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第三章 勇者パーティの没落
23 アーニャの覚悟
しおりを挟む「やめろっ、やめ……っああん」
鎖で緊縛されているガイル様の甘い声が響く。
鈍い光りを宿す、土魔法で創造された黒い鎖……。
もがけばもがくほど、その忌々しい鎖は、ぐいぐいとガイル様の白い肌に食いこんでいく。彼の恍惚とした眼差しは、皮肉にも自分の身体を弄ぶ魔族に向けられていた。
( 嘘でしょ? ガイル様? )
「ふぅー、人間の美少女はいい匂いがするぜ、くんかくんか」
「ひゃぁあぁぁ、ダメっ、首は弱いん……だっ! っあん」
「うーん、たまんねえ、くんか、くんか」
「っああ、やめろぉぉぉ……」
鼻をひくつかせるマティウスは筋骨隆々で、こんなたくましい男性から迫られたら、いくら男性のガイル様でも、ひとたまりもなかったのだろう……か? 知らない世界だけど……。
「よおし、もうトロトロだろ? どれどれ?」
マティウスの手はガイル様の股間に伸びて、触れた。その瞬間、
「……ん?」
と、首をひねるマティウス。まさぐっていた手が止まった。やがて、ガクブルにその手が震えだしていく。
( あ、最悪だ…… )
マティウスはびっくり仰天して、
「ぎゃぁぁぁ! おまえ男じゃねぇかっ!」
と叫んだ。
「だから、やめろと言ったじゃないかぁぁぁぁ」
半泣きのガイル様は、かぁぁぁぁと顔を赤くしている。
「アハハハ、こいつはいいや、アハハハ」
サーラのバカみたいな笑い声があがる。
ガイル様をじっと見つめているマティウスは、ガンッと踵を振り落とした。石畳の地面に、ビギビギッと亀裂が入る。その衝撃は凄まじく、崩壊した砦の瓦礫や砂埃が、ブワッと浮かびあがった。
「騙しやがったなぁ! 俺は男に興奮してたのかぁぁぁ、くそぉぉ!」
「まあ、いい勉強になったじゃないか。マティ」
「くっそ、変なもん触っちまった……」
「アハハハ」
嗤っていたサーラが、
「おい、猫耳と女戦士! 女同士ならできるだろ?」
と、声をかける。
びくっとする二人は顔をあげ、お互いに見つめ合う。
サーラは、くくっと笑うと、腕を伸ばして振り払った。
すると、二人を緊縛していた鎖が、一瞬で消える。
解放された二人は、ほっとしたのも束の間、
「おい」
とサーラの冷徹な声に反応して、ぎくりと戦慄が走る。
「とりあえず、おまえらキスして感度をあげろ」
……ッ!?
ふるふると首を横に振る二人。
やれやれ、と肩をすくめるサーラは、マティウスのほうを向いて顎で示した。
「勇者を殺せ……」
はい、と答えたマティウスはのっそりと歩く。
むんずと腕を伸ばし、アフロ様の頭を掴んだ。
グイッ、わたしの勇者様は身体ごと持ちあげられた。
まるで人形のように宙ぶらりんとなる。
マティウスの身体は巨大で、全長三メートルはある。
もはや人間など、このたくましい魔族から見たら、子どもとさして変わらないだろう。
「ぐあぁぁぁ」
まだアフロ様には意識があるようで、悲鳴をあげた。
「おい、あっちを見ろ、勇者。どっちがおまえの好きな女だ? ん?」
「ぐっ……」
「答えろよ、あ? それとも、あっちの巨乳僧侶ちゃんが好きか?」
「悪魔め……殺してやる」
「あはは、やってみろよ。サーラ様の鎖が解けるかな?」
「うおおおおおお!」
歯を食いしばり、全力で鎖を引きちぎろうとするが、アフロ様の魔力と腕力よりも鎖のほうが強いのだろう。皮肉なほど、鎖はびくともしなかった。
すると、アフロ様は絶望を抱いたのか、顔面を蒼白させ、ガクブルに震えだした。目からは大粒の涙をこぼしている。
「あはは、こいつ泣いてやがる。女みたいだな、オラっ」
マティウスの拳がアフロ様の腹をえぐる。
「ぐわっ」
「おい、早くキスしろよ。勇者が死んじまうぜ」
