新月を追って

響 あうる

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第2章

【37話】皮肉な運命※(放尿/松敦)

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「な、に?」

 突然のことに、髪のくすぐったさに戸惑っている敦志だったが次の瞬間、温かくぬるりとした感覚が髪のせいで意識していた胸元からした。
 慣れない状況に反らしていた目を大慌てで向けると、松島は敦志の胸元を舐めはじめていた。くすぐったい感触が向かっている先も自ずと分かってきていた
 敏感になっている身体のせいか、期待か未だ突起まで舌がたどり着いていないのに敦志は息を乱し、腰をもどかしげに蠢かせていた。
 そんな自分が恥かしくて松島をどうにかしようと手を動かそうとする敦志


「焦らな~い」
「焦ってないっ離、せよっ」

 だが目敏い松島に両手をベッドに繋ぎとめられてしまった。松島は自由な唇で敦志の胸元で主張する小さな突起を摘んだ。そして、舌で硬くなりだすそれを愛撫した。


「ん、ぁっあっ…あっ…」
「やっぱかわいー、もっと聞かせてよ」
「ひぁあっあっ…ん、んぁっ」

 興奮した声色で囁き、松島は唾液でぬるめく突起を今度はしゃぶりだした。まるで赤子が強請るようにちゅっちゅっと吸い上げてやると尿意を抑えることに神経を費やしている敦志は他のことが疎かになってしまっているのだろう、抵抗していた手の力が弛み、抑えきれずに甘い声を上げている。
 解放を熱望し、無意識に腰が動いてしまい結果的に未だ硬く勃ったままの陰茎を覆いかぶさっている松島に押し付ける形になった。
 そのことに松島は形の良い唇に笑みを作った。



「何回でも…何回だってっ…抱きたくなるよ」

 松島がいつもより低く、まるで愛でも囁くように告げた。だが、その言葉を理解できるほどの余裕が敦志には残されていなかった。
 尿意に耐えてハの字に眉を寄せ、そのうち両目から涙が頬を流れ落ちた。


「おね、がっ…ト…イレっ」

 震える唇が告げて、懇願する目が松島を見上げる。その表情がもう一度抱きたくなる程、松島を駆り立てたことを敦志は知らない。


「おねが…ぃ」

 必死に頼み込みながら敦志は目を閉じた。再び涙が流れ落ちる。
 松島はそんな敦志の髪を優しく撫でるとついぞ、敦志の上から退いた。
 ホッとした敦志が起き上がると突然ちょっと待ってと手をかざし動きを制した。


「松島さん俺、トイレに…」

 泣きそうになっていて、少し弱弱しい声色で敦志は言った。


「分かってる、おしっこ出るんでしょ? ちょっと待っててよ、コレでいいんじゃないかな~」

 敦志から退いた松島は保健室の棚の中を漁りだした。松島の手元がよく見えない敦志は何をやっているのかわからず、ただ早くトイレに行きたくて苛々しはじめていた。
 だが松島が持ってきたものに松島の言葉に、そんな苛々など忘れてしまった。


「はい」

 と目の前に差し出されたのは深めの白い金属のトレイだった。ワケが分からずに松島を見つめ返すと松島は平然と言ってのけた。


「これでおしっこしたらいいよ」
「…は!?」

 一瞬呆気にとられた後、再び敦志は松島を睨んだ。その後、いい加減にしてくださいと松島の体を押しのけてベッドから降りて自らの足でトイレに行こうとした。
 だが痛めたばかりの足のせいで敦志は大して歩くことも出来ずに床に膝をついてしまっていた。
 それでも立ち上がろうと床に手をついた敦志は自らの太ももを流れ落ちる感覚に羞恥し、思考を奪われてしまった。


「ほらー、トイレ行くの無理だって」

 逃げ出したはずの松島の腕にまた抱かれ、耳元で咎めるように言われた。


「…まだ中西ちゃんの中、俺の精液でいっぱいだよ、そんな格好で歩いてたら廊下汚しちゃうよ」

 更なる羞恥は敦志の動きを完全に止めてしまった。どうしていいのかわからないのだろう、瞳が迷うように左右に揺れていた。
 松島はそんな敦志の目の前に再びトレイを持ってきた。途端に小便を漏らすということへの拒否感が蘇ってきて敦志は激しく首を横に振って嫌だと喚いた。だが松島はお構いなしで、トレイを敦志の足元に置いた。そして敦志を膝立ちにさせる。


「いやだっほ、んとにっ…やだっ」
「じゃあ、ここ縛ってイケなくされてもう一回抱かれるのとどっちがいい?」

 松島は背後から敦志の陰茎を握りながら尋ねた。途端に敦志は黙りこくってしまった。それを肯定と捉えて松島は敦志の陰茎を刺激し始めた。


「大丈夫、俺がコントロールしてあげるから。それにもしトレイからはみ出しても拭いてあげるよ?」

 敦志は泣きそうな言葉にならない声を上げて微かに首を横に振った。
 いくらなんでも、人前で排泄などする気になるわけがない。懸命に我慢をするのだけれどそこを弄られては、我慢にも限界があった


「や、やめろって!ぁあっも…漏れ、ちゃうっ」

 陰茎を扱く手の早さに比例して身体が熱くなっていき、やがてぶるぶるっと震えた後、敦志は射精した。その後も陰茎を刺激され程なく黄色い液体が勢い良く飛び出してきた。その勢いのよさはトレイに打ち付けられる音からも感じ取れた。


「ぁ、見…んなっ見ないでっ」

 敦志は尿を放出した瞬間、それまでの辛く長い我慢からの解放に一瞬、恍惚とし筋肉を弛緩させかけたのだがすぐさま人前で小便を漏らしてしまったという事実に泣きそうに顔を歪めて、唇を戦慄かせてそれから両手でその顔を覆って隠してしまった。
 その間も出続けていた尿が勢いを失って滴り落ちていく


「大丈夫だよ…中西ちゃんは俺のせいで漏らしちゃったんだから泣かないで」
「泣っ…いてなっ」

 泣いているのだろう、上手く言葉を紡げない敦志の頬に松島はキスをしてから愛しげに目を細めた。


「誰にも言わないからね…二人だけの秘密だよ」

 途端にたちこめるアンモニア臭に眉に皺を作りながらも敦志は顔を隠したまま、ただ頷いていた。
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