱きついてきた。柔らかい肌の感触と温もり。ほのかに漂う花のような髪の香り。リクシスさんの美しさすべてに、僕は身も心も包みこまれていく……。
 
「緊張しました。告白なんて初めてのことで……」
「リクシスさん……」
「でも、よかったです。ラクトくんが彼氏なってくれる意志があって」
「え? 意志? 僕たちって付き合ったんじゃ?」

 はぁ? と答えたリクシスさんは首を傾けて、
 
「意志を確認しただけですが、なにか?」
「ふぇ……じゃあ、まだ付き合ってない?」
「あたりまえです。エッチもしてない相手と付き合うなんて、そんなリスキーなことできません。身体の相性が悪かったらどうするんですか? まったく……」

 ん? ふつう逆では? と僕は思った。
 リクシスさんは腕を組むとつづける。

「とにかく、私の彼氏になるなら、命に変えても私を守ってください」
「え? 僕がリクシスさんを?」
「はい。魔物を変えます」

 ふぁ? と僕は変な声がでてしまった。
 抱きついていた僕から、さっと離れたリクシスさんは、パチンと指を鳴らした。一瞬にして空間が歪み、邪悪な黒い煙がたちこめる。にゅるり、と異次元の狭間から鋭い爪が現れると、空気が震え始めた。
 
 グルルルルルルッ!
 
 耳をつんざくほどの破滅的な魔物の咆哮がこだまする。
 僕は眉をひそめた。
 やがて、黒い煙がサッと晴れると、グガァァァ! と激しい咆哮をあげる翼の生えた黒い魔物、全長5メートルほどの黒竜が落ちてきた。いや、正確に言うと、もうすでに神殿のなかを飛んでいた。見上げるリクシスさんは感心するように言った。
 
「おおお! 久しぶりに見ました。やはり黒竜は大きいな~、こいつが相手なら心の優しいラクトくんでも思う存分ぶった斬れるでしょう」
「……あの、リクシスさん?」
「いやあ、さっきのクリちゃんは可愛すぎましたね」
「たしかに……って、でも黒竜なんて僕は倒せませんよぉ」
「大丈夫です! 愛の力があればっ!」

 そう言ったリクシスさんは僕のほっぺたに、その美しい顔を近づけ、
 
「チュ」

 と、キスをしてくれた。花が咲いたように、口づけの音が弾ける。と同時に、僕の頭のなかで、絡みついていた黒い糸が吹っきれた。
 
「うぉぉぉ! リクシスさんの彼氏になれるなら黒竜をぶった斬りますっ!」
「その意気です。ラクトくん」

 手を叩いてはしゃいでいたリクシスさんだったが、そこに舞い下がる黒竜の鋭い爪が伸びてきていた。すると、リクシスさんは黒竜の巨大な手のなかに握られしまった。
 
「きゃぁぁあ! ラクトくん助けてーっ! 」
「ああ、リクシスさんっ!」

 僕の愛しの女神様が黒竜にさらわれた。その悲劇的な事実が僕の頭のなかをめぐり、戦慄が身体じゅうに走る。黒竜はリクシスさんのことを、ギロリと見つめて、よだれを垂らした。獰猛な竜の牙が鈍い光りを帯びている。極めて頑強そうな顎で、可愛いリクシスさんを食べる気なのだろう。くそぉ、すぐに助けないと!
 
「とりゃっ!」

 僕は飛びあがり、渾身の力をこめて剣を振った。
 黒竜の頭に一刀の筋が伸び、クリスタルソード特有のきらきらした斬撃が黒竜に命中した。すると、肉片や赤い鮮血が、ドバァッと滝のように流れ、大理石の床には綺麗に二つに分かれた黒竜が沈黙している。その横にシュッと降り立つリクシスさんは、パチンと指を弾いた。骸と化した黒竜は煙のように異次元へと消えた。
 
「やればできるじゃないですか、ラクトくん」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「クリスタルソードの力は凄まじいものがありますね。魔物最強の重骨竜を一刀両断。レベル22のラクトくんでも装備するだけでこの攻撃力、まさに最強の武器です」
「はぁ、はぁ、はぁ……」

 僕の息は荒れていた。
 身体の内側から込みあげてくるレベルアップの衝撃に震えが止まらない。腕、足、腹、全身の筋肉がうごめいて、ぶちぶちにキレては超回復を繰り返している。頭のなかで、ガンガンと鳴り響く鐘のような音。稲妻のような光り。身体じゅうにめぐる熱い血の流れ……。僕はレベルアップという脳内麻薬をドバドバに感じている。うふふ、と微笑するリクシスさんは、指をパチンと弾く。僕のステータスを確認しつつ、ふむふむとうなずいた。
 
「おめでとうラクトくん、レベル30になりましたよ。これでMPは230です」
「そうですか……」
「はい。黒竜の経験値は98000ありますからね」
「……高いですね」
「ええ、でも本当はクリちゃん十匹が融合して出現する、でかクリちゃんを倒して欲しかったんですが、まあ、いいでしょう。黒竜を百体ほど倒してくれれば……」
「まじか……気が遠くなってきました」
「そうですか? 意外と早いと思いますよ」
「どういうことですか?」
「魔法にはMP600以上を消費する超絶クラスの破壊力を持つ呪文があります。火魔法で言うなら、インフェルノ、エクスプロード、フレアなどなど。さらに、その上には、MP800以上を消費する召喚魔法もあり、魔法のすべてをあげたらキリがありませんが、とにかく、黒竜を一瞬で灰にすることができる魔法を詠唱することが、もっとも効率の良いレベルアップの方法です。ラクトくんの場合はレベル40を超えることがひとつの壁でしょうね。その壁を超えたら後は早いですよ。きっと」
「……わかりました」

 じゃあ、修行をつづけても? とリクシスさんは尋ねる。
 僕は肉体を酷使したこともあり、勘が鋭くなっていた。邪悪な魔物を倒したあとで、性格が大胆になっていたかもしれない。僕はニヤッと笑ってから、
 
「いいですけど……」

 と、言ったあと、さらにつづけた。
 
「レベル99になったら、僕と付き合えるか試してくれませんか?」

 リクシスさんは慈愛に満ちた笑みを浮かべながら答える。
 
「はい」



 第二章 火の女神リクシスの加護

           お わ り


  * おまけ コーナー*
  
   は~い。
   あ、どうも、ラクトの母です。
   物語をいつも読んで頂きありがとうございます。
   ラクトは甘えん坊なので、イラッとくることも
   あると思いますが、どうか成長を見守ってやって
   くださいませ。よろしくお願いします。
   母としては、読者様の感想などあれば今後、教育の
   参考にしたい所存です。

   おもしろい

   つまらない

   なんだこれ?

   もっとこうしろよ!

   はやく〇〇をやれ!

   などなど、どんな感想でもかまいません。
   読者様が楽しんでもらえるよう
   ラクトはがんばっていきます。
   それでは、今後ともお付き合いくださいませ。
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