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青年時代
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しおりを挟む「ラムス様、ダメです、やっぱりお姉様に悪い……」
「大丈夫さ。いまさっきルージュさんとの婚約を破棄してきたから」
そうなのですか? とロゼッタは訊いた。
首を縦に振るラムスの腕がロゼッタの華奢な腰にまとわりつく。彼は、もう我慢できないと言わんばかりの顔で、はあはあ、と荒々しい吐息をロゼッタの雪のような白い首筋に吹きつけている。
──まるで盛りのついた猫のようね。
とロゼッタは思った。
と同時に内心では、あっはははは、と口から噴き出しそうな笑いを抑えるのに必死だった。
──ざまぁみろ、ルージュ!
ラムスから婚約破棄された姉の存在意義は、もう絵を描くことしかない。もともと根暗な姉だ。ラムスとあたしが結婚しアルティーク家を継いだら、姉はどこか遠方の館でも借りて、そこでシコシコと絵を描いて金を稼いでいればいい。
姉には感情がなく、人を愛せないだろう。あはは、本当に哀れな女。不気味な女。前世の記憶をもつ人形。それにしてもずっと処女なんて、なんだか笑っちゃう。
「うふふ……」
にやけるロゼッタは、だめ、だめ、と否定するものの本音は逆である。彼女はあざとい。その言葉とは裏腹に、ラムスの腕を、がっつりとつかむのだった。か弱い女として抵抗しているのは演技。男を手のなかで転がすことなど慣れたもの。だいたいの男が、焦らされると興奮することをロゼッタはよく知っている。
よって、まだ女を知らないラムスを籠絡することなど簡単なことだった。ぎこちない手つきで、ロゼッタの服を脱がそうとしてくるラムスの顔を、じっと上目使いに見つめるロゼッタは、やおら口を開いた。
「ベッドにいきましょう」
うむ、と答えるラムスの手が震えていた。緊張してるのだろう。
するとロゼッタは自分から着ている服を、ぬぎぬぎ、と脱ぎだした。ラムスの顔は真っ赤だ。興奮して、ぜえはあと息が荒くなっている。
いきなり下着姿の美少女が現れた。
ラムスは微塵にも動けずに、ただ絶句するのみ。まるで、麦畑の地面に突き刺さっているカカシとさして変わらない。
「ほら、ラムス様、ベッドで寝てください」
「あ、ああ……」
石のように硬くなっているラムスの手を引くロゼッタはベッドに寝転んだ。横たわるラムスはどうしていいか分からず、ただロゼッタの身体にキスの雨を浴びせられていた。
キス、キス、キス……。
獣じみた、ちゅぱちゅぱとしたリップ音が弾け、ロゼッタの唇はラムスの口だけじゃなく、首筋へと移っていく。やがて、服が邪魔だと判断したロゼッタは、ゆるゆるとラムスの服を脱がし、ちゅっ、ちゅっ、と素肌にキスをする。
男を喜ばせる舌の技、ロゼッタは女の術を習得していたのだ。
ロゼッタに身をまかせるラムスは、なんとも気持ちが良くなってきて、
「ううう」
と情けない声を漏らすと、ぐっと目を閉じた。
そのとき、ぎゅっ! と右手を何かで縛られる感触が伝わってきた。あっという間に、左手もだ。
「え? ロゼッタさん?」
驚いて自分の両手を見ると、手首が縄で縛られていた。思い切り動かしてみたが解くことができない。縄はベッドフレームに固定されてある。これは、なんだ? 身動きがとれない! と言わんばかりの顔を浮かべるラムスはびっくり仰天。
「ロゼッタさん、この縄は?」
「ラムス様、あたしにすべておまかせください」
「え?」
「天国に連れていってあげます」
えっ? と驚くラムスの股の間で狂おしいほどの女豹がにやりと笑う。下着姿のロゼッタが、まるで猫のように四つん這いになって見つめていたのだが、突き出すお尻が、なんといえないエロさを醸していて、ラムスの視覚を大いに刺激し、悩殺した。
ラムスは熱くなった身体をよじらせ、欲望を満たすため始動する。しかし、自分を縛っている縄がそれを許さなかった。
「あの……この縄は?」
いいから、いいから、というロゼッタは頬を赤く染め、にっこりと笑った。
ロゼッタに身をまかせることにしたラムスは、秒で快楽に溺れた。前回は外で立ったままあそこを咥えてもらったが、今回は寝ながらだ。縄で縛られてはいるが、部屋のなかということもあり、心は非常に落ち着いている。とてもゆったりとした幸せが、ぐぽっぐぽっ、と上下している。ラムスの端正な顔が……歪む。
「ああ、いくっ!」
はやっ、と言うロゼッタは口を丸く開けた。よだれが糸をひいている。
「ぐっ、やめないでくれっ!」
懇願するラムスの顔は真っ赤だ。
可愛い、とロゼッタは思った。シコシコと動かす手はゆったりと遅くなり、ラムスを絶頂に昇らせる気配はまったくない。まるでおもちゃで遊んでいるかのようだ。すると、ラムスの腰がくねりまくり、ロゼッタは思わず、笑った。
「頼む、ロゼッタ! 頼むからもっとやってくれぇぇ」
「どうしようかなぁ……」
「ううう、お願いだぁ、ロゼッタぁぁぁ!」
「じゃあ、あたしの願いを聞いてくれる?」
「ああ、聞く! 聞くからぁぁ」
くすくすと笑うロゼッタは、淡々とした口調で語った。
「あなたのお兄様を殺して……」
え? ラムスは耳を疑った。身体が爆発しそうだ。とても冷静な判断ができない。あたふたしていると、ロゼッタはさらに続けた。
「この粉を料理に混ぜればいい」
そういうロゼッタはベッドの下に手を伸ばした。何か隠しているようだった。やがて上半身を起こすと白い粉が入った透明な瓶を持ち出してきた。
「兄を毒殺、しろと?」
とラムスは訊いた。額からは大粒の汗が滴る。
うん、とロゼッタは頷く。垂れているピンクの髪を、さっとかきあげた。
「ノワールが死ねば、あたしと結婚できるし……」
言葉を切ったロゼッタは、微笑みながら顔をラムスに近づけた。
「王都セピアの次期国王の座は、あなたのもになるわ、ラムス」
耳元でそうやってささやくロゼッタの顔は小悪魔のように笑っていた。ラムスは黙って小瓶を手に受け取ると、ロゼッタを抱いてキスをする。
「うふふ……」
最高の展開になってきたな、とロゼッタは思った。また一人、男が落ちた。
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