新月を追って

響 あうる

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第2章

【36話】皮肉な運命※(松敦)

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「あ、ああぁっ」 

 松島の手によって綿棒が引き抜かれると敦志は切なげな嬌声を上げた後、塞き止められていた欲望を解放した。
 松島の手を、自らの腹部を汚す白濁がいつもより少し多い気がして敦志は恥かしさに俯いた。そして脱力と共に体を松島へ傾かせていった。松島の鎖骨に敦志の額が押し当てられるといよいよ松島はドキドキと胸を高鳴らせた。胸の高鳴りの理由は緊張だけではない
 しばらくしてガバッと顔を上げた敦志は羞恥に染まった顔で何か言いたそうに唇を噛んだ 


「っ…もう、しませんからね!」 

 そんな敦志に松島が悪びれもせずにしあわせそうに笑みを浮かべるものだから敦志は怒ったように言い放ってまた強度を取り戻した松島の陰茎を抜こうと松島の肩に手をついて腰を上げた。
 卑猥な水音を立てた後、完全に陰茎が抜けきるだがそこは未だ開いているのか、敦志の太ももを松島の放ったであろう精液が流れ落ちていく。
 松島はいたく満足げに太ももを撫で上げた 


「なっにやって…んですかっ」 

 更なる羞恥に頬の朱が増す、繋がりも解けたことに敦志は早口に言いながら松島の側から逃げ出そうと試みるが後ろから腰を抱かれ引き戻された 


「中西ちゃぁん」 

 今にも泣きそうな声で耳元で囁く、その声になんとなく動きが止まってしまう敦志に追い討ちをかけるように松島は続けた 。


「俺…また元気なっちゃったよ、中西ちゃんのせいだよ?」
「んなのっ…しりませんよ!俺っ…もう、しないしっ」 

 少しばかり後ろに振り向き、背後の松島を押し離そうとする敦志だったが顎を掴まれ更に後ろを振り向かされ、気付いたときには唇を塞がれていた。

「ん、ふ……っん…ぁ、だ…」 

 息苦しくなるほどくちづけられ、漸く開放されぼんやりしていた意識がはっきりしてくると、息がかかりそうなほど近くにいる松島が、松島の欲情した表情が目に入り気恥ずかしくて敦志は目を反らした


「ねぇ…」

 そう甘く吐息混じりに囁きながら敦志の陰茎を手で巧みに弄ぶ。
 そこを弄られれば誰だってその気になってしまう男のどうしようもない性をこの時ばかりは呪いたくなった 


「ほら、また硬くなってきた」

 敦志はもう応える気力すら出なかった。ただ快楽に従順な自らに苦々しい気分で泣きそうに目を細めていた


「どう…して、いじわるばっか」
「いじわるだった?…でも、たしかに俺、中西ちゃんをもっと追い詰めたいかもなぁ」

 不思議そうな表情で肩越しに松島へ振り返る敦志。そんな敦志ににっこり笑って松島は告げた。


「追い詰めて、理性なんて剥ぎ取っちゃいたい」



―――本能で求めて欲しい


「ぃや、だっ…」
「大丈夫だよ、何も考えないで……素直に欲しがる中西ちゃんが一番かわいいよ」
「あぁっ!」

 敦志は再び異物感の抜けきれないそこに熱い楔が打ち込まれるのを感じた


「もう…しないって」

 消え入りそうな声で抗議を言うがその熱に腰が震える。まるで貪欲に刺激を求めるように。敦志はそのことに泣きそうに目を細めた


「んぁっダメ! うごか、さ…ぃでっ」
「いいの? 動かさないほうが、つらいと思うけどなぁ」

 敦志のナカは言葉とは裏腹に奥に誘うように、掻き乱されることをねだるようにキュウッと松島の陰茎を締め付け、松島は愛しげに目を細めて呟いた。





―――ずっとこのままだったらいいのに

   ずっとこのまま
   
 中西ちゃんを
  
  感じていられたらいいのに 




 はぁ…はぁ…と、先ほどよりも荒い吐息が部屋を支配している。
 敦志は再び体内に注ぎ込まれた熱にぶるっと身を震わせた。汗だくの肌が触れ合うことに戸惑いすらせず後ろから松島に抱きしめられる。


「中西ちゃん…」

 松島のしあわせそうな声を聞いていたら疲労と熱に侵された思考回路は満足のようなものさえ感じていた。


「あ!」

 突然の声に驚き振り返る前に松島の手が敦志の陰茎に触れ


「イッてなかったね…俺としたことが、ごめん」

そう囁いて耳にキスをする。
 敦志は恥ずかしいのか、くすぐったいのか振り切るように首を横に振り、それをどうにかしようと握りこんだ松島の手を掴み


「べっ…つに!いいよっ」
「えーつらいでしょ?」
「けど…いいっ…」
「変なの、いつもなら悦んで」
「悦んでないっ」

 絶頂が近いことのせいなのか、松島の言葉に憤ってのせいなのか、頬を心なしか赤くして声を荒げる敦志。掴んだ松島の手を陰茎から外そうとする


「どうしたの?そんな慌てて」
「いいから離せって!」

 あくまでも優しく耳にくちづけてくる松島に敦志は余裕を失い声を荒げて叫んだ。
 その様子に松島がうっすら口元に笑みを浮かべ、目も細めたのを敦志は気付かなかった


「中西ちゃん、もしかして…出そう?」 

敦志を背後から抱きしめている松島にはその表情は見えなかったが頬が耳が心なしか赤くなったように見えた。
 羞恥のせいか応えようとしない敦志を気にしないことにして松島は手の中の陰茎に意識を戻した。射精も未だのため、陰茎は我慢汁で濡れていた。軽く扱いてやりヒクヒクと喘いでいる尿道口に触れた


「な、あっ!?やめろっ…もれっるっ」

 敦志の必死の訴えの後、松島はその背後で、ふーんという表情で目を細めた。


「やっぱおしっこ出そうなんじゃん」

 少し呆れを含んだ声色で最初から素直に言ってればいいのにね、と続けて空いていた手で無防備な脇腹を優しく撫で上げた。


「なぁっ、ぁ!ん…」

 完全に油断していた場所だったためか、尿意を我慢している状況のせいか、敦志はいつも以上に大きく喘ぎ声を上げてしまった。


「かわいー、今のもっと聞きたい」

 自らの喘ぎ声も恥かしかったがそれ以上に松島が発した言葉が敦志の目を大きく見開かせた。
 まさか、と唇が戦慄く間に敦志は再び押し倒されて覆いかぶさってきた松島を見上げるはめになった


 「…何回ヤる気なんですか」

 いつになく強い口調で呟き、敦志は松島を睨んだ。だが度重なる行為で紅潮したままの頬では威力もなかったらしい、怯む素振りもなく松島はにっこり笑みを作った。


「ガチガチに勃ってる中西ちゃんに言われたくないな~」
「さ、さっきからずっと触るからっ」
「はいはい、でもさこんな勃つくらいだし、中西ちゃんも俺に触られんの嫌じゃないでしょ?」
「~~っっ」

 羞恥に敦志の頬が染まった気がした。声にならない唸り声の遠慮なく松島に拳を叩きつけた


「あはは、図星?」
「ちがうっいい加減に…」
「…でも、コレはどうにかしてあげたいな~?」

 クスクス笑いながら再び松島は軽く陰茎を握った。
限界の近い敦志には、拒否感よりもそこを弄られた先にある解放に期待し、息が心拍数が乱れてしまう。
 敦志の抵抗が緩んだことに不適に目を細めた松島は不意にそのまま胸元に顔を埋めた。
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