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青年時代
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しおりを挟む黄金色に輝きを放つ絢爛豪華な玉座。
王のみが座ることが許された椅子。
それにノワールは足を組んで座っていた。本来なら現在、国を統治する王様が座るはずだが、ノワールはおかまないなしで鎮座する。王様である父親はノワールに対して甘い。いや、ノワールのことが怖い。
というのも、頭のキレるノワールは全軍を指揮できる能力があり、王様よりも軍事力において上であった。
現在、老人となった王様は自然豊かな山の麓で、のんびりとスローライフを過ごしている。もちろん、王女様とではない。若い女たちとだ。王都セピアの街で選びに選んだ美女であり、ノワールが美味しく食べた美女であることは、言うまでもない。
そんな王都セピアの実権を握る彼の見つめる先には、黒いレースドレスを着た女が立っている。ピンク色の髪が美しい絶世の美女。指先でかきあげるその仕草に、ノワールの胸は高鳴るばかり。
──おお、本当にいい女だ……。
「おい、エレンヌ」
「はい」
「おまえには恋人がいたのか?」
「なぜそれを?」
「アハハハ、さっき王宮に侵入した男が、エレンヌを返せと叫んでいたぞ」
エレンヌは目を剥くと、はっと開いた口を両手で隠した。
「ヴァンが……」
「ほう、あの男はヴァンというのか」
「……はい」
「なるほど、まあ、あたりまえかエレンヌの美貌なら男の一人や二人いても不思議はない」
「あの、ノワール様」
「ん?」
「私はいつになったら王宮から出られるのでしょうか? 雇用期間はとっくに過ぎているので、そろそろ家族も心配するだろうし、ヴァンにこんなことがバレたら、私、私……お嫁にいけない」
「はあ? おまえ俺の愛妾を辞めたいのか?」
エレンヌはこくりと小さく頷いた。
「ふぅん、何不自由のない暮らし、快楽に溺れられる日々が目の前にあるというのに、わざわざその極楽を手放すのか?」
「……はい」
「エレンヌよ、さらに言えば、いずれ我の子を宿すかもしれぬのだぞ? そうなったらエレンヌの家族は一生安泰だ、親孝行ができるぞ」
「……でも、ノワール様には正式な婚約者がいるのでは?」
「ああ、だがそれは親が決めたこと、我にだってどうしようもないのだ」
「そう……なのですか?」
「ああ、だからエレンヌ、我の愛妾となってくれ」
「……お断りします、私は本当に愛する人のところに帰ります!」
エレンヌは踵を返して部屋の扉に向かった。
しかしその行手を騎士たちが立ち塞がる。
「エレンヌ、君を怪我させたくはない、大人しくしろ」
「……最低」
「なんとでもいえ、我は王だ」
「うぅぅ」
エレンヌの瞳から涙があふれる。
ノワールは彼女のこぼれ落ちる涙を見て、ニヤリと笑った。
「エレンヌ、ぬげ」
「……!? ここで、ですか?」
「ああ、いいから、ぬげ」
「騎士たちがいます、どうか人払いを……」
「うるさい、ぬげ、怪我をしたいか? エレンヌ?」
「……うぅ」
エレンヌはドレスを脱ぎ始めた。
ごくりと騎士たちは生唾を飲み込んでいた。
エレンヌの裸体を見て興奮し、ニヤニヤと笑っている。
「そこの壁に手をつけ、エレンヌ」
「……うぅ」
「はやくしろ」
ノワールは、ぐいっと顎をあげて示すと、玉座から立ちあがった。びくびくと狼狽えながらも、エレンヌは黙って従う。ぽろぽろと目からこぼれ落ちる涙が頬をつたい、大理石の美しい床に小さな泉をつくる。相変わらず、ニヤリと笑う王子の命令は続く。
「尻を突きだせ」
「……んっ」
「そうだ、綺麗だぞ、エレンヌ」
「……ッ!?」
ノワールの手がエレンヌの下半身へと伸びる。
びくり、と身体を震わせるエレンヌの唇から、あん、と甘い声が漏れた。
「……いやぁっ、あんっ」
「なんだ? もう濡れてるじゃないか? はやいなぁ」
