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青年時代
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しおりを挟む王子ノワールが崩御した。
その訃報は号外が撒き散らされて、瞬く間に王都じゅうに広がり、その噂がロゼッタの耳に入る頃には、大通りはお祭り騒ぎだった。それはそれとして、気になることがあった。
──ラムスが毒をもったの?
ロゼッタは急いで号外を配る男から新聞紙をもらう。
字面に目を走らせてみると、死因は『落石事故』とあった。
──はあ? なにそれ?
さらに新聞を読み込む。どうやら丘の宮殿に巡礼に行く途中の参道にて、岩の落下に激突したとのことが書いてあった。騎士団長ギルバードの証言によると、王子ノワールは頭部を強打して即死だったらしい。欄の締めくくりには、『民よ、しゅくしゅくと喪に服せよ』とあったが、皮肉なことに、黒とは言い難い色彩が王都じゅうに舞っていた。
都民が摘まれた花びらを撒き散らしている。不思議なことにそれを止める騎士もいない。王子ノワールの死はそれほどまでの衝撃的な歓喜を生み出したのだ。
事実、明るみではないが、ノワールの悪名は知れ渡っており、美女を監禁していたことや近いうちに海に渡って他国を侵略しようと企てていることも、都民をこのように踊らせる起爆剤になっていた。
──みんな、喜んでいる。
ロゼッタは絶句した。
そして、これからの自分の未来を想像した。おそらく、このままいけば、第二王子のラムスが次期国王になる。よって、もともと王宮に嫁ぐことになっていたわたしが……。
──王妃に。
まさか、まさか、ラムスにノワール殺害を依頼したが、このような運命が待っていようとは夢にも思っていなかった。ロゼッタは、飛び跳ねて喜んだ。
「やった!」
受け取っていた新聞紙を、ビリビリに破き捨てる。
思うことはただ一つ。
──これで、お姉様は一生独り身ね。
まあ、それでいいのではないかしら、とさらに思いながら、ロゼッタは家路を歩いた。今日はお買い物をしていた。付き添いのメイドたちに買い漁ったドレスの入った大きな袋を持たせている。メイドたちの年齢はロゼッタの同じ年頃の娘だ。本当なら友達と遊び、恋をし、人生を楽しく謳歌したいだろう。だが、ロゼッタのメイドとなった以上は従順に行動しないといけない。背の高いロゼッタは歩くスピードも速く。ちょっとでもメイドの歩みが遅れたら、
「はやくっ!」
と怒鳴られる。
背の低いメイドは泣きながら震え、荷物を持ち直して走った。
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