新月を追って

響 あうる

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第2章

【28話】雨が連れてきたもの※(外敦)

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随分と経ってから敦志は


「ぷはぁっ…あっ…ぅ……」

 安堵するように大きく息を吐く、だが安堵も一瞬で声を抑える必要がなくなっても敦志を苦しめる刺激が止む気配はない。シーツをキツク握り耐えていると

――――バンッ

 突然大きな音がしてクローゼットが開いた。あまり勢いが強かったためにクローゼットの戸が壁にぶつかった音だった。中に隠れていた外村が出てきて敦志はこれから起きることに怯え震えた。


「何、今更純情ぶってんだよお前」

 外村は怒っているのかツカツカとベッドまで歩み寄り敦志のパジャマの胸ぐらを掴んで引き上げる。引き上げられるまま上体だけ起こす形になった、敦志は肘をついてどうにか体勢を整える 

「な、に言って…」

 胸倉を掴む手を離させようと片手で外村の手を掴んだ。すると触れられたことに我に返って外村はその手を離した。
 肘で支えていたつもりだったが手を離されると敦志はベッドの背中を叩きつけた。背中の衝撃に顔を顰めていると布団を剥ぎ取られて、すぐさま外村が覆いかぶさってくる

「ココに突っ込まれたくて仕方ないくせに…」

 そう言うや否な外村は布の上から敦志の後孔に挿入されたバイブの少しばかり出ている持ち手の部分を掴んでグッと押し込めた

「ああぁっっ」

 敦志は大きく目を見開いて身体を強張らせて声を上げた。それは甘い喘ぎ声というより悲鳴に近いものだった。
 外村は未だ身体を強張らせている敦志からズボンはもちろん、下着まで奪い取って下半身を裸にした。
 外気に晒され身震いしていると両膝が腹部につくくらい膝裏を押し上げられた

「ぁ、ゃ…だっ」

 未だ深々とバイブを飲み込む後孔とゆるく勃ちあがりかけた自身が否応なしに敦志の目に入ってきた

「美味そうに咥えてるな」
「そ…な、ちがっ」
「違わないだろ…」

 外村が言葉に詰まったかのように何も言わずに敦志を見下ろしてくる。敦志も何故だか目が離せなくて暫く、見つめ合う。
 ふ、と外村が笑って敦志の耳元に囁く。


「あんなに俺に抱かれたのに…お前、他の男にも抱かれただろ、言えよ……誰に抱かれたか」
「っ痛、ぁ…」

 まるで甘い囁きなのに、段々と何処か怒りを孕んでいく低い声に敦志は大きく目を見開いて、ゾクッと震えた。
 答えるよりも先に、耳たぶを噛まれ痛さにギュッと目を瞑る。痛みは、ぬるっとした柔らかい舌に舐め上げられると快楽すら呼び覚ます。
 答えられない敦志の首筋を下へ、キスをしながら降りていき、肩口まで辿り着くと再び歯をたてる。


「は、ぁ…か、むなっあ、あ!」

 噛まれたのと、ほぼ同時にナカのバイブがまた震え始め、敦志はビクッとした。
 その反応に気を良くしたのか、パジャマのボタンを外しながら外村の手が熱く、敦志の身体を撫でていく。
 前がはだけて、その身体が晒されると敦志は羞恥に顔を背けた。
 外村はその胸元に胸の突起にキスして、ぷっくり膨れた突起を口に含んだ。


「あぁっ…ぁ、ん、んっ」

 与えられる刺激に、噛まれるかもしれないという不安に敦志は、自らの突起を咥える外村の唇から目が離せなくて、喘ぎ声があがる
 まるでバイブに自らのナカを擦り付けるような淫らな腰つきで、目を快楽に潤ませてガクガクとバイブの振動に合わせて腰を振る敦志はたまらなく卑猥で、外村は自分が息を呑むのが分かった。


「あっ!あぁ…ぬぃ、抜いてっこ、れっ」
「…言えたら、な」
「あああ!…い、言うっ…言うから、抜い、て」

 機械に弄ばれていると刺激が強すぎて、オカシクなりそうで、怖くなって敦志は必死に懇願した。
 ズチュッと卑猥な音をたてて、ゆっくりそれが敦志の身体から抜かれた。
 いつの間にか、敦志自身は縛り上げられていて達することが出来ずに、ただビクビクと身体を震わせる。


「それで?誰」

 はぁはぁと息を乱す敦志を見下ろしながら、涼しげな顔の外村が、答えるのを待つ。 
 しばらく敦志を見つめていた外村は、待ちくたびれたようで未だ天を向いたままの敦志自身を手のひらで包み込むようにして扱きはじめる。


「あ、ぁっ」
「喘いでばっか…」
「さわっる、からっ」

 呆れたように笑われて敦志は頬を赤くした。それでも外村はそこに触るのをやめない。 
 果てのない快楽の波に身を捩る敦志の耳に再び、外村が囁く


「…松島さんとヤッたよな?……あとは…」

 外村は、そう言ういながらスマホを取り出してスワイプした。すると動画の再生が始まり、目を奪われる。
 画面に映る白いシャツの人物は背中を向けているが、僅かに振り返った横顔が敦志と分かる。

『あっ!あ、あっ…あぁっ…』
『そんな、声上げて…誰か来たらどうすんの?』
『ぁ、んっ…ん、んっ…んぅっ…』
『堪えた声も…やらしぃ、そんなにイイのかよ?俺の…』

 それは上岡たちに撮られた動画だった。動画が進むたびに、あの時の記憶が生々しく蘇ってきて唇がわなわな震えた。
 証拠を見せつけられている以上、言い逃れはできない事と、言葉を口にしない外村の雰囲気に敦志はヒュッと喉を鳴らして、震えながら目を瞑った。


「か、………上、おかさ…んと…」
「ふぅん…随分、善がってたな…そんなイイ?あいつの…」
「ち、ちがっ」
「違わねーだろ…お前は結局、ココに挿れられて悦んでんだから」
「なっ……俺がっ…し、たくてして、…とでもっおもって!ん…のかよ」


 外村の言葉に我慢出来なくなって、敦志は起き上がり外村の胸倉を掴む。ぱた、ぱたと溢れ出た涙がその手を濡らして、敦志はうぅ、っと嗚咽を飲み込む。
 その涙に、外村の目が大きく見開かれたことに敦志は気付かない。


――――なんで、どうして

 髪の色も、肌の色さえ違うのに、触れると伏せられた瞳が底知れない哀しみのような色に染まって“あの人”と重なる。
 他の男に穢されて、泣いてるところまで何もかもが思い出させて外村の胸を燻る。
 もう惹かれる衝動に抗えなくて目元に、頬に唇に…性急に口づけていく


「ん!ん、……ぁ、はあっ」

 敦志は口づけながら押し倒され、何度も唇を啄まれて舌でかき乱されていく。
 息苦しさは敦志から考えることを奪っていき、溺れて藁に掴まるかのように外村の背中に腕をまわす。
 どのくらいそうしていたか分からない、外村の唇が離れてぼんやり目を向けると熱に浮かされたような顔をしていた。
 まるで“愛しい”とでも言いそうな表情に、居心地が悪かった。その瞳の意味を知りたくなかった。
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