新月を追って

響 あうる

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第2章

【34話】皮肉な運命※(尿道責/松敦)

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「ひっぎゃぁああっ」

 頭が松島の言葉を理解する前に激痛が敦志の身体を突き抜けた。思わず仰け反って身体をこわばらせたものの、それでも痛みはそこにあり続けて敦志はガクガクと震えだす。
 考えたくもないが痛みは確かに敏感なはずの、張り詰めていたはずのそこから発生している。見えないせいでどうなっているのかと思うと怖くて震えてくるのだ


「や、めっ痛っ…痛い!」
「最初だけだよ、我慢して」

 そうなだめるように頬にキスされて納得できるようなことではない。
 やがて何かがズズッと抜け出ていきそうになり、安堵しかけたところでまだグッと中に押し込まれた。敦志は言葉にならない悲鳴を上げた


「ああぁっとってっ…とれって!」

 痛みに耐えるために身体を強張らせたまま、切羽詰まって声を荒げても松島はその行為をやめようとしなかった。
 痛みは強すぎて拡散してきて痛みが痛みでなくなり快楽になってしまえば男としての自分が崩れ落ちることを敦志は知っていた
 それが更なる恐怖になり唇を震わせながら敦志は切羽詰まって言葉を紡いだ 。


「ぁ、ぃやっ俺、の…どうなってっ」
「ん?綿棒入ってるよ」
「な、に?」
「綿棒が出たり入ったりしてるよ」

 綿棒?入る?その二つの単語が結び付けられない、いや理解したくない敦志の耳元で「イイでしょ?」と松島に嬉しげに尋ねられたが


「イ、ィっ…わけ、なっ…は、…」

 敦志は強がってそう答えた。だが、松島の指先の綿棒は明らかに敦志の先走りを含んで濡れていて、出し入れするたびにそれはもうヌチュヌチュと卑猥な音を立てていた。
 松島は軽い溜め息を吐いてやっぱ素直じゃない、と嬉しげに呟いた。そして、陰茎の異物は動きをやめた。異物感は取れなかったが動かされなければ我慢は出来る
 しばし、肩で息をしながら安堵していると突然ユニフォームの上着をめくり上げられ上半身の外気に触れている部分が寒く感じる。そして敦志が言葉を発する前に松島の柔らかい舌が小さな突起を軽く撫でた。
 今までの行為で既にツンと勃ち上がり敏感になっていたそれは、軽く一度舐められただけで強い快感をもたらし敦志はビクリと震えた


「な、ぁっ…ん、あっ…あぁっ」

 それでも躊躇いもせずに松島は再び突起を口に含む。そしてちゅっと音を立てながら吸い上げていく。音に羞恥させられ、与えられる快楽は陰茎へとダイレクトに伝わってしまう。 
 
先ほどまで弄られ快楽すら感じかけていた陰茎は、より確かな快楽にビクビクと震え、もどかしさに腰が揺れはじめる。それを松島が見逃すはずもない。
 一層キツく吸い上げられ、甘噛みされ空いた突起までキツく摘み上げられ


「あ!あっ…ん、ふ…んぁっ…あぁっ」

 熱が一点に集中して解放されようと快楽が上り詰めて来るのにいつもと違って果てることが出来ない。敦志は見えるわけでもないが目を開き真っ白な目の前に戸惑いながらもなにかを捜し求めて首を動かした。


「どうしたの?」

そう笑う声が聞こえたと思ったら唇を塞がれた。
キスの合間も指が突起をなおも弄り続けていて
敦志は鼻に抜けるような吐息で応える他なかった。


「い…けなっ…イけな、…ん、あっ」
「そりゃ…イけないよ中西ちゃんのここ、綿棒咥え込んでるもん」
「ひぁっ」

 綿棒の先を松島がちょんと突くとしばらく触れられていなくて忘れかけていたため、突然の感覚に敦志はビクリと身体を跳ねさせた。すると松島はその綿棒を再び抜き差しし始めた


