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青年時代
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しおりを挟む美しい純白のドレス、すこやかに笑う花嫁。
今日は、ラムスとロゼッタの婚礼の儀が執り行われる特別な日。ここはアルティーク家の待合室。ルージュはメイドたちに着飾ってもらっている妹の綺麗な晴れ姿に、うっとりと見惚れていた。
「すてきよ……ロゼッタ」
姿鏡の前に立つ妹は、くるりと回って見せ、水滴のように宝石を散りばめられたスカートを揺らす。そして、にっこりと笑う。その表情は、いつものような小悪魔じみた笑顔ではない。心から笑っているように見える。わだかまりという棘のような氷は、もう溶けた。
「お姉様、本当に私がラムス様と結婚してもいいのですか?」
ルージュは、こくりと頷いた。
「もちろんです。私はロゼッタに幸せになって欲しいのですから」
「んもう、お姉様、こんなときでも気難しい言葉を……いつもみたいに前世の言葉で言ってよ」
「ロゼッタ……そのドレス、よき」
ルージュは親指を立ててウィンクした。
その瞬間、ロゼッタの目から涙がこぼれた。周りにいたメイドたちは気を使って、部屋から出ていく。姉妹を二人きりにさせるためだろう。王宮に嫁いだら、いくら家族といえど気軽に会うこともできなくなる、だから、妹と話すのはこれで終わりかもしれない。
ロゼッタも、それはわかっているのだろうか。潤んだ瞳で、心のなかで伝えたい言葉に思いを込めている。
「お姉様、あたし、あたし……今までごめんなさい」
「急にどうしたの? ロゼ」
「じつは、あたし……お姉様のことが嫌いで、殺そうとしていたの……」
知ってる、とルージュは答えた。凛とした声がロゼッタに衝撃を与えた。
「え? すべて知っていたの?」
「はい、クッキーに毒をもったこと、ラムス様を女の技で落としたこと、すべてね」
「そ、そうでしたか……」
ですが、といってルージュは言葉を切った。
たらり、と背中に冷や汗を流すロゼッタは、グッと息を飲んだ。するとルージュは目を細めた。何もかも見通しているかのような青い瞳が、うっすらと光りを宿している。
「ロゼ、もう怖がらなくていいんだよ。これからは自分を大切にしてね」
「……なんで?」
「ん?」
「なんで、そんなにあたしに優しいの? 何か裏があるんでしょ?」
「ないわ」
いいえ、といってロゼッタは首を横に振る。
「お姉様は絶対に何かを隠している。わたしはずっとお姉様を見ていたからわかる」
「……もう隠す必要は、ないのかしら?」
うん、とロゼッタは頷いた後、ルージュに近づいた。肉薄する美しい二人の顔が、まるで絵画のように静止していた。
「お姉様、大好きです」
「……」
「だから、本当のことをいってください」
「……」
「お姉様を大嫌いだったロゼはもういません。ロゼはお姉様のことが……大好きです」
わかった、とルージュは言うとロゼッタの髪を優しくなでた。
「ロゼのその髪は可愛いらしいピンク色」
「……はい」
「アルティークの屋敷にある先祖の絵画にピンク色した髪の人はいません。父と母も金髪、私も金髪です」
「……?」
「養子、なんだよ。ロゼは」
は!? ロゼッタの頭に電流が走った。
すると突然、ルージュはロゼッタを抱きしめた。強く、強く、お互いの心臓の鼓動が共鳴するほどに。
「く、苦しい、お、お姉……」
口ごもる妹をルージュは少しだけ腕のなかで離してから、見つめ合った。
二人の胸のなかで、きゅんと何かが弾けた。
「私はロゼのお姉様だよ! ずっとずっと!」
「……本当に?」
「血は繋がってなくても、変わらない」
「お姉様ぁぁぁ! 大好きぃぃぃ!」
「私もロゼが大好きだよ、ずっとずっと……」
純白のドレスに宝石のような涙がこぼれ落ちた。
抱き合う姉妹は、今までのすれ違いを埋めるように笑みをこぼす。よそ見せず視線は絡まり、愛が染まっていく。
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