「ノワール様、どうか、人払いを……」
「アハハハ、ダメだ。見られているほうが、エレンヌだって興奮するくせに」
「……ああん」
「ほらぁ、もうこんなにびしょびしょにして……変態だなぁエレンヌは」
「あっ、あっ……ひと、ばらいを……ああんっ」
ノワールの指が狂ったように激しく動くと、エレンヌの足が痙攣して爪先立つ。一方で、若い騎士たちの目は妖艶に身悶えるエレンヌに釘づけだった。欲望に溺れる女の姿が、そこにはあった。
「ああっ、いっくぅ、いっく……あああん」
恍惚とするエレンヌは絶頂に昇った。
むずむずとする騎士たちは、もうどうしようもなくなって小刻みに足を振るわせている。股間に手を伸ばす者さえもいた。かたや、そわそわとする騎士団長ギルバートだけが目を逸らし、部屋の扉へと向かって歩き出した。
すると、ノワールの指が女の花壺から、ぬるんと抜かれた。どさりとエレンヌは膝から崩れ落ちる。
「おい、ギル! どこへ行く?」
ノワールの声に、ぴたっとギルバートの歩みが止まった。
「王宮の見回りに行こうと……」
「ほう、それならひとつ仕事を頼もう」
「はっ、なんでしょうか?」
「さっきのマヌケ面の男、どうやら本当にエレンヌの恋人だったらしい」
「……それが何か?」
「名をヴァンという」
「……」
「そいつをここへ連れてこい」
はあ? といってギルバートは訝しんだ。
王子はいったい何を考えている、と言わんばかりの表情を浮かべ返事をする。
「あの、なぜですか? ノワール様」
「ん? 心の実験だよ。恋人の前でエレンヌを犯したら、ふたりがどうなるか見たい」
「……王子っ!? それはさすがにっ!」
ギルバートは肩を震わせた。
横たわるエレンヌは胸を隠しながら、ひたすら狼狽えるのみ。
「アハハハ、なんだおまえその顔は? きっと面白いことが起きるぞ、楽しめよ」
「お……お言葉ですが、ノワール様、そんなことをしても悲劇しか生まれないかと?」
はあ? といってノワールは目を細めた。
「それがいいじゃないか! あのマヌケ面が自殺するもよし、我と一緒になってエレンヌを犯すもよし、アハハハ、愉快でならん」
「……王子」
ついていけない、とギルバートは思った。
そして裸体のまま嗚咽を漏らすエレンヌを見て嗤う王子を見て、さらに絶望した。
どうしてこうなった?
と、疑問を抱く。
どこで王子の頭の歯車が狂った?
これでは、まるで……
「暴君ではないか……」
とギルバートの口が滑る。
ノワールは眉をひそめ、
「ん? なんかいったか? ギル」
と、圧をかけるように睨んだ。
いいえ、といってギルバートは首を振った。
「よし、それでは頼んだぞ、ギル」
はい、といったギルバートの表情は、闇に落ちていくように暗い。鈍くなった足を引きずりながら部屋から出ていった。
「さて、エレンヌ、みんなで楽しもうではないかぁ」
そういったノワールは、ぱんぱんと手を叩いた。
すると、黒いドレスを着た数人の女たちが現れた。妖艶な甘い香りが騎士たちの間を漂わせて抜けていく。
ああ、もうたまらない……。
と、言わんばかりに騎士たちは股間を押さえて片膝をついた。とても立っていられる状態では無くなったのだろう。ノワールはそう察して、
「おい」
と騎士たちに声をかけた。
「団長のギルもいなくなったし、はめを外していいぞ、騎士どもよ」
ノワールの言葉を皮切りに、騎士たちが鎧を脱ぎ始めた。
たくましい裸体を晒すと、もう下半身は準備万端。それを見た女たちの目が怪しく光り、歓喜の声をあげる。
「さあ、踊ろうか……」
ノワールはそういいながら、エレンヌに手を差し伸べた。
下を向き、おろおろと泣いていたエレンヌだったが、その柔らかい白い手が、ゆっくりとノワールの手に伸びていく。まるでもぎたての果実のように、ノワールはエレンヌの手に口づけをした。
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