「ぃ、あっや…と、…って!」

 イきそうな状態の敦志にはそこを弄られるのは苦痛でしかない。敦志は再び包帯に涙を滲ませながら懇願した


「いいよ、俺のお願い聞いてくれたら取ってあげる」







 これのどこがお願いなんだ?目隠しと手の包帯を外されて敦志は思った。陰茎に突き刺さる綿棒が目に入ってくるとたまらず自分で取ろうと試みたが松島に手を掴まれた。


「ダメだよ?お願い聞いてくれるって言うから手を解いてあげたんだから」

 そう咎められると、悪い気がして本当は言うことを聞く必要もないのに、敦志は大人しく松島のお願いを実行することにした。
 松島のお願いというのは、処置用のベッドに腰掛けた松島に敦志が跨ってという所謂、座位をして欲しいとのことだった。
 なんでこんなこと、と思いながらも敦志は落ちないように足を震わせながら松島の下半身を跨るように膝立ちになった。
 それだけでは不安定で松島の背中に腕を回してしがみ付いて、敦志は漸く、松島はコレがしたかったのだと気づいた。
 内心呆れた頃、


「あ、忘れてた…やっぱ濡らさなきゃ痛いよね?」

 松島は手を伸ばしてチューブを手にとって中身を敦志の後孔に塗り、中を解した。これで準備は整ったわけだ。後は敦志が腰を下ろすだけ。
 はい、どうぞなんて楽しげに笑う松島が少し恨めしかった


「はっ…ん、ぁっ…あ…」

 ゆっくりと先端を当てがわれ、敦志は意を決して腰を下ろして行った。
 いつものように無理に奥まであっという間に突き上げられる方が敦志の心境的には楽だった。自分で加減が出来ると怖くて、更に腰を沈めることも出来ない。かといって少しばかりは挿入しているので中の松島を意識して羞恥心に駆られる。

 迷いに揺れる瞳や羞恥で心なしか赤い頬や、つらいのかハの字になっている眉。敦志の表情を形成する全てがたまらなく松島を昂ぶらせたが、一点に集中している敦志は松島の視線にすら気づかない。
 そのままずっと見ていようかと思ったが敦志の動きが完全に止まってしまい、しぶしぶ松島は口を開いた。


「中西ちゃん、お互い寸止めはキツイよ?ね?力抜いて?」
「ぁ、やっ」

 松島は敦志の背中に回していた手で腰を掴むと下に引き寄せながら、グッと突き上げた。途端に身体を駆け巡る快楽に敦志はビクッと身体を強張らせて耐えた。
 だが再び強烈な刺激を与えられると快楽を覚えこまされた身体は期待に我慢が効かない。ゆるゆると腰が蠢き始める。


「あ!はっ…ぁ……」

 ギュウッと抱きつかれて松島は嬉しくなりながらも優しく背中を擦ってやり、耳にちゅっとキスして


「まだ力…入ってるよ?力抜いて…俺を受け入れてよ」 

 耳へのキスに力が若干抜けたことに松島は気づき更にそれを繰り返した。何度も音が耳に届き、キスされているのだと思い知らされ敦志は恥ずかしくもぞもぞと身動ぎを始めた。
 微かな動きは敦志だけじゃなく松島をも追い詰めてごめん、という呟きと共に一気に敦志は腰を引き寄せられた。


「う、あああっ…」

 反動で思わずそんな声を上げて、身体を強ばらせてしまう敦志。一層中の松島の存在が大きくなった気がした。すぐさま松島に突き上げられ始める。


「俺の…全部入ってる…」
「は、っあ!あっ…ぁ、い…うなっ」

 松島の嬉しげな呟きに、ぎゅっと目を閉じていた敦志は思わず目を見開いた。驚きに大きく見開かれた瞳は睨みたいのだろう、細められ、でも眉や頬が快楽を彩ってますます松島を昂ぶらせた。
 微かに笑みを浮かべるその唇に目を奪われ敦志は、そのうち逃れようと松島の胸元を押し始めた。


「あっぃ、やだっ」
「中西ちゃんっ…ダメだよ、しっかり…しがみついて?…落ち、ちゃうよ」

 落ちる、その単語に我に返る。確かに敦志が腕を離せば松島が支えなければ敦志は後ろから床に落ちてしまう、それほど不安定なのだ。
 逃れたくても逃れられない、受け入れるしか、ない。


「いい子だね…」

 松島の囁きに目を閉じた。
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