ドゴ、ドゴ、と殴られる鈍い音が響く。
ぐぬぬ、とアフロ様は痛みに耐えながら、
「ミルク、アーニャ、やめろっ!」
と、大きな声で叫んだ。
「俺のことはいいから逃げろっ!」
「だまれっ!」
ドスッと腹を殴られ、
「うぐっ」
と、うなるアフロ様。
マティウスの攻撃は止まらない。
さらに、ボコボコに強烈なボディブローを喰らい、アフロ様はぐったりと人形のように力が抜けた。
「おいおいマティ、やりすぎだ、死んでないか?」
サーラの問いを無視したマティウスは恍惚とした表情で、「オラオラ」と言いながら、さらにアフロ様を殴りつづける。
( ううう……とても見てられない )
ミルクちゃんとアーニャさんはお互いを見つめあったまま、しばらくじっとしていた……だが、ゆっくりとお互いの手と手が絡まっていき、やがて、ゆっくりと唇と唇が近づいていく。
( アーニャさんとミルクちゃんがキスを……そんな…… )
すると、下を向くアーニャさんは唇を噛んでから、言葉を放った。
「無理……」
え? と困惑するミルクちゃん。
アーニャさんの手に絡めていた自分の手が、すとんと落ちた。
「女戦士どうした? それなら、勇者は死んでもいいんだな?」
サーラの問いに、アーニャさんは大仰に首を横に振った。
「やめろっ! 殺さないでくれ……」
「だったら女戦士、股を開け、猫耳に舐めさせる。たっぷり濡らさないとな、我のは大きいから」
びくっとミルクちゃんの耳が震えた。
しかし、アーニャさんは首を振る。
「断る」
「わけわかんない女だな? もういいや、マティウス~」
はい、と答えるマティウスは拳を作るとつづけた。
「もう殺っちまいますか? 頭を殴れば即死なんだけど?」
「ああ、もういいぞ、女戦士が勇者を見放した」
と言ったサーラが軽く右手をあげた。その瞬間、アーニャさんが口を開いた。
「やめてくれっ!」
「ん? じゃあ、早く股を開けよ、ほらっ」
そう言ってサーラは、握っている鎌をアーニャさんに向けた。
かぁぁぁぁ、と顔を赤くするアーニャさん。
股間に自分の手を伸ばし、もう一方の手は口もとを隠しつつ、恥じらいながら言葉を紡ぎ始めた。
「もう……前戯をする必要は、ない……」
サーラは、にやりと笑うと尋ねた。
「ほう、もう入れていい、そういうことか?」
「ああ、おまえらの勝ちだ、好きにしろ」
そう吐き捨てたアーニャさん。
ぬぎぬぎとマントや胸甲などの装備品を外して……。
妖艶な赤いランジェリー姿となったアーニャさんは、くるっと後を向いた。
「ふぅん、随分とさっぱりとしてるな。まるで修羅の女だ。人間にしておくには惜しい」
「うるさい……さっさとしろ……」
「自分から背中を向けるなんて、戦士としては、さぞ背徳感があるだろうな?」
「うぅ……」
皮肉たっぷりに褒めるサーラは詠唱を始めた。
腕を伸ばすと、褐色の魔法陣が虚空に浮かぶ。
そこから、太くて短い棒と、細くて長い棒が現れた。
その二本の棒が、びゅんと飛びあがる。
黒光りする土魔法で創造された棒。
その細長い棒は大人の身長くらいあり、ぶすりとアーニャさんの足下に突き刺さった。一方、太くて短い棒は腕の長さほどで、そっちはサーラの手で握られている。その形はとても言葉では表現できない、官能的なエロス。
( なにあれ? )
と思っていると、すっとアーニャさんは地面に突き刺さった細い棒を両手で握りしめ、お尻を突きだした。
え? わたしは顔を赤くして驚愕した。
すると、アーニャさんの妖艶な仕草を、じっと見ていたミルクちゃんは、
「ダメ、ダメなのですっ! アーニャさん」
と言って首を振り、アーニャさんの足にすがりつく。
下を向いたアーニャさんが、ぽつりと告げた。
「私が犯されている間に逃げて……」
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