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第三章 勇者パーティの没落
2 皇帝からのクエスト ②
しおりを挟む「ノエルちゃん、元気がないですね……どうしました? お腹空いてますか?」
ミルクちゃんはそう言って、わたしの顔をのぞきこむ。心配そうに上目使いをしてくれるので、わたしは母国であるフルール王国にいる妹のことを思いだしてしまった。
ああ。
そのうるんだ瞳に連想されて、家族の温かい笑顔が頭をよぎる。元気かなぁ、お父さん、お母さん……。わたしは、やっと微笑みを取り戻し、ミルクちゃんに答えた。
「ううん、なんでもない。お腹は空いてるけどね、あはは」
ふっと鼻で笑い返したミルクちゃんはつづけた。
「ミルクもお腹が空きました。思えば、虫ケラがいなくなってからというもの、美味しい料理を食べていない気がします。もっとも、店の料理はそれなりに美味しいのですが、なにか足りない気分なのです」
わかるっ! と言ったアーニャさんが激しく同意。
「バカラクトっ! あいつ本気でパーティ抜けるとかマジでありえないっ」
え? わたしは唖然とした。
ラクトくんをあんなに虐めといて、どの口がそういうのだろうか。
その真意を確かめるべく、わたしはアーニャさんを見つめてみる。
アーニャさんは下唇を噛むと、どこか口惜しそうに語り始めた。
「ったく、正々堂々と私の着替えをのぞきたいと言えばいくらでも見せてやるものを……あのバカ。気配を消すのがうますぎるんだよ。透明人間になる魔法でも使ってるんじゃないか?」
こくり、とミルクちゃんがうなずいた。
「それはありえますね。事実、虫ケラのラクトはミルクの魔法を瞬時に跳ね返す魔力を隠していました。なんども虫ケラに火炎魔法の攻撃をしても当たらなかったのが良い例です。はじめ、ミルクは手が滑ったのかな、と思ったのですが、よく考えると違います。虫ケラが何かしたとしか考えられません」
どういうこと? とわたしはミルクちゃんに尋ねた。
「仮説ですが、もしかしたら無自覚で魔法を反射するバリアを発動させていたのかもしれません。それにともない、ミルクは虫ケラを“わざと怒らせて覚醒”を促すべく、攻撃魔法や言葉の暴力で煽っていたのですが、まさかパーティから逃げだすとは、飛んだ拍子抜けヤローなのです。あいつの料理、好きだったのに……」
「ミルクちゃん、ラクトくんのこと嫌いだから虐めてたんじゃないの?」
はぁ? と言ったミルクちゃんはぽかんとした顔をする。
「虫ケラを嫌いに? いやまさか、ミルクはどっちかというと虫ケラのことが好きでしたよ。いつか成長するのではないかと思って可愛がってやっていただけですが、彼には反撃をするという向上心がなかった。もうちょっと根性があるやつだと思ってましたが、ダメダメくんなのです……」
なんだ、ミルクもそうだったのか、と言って納得した様子のアーニャさんは、むにゅっと腕を組んで胸を寄せる。
「それにさ、ラクトのやつってどうせ童貞だろ? 私で卒業して男になれば“覚醒”すると思ったんだけどなぁ、でも他に好きな人がいるみたいだし、残念……」
「そんなの関係ありませんよ。エッチなことをして籠絡させればこっちのものなのです。ああ、虫ケラのDTを開放するなんて素晴らしいアイデア! ぜひぜひ、ミルクも参加したいですぅ~♡」
「だろぉ? 無理やりやっちまえばよかったね」
「はいっ! アーニャさんは、ほんっと肉食系なのですねえ、ミルクも見習っていかなきゃ」
「あっはは、やっぱりぷるんぷるんのお肌にするためには、適度にやってホルモンバランスを整えなくちゃね」
「はいっ! 魔力もアップするからどんどんやりたいです」
ミルクちゃんとアーニャさんは、きゃっきゃっ、と手を取りあってはしゃいでいた。
(この二人って……なんか百合っぽいかも)
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