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第一章 異世界ファンタジーとは
5 結界
しおりを挟む朝の涼しいうちに。
僕たちは冒険の旅にでていた。
向かった先は王都エルドラドの北西部にあるタムノス平原。
ここは魔物が出現する危険な場所だ。
どこまでも広がる原っぱのなかで、勇者ナルニアと戦士ハリーが、商人などを強盗して悪さばかりするゴブリンを討伐している。僕は戦力外なので、ナルニアに言われた通り、遠くから見ているだけ。
すると、モモちゃんが、
「ガイルく~ん♡」
なんて言いながら手を振ってやってきた。か、かわいい……。
「ヒーラーの出番はないわ……彼らは強くなりすぎた……」
やれやれ、なんてぼやくモモちゃんは、ねえ、と甘えた声でさらに訊いてくる。
「なんで魔物は王都を襲ってこないのかしら?」
ああ、と僕はうなずいた。「結界があるからだよ」
結界? と訊き返すモモちゃんは指をほっぺにあてる仕草をした。
うーん、いちいち可愛いから……尊い♡
僕は、コホン、と空咳をしてから説明をした。
「モモちゃん南を見て……ここからなら王都エルドラドがよく見えるでしょ?」
ええ、とモモちゃんは目を輝かせた。
王都エルドラドにある白亜の宮殿。
どこかディズニーランドっぽくて、モモちゃんは胸の前で両手の指を絡め、頬をピンク色に染めている。彼女の横顔にときめきながら、僕は説明をつづけた。
「王都エルドラドには、目には見えないけど結界が張られてる。正確に言うと、強い魔物ほど弾き飛ばすらしい、とギルド館長が言ってた」
「ふーん、つまり、強い魔物だけは結界のなかには入れないってわけね」
「そういうこと」
「じゃあ、いまナルニアとハリーが戦っているのは強い魔物ではなくて……雑魚なのね」
ギャァァァ、と倒されるゴブリンの背中から剣を抜くナルニアは、こっちを向いて手を振った。僕とモモちゃんは軽く手を振って苦笑い。
「うふふ、もっと強い魔物が来たらヤバいかもね……あたしたち」
モモちゃんは核心を突いてきた。
たしかにそうなのだ。
「うん、本当に強い魔物は結界の外にいる」
肩をすくめたモモちゃんは、僕のたるんだお腹をぽんと叩いた。
「じゃあ、あたしたちって異世界に来てから、王都エルドラドの結界に守られながら、ぬくぬくと冒険をしているのだけだったのね……」
「うん、そうだね」
「そっか~ああん、もっと刺激がほしいなぁ……ねぇ……」
なに? と僕はモモちゃんの顔を見た。小悪魔的な笑みを浮かべている。
「ガイルく~ん」
うわぁ、モモちゃんどした? 嫌な予感しかしない。
僕は逃げようと思って膝を曲げた。
その瞬間だった。
僕は背中越しにモモちゃんに抱きつかれてしまった。
ううう、これでは逃れられない。
背中におっぱいがあたってる。
やわらけぇぇぇぇ……だが、それにしても!
なにを考えてるんだ、モモちゃん?
「えっえっちょっっなに?」
と僕が慌てていると、モモちゃんが耳もとでささやいた。
「あたしと……レベルあげしよっか♡」
はあ? 僕は愕然と立ち尽くしてしまった。
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