転生したら妹の婚約者は暴君でした

花野りら

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 青年時代

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 ひっそりと二人を追跡したルージュは目撃してしまう。
 誰もいない薔薇の並木道に隠れ、キスをするロゼッタとラムスを。
 乱れる男と女の姿が、そこにはあったのだ。
 ロゼッタの手がラムスの下半身に伸びている。ガクブルに痙攣するラムスは恍惚とした表情で目を閉じた。ふとスカートの裾を広げて膝をついたロゼッタは、腕を伸ばしラムスの腰ベルトを外しにかかる。
 カチャカチャ、と乾いた金属音が響く。
 ああ、ロゼッタ、だめだ……という情けない男の声と、いいからまかせて、という甘い誘惑の声が絡まって溶け合う。男と女の妖艶なダンスが今、始まろうとしていた。
 
「うわぁ、ラムス様ぁ、おっきい……」
「ぐっ、まずい、ですよ……ロゼッタさん、ああっ!」

 ついにラムスの下半身は脱がされてしまう。
 ぶるん、と硬直し反り立った肉棒が現れた。
 あっ、とびっくりしたルージュは顔を赤く染め、いったん顔を薔薇の並木に引っこめた。

「うわぁ……やばぁ」
 
 目を剥いたルージュは口を滑らす。
 
「まるで、獣ね……」

 もうこれ以上は見る必要はない。
 とは思いつつも、ルージュはまた薔薇の並木から顔をだし、のぞきをする。頬を薔薇に負けないほど赤く染めたルージュは思う。
 正直にいうと、人の性行為を見るのは、嫌いじゃない。
 美しい、とさえ感じる。
 男と女のぶつかりあいは、人間の神秘だ。
 ロゼッタは一生懸命にラムスの肉棒を咥えていた。
 じゅぼじゅぼと淫らな音が響き、ルージュのほうが誰も来ないように祈っていたが、ふたりは周りが見えていないのか、夢中になって快楽へと溺れていった。

「ロゼ、すごいフェラするわね……これが、男を落とす技か……」
 
 前世、オーエルの知識によって男を落とすやり方は知っている。
 ああやってロゼッタのように、男のあそこを握り、上下に動かしたり、咥えたり、顔を動かしたり、じゅぼじゅぼと肉棒をしゃぶって、しゃぶって、しゃぶりまくるわけだが、ロゼッタはどこでこんな女の技を覚えたのだろうか。しだいに、のぞきをしていたルージュの身体は熱くなり、お腹の底がじんわりと疼くのを感じた。

──ああ、濡れている……私もああやって男の人のあれを、ああやって、してみたい。

「……うっ!」
 
 情けない発声とともにラムスは絶頂に昇った。
 ロゼッタは口のなかにある白い液体を、ペッと吐きだすと手の甲でぬぐう。ピンクの髪が鮮やかに揺れる。その仕草に、ルージュは感動を覚えた。
 
──か、かっこいい……。

 女は男に武力では勝てない。
 だが、性行為なら勝つことができる、とルージュは思った。どさり、と膝から崩れ落ちたラムスの息は荒れ、
 
「ロゼッタ、君って人は……すごいんだな」

 と褒めた。
 いや、褒めていることになるのかはまったくもって疑問だな、と考え直したルージュは苦笑する。不思議と連動するように、クスっと笑うロゼッタは髪をかきあげた。
 
「このことは内密にお願いしますね」

 もちろん、というラムスは不敵な笑みを浮かべた。
 ルージュは複雑な気持ちになった。
 つい先日まで自分に夢中だった男が、性的な欲求を満たされただけで、他の女性に心を奪われるなんて、あまりにも滑稽な話だからだ。結局男なんて、いくら真面目ぶったところで、あそこを女に握られたら、いとも簡単に快楽へと落ちる。男とは、そういう生き物なのだ。そして、もしかしたら、女も……。
 
──まあ、なんにしても、よかった……。

 ルージュは胸をなでおろすと、踵を返した。
 薔薇の並木道を抜け、丘の神殿への山道を駆け降りる。
 その足取りは軽い。思わず、笑みがこぼれた。
 
「うふふ、すべて私の計画通りだわ!」

 やがてルージュは、人気のない獣道に足を踏み入れた。
 ジャケットの内側に手を入れ、おもむろに布袋を取りだすと拳で叩いた。袋の中で、ザクザクと粉々になっていくクッキーの感触が伝わる。無感情に、ルージュは殴る。

「もういいだろう……」

 袋を紐を解いたルージュは、ふいに逆さまにした。
 サラサラと砂のように袋からクッキーの残骸が落ちる。
 黒と白の粉が大地に還る。
 
「これでよき……」

 そうルージュがつぶやいたとき、一羽の小鳥が飛んできた。
 あ! と驚いたルージュはすぐに手を払った。
 鳥は羽ばたいて逃げる。しかしクッキーが食べたいのだろう。あきらめず上空を旋回している。
 
「しまった、穴に埋めるべきだった」

 やがて、数羽の鳥が飛んできてルージュは必死になって追い払うが、手も足も出なくなった。
 鳥たちがクッキーをついばむ。
 すると、ルージュの予想した通り、最悪な事態が起きた。
 やはりクッキーに毒が入っていたのだ。
 飛び立つ鳥が、狂ったように空で舞いながら落ちる、落ちる……。
 
「やはり、食べなくてよかった……ごめんね、鳥たちよ……」

 無数の鳥が儚く散った。
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