《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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36.ふきのとう

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「ほなまたな、レンちゃん。
兄さんも。
お弁当もありがとう」
「うん、トビ君も気をつけてね」

 翌日の昼間、小屋の前で見送るレンの頭をトビがわしゃわしゃとなでる。
朝から俺以外のメルの為に弁当を作ったり、俺がいながら少し寂しそうな顔をしているのがいじらしい。
ジロリと睨んだ俺に苦笑しながらトビがウォンに跨がっていなくなった。

「はー、これで薬の驚異が去ったー」

 レンが心底安心したように息を吐く。
あれ、さっきまでの寂しそうな顔は幻だったか?!

 そんなにあの薬はヤバい代物なのか?
まぁ飲んでる時の小動物的反応を考えればそんなになんだろうな。
しかし気を抜いた顔も可愛いな。
頭の匂い嗅いだら怒るだろうか。

それにしても····。

「あの薬、ファルにいくつか手渡していたが、知っているか?」

 中に入っていつもの緑色のお茶をすすりながら聞いてみる。
瞬間、俺の膝に乗るレンがコップを手にしたまま固まった。

「う、嘘····」
「レンが眠っている時に手渡していたぞ?」
「そんな····トビ君、何てことして····」

 真っ青な顔のレンも可愛いな。
怯えてるところがこれまた小動物的で、その細い首に噛みつきたくなる。

「だから勝手な事をしたらこれを飲ませるぞ」
「ファ!
ファル····」

 いつも通りに突然現れたファルに珍しくビクッと膝から飛び上がるほど驚いたレンも可愛らしいな。

 形の良い細長い3本の指の間には、黒い丸薬を2個見せびらかすように挟んでいる。
レンはそれを呆然と眺める。

「レン、俺達のせいなのはわかっているが、本当に体がきつい時にはちゃんと飲むんだぞ?」
「グランさんまで····」

 追い打ちをかけるような俺の言葉にカップを取り落としそうになる。
危ないのでそっと受け取っておく。

 あ、涙目になってる。
舐め取りたい。

「ところでレンの好きな山菜が出てきていたが、取りに行くか?」
「ふああ!
そっか、そろそろ雪解けだもんね。
行く!
ふきのとう!
お土産の手袋しなくちゃ!」

 あ、可愛らしい珍妙な叫び声と一緒に涙が引っ込んだ。
ちょろいぞ、レン。

 レンは団長の土産物の中から手袋を出してきた。
····無駄に可愛らしさをアピールする熊の刺繍入りだ。
今度また獅子の刺繍をした何かを贈らねば。

「グランさんも行こう」
「もちろんだ。
レンの好きな物が何か色々教えてくれ」

 ファルがレンを抱え上げ、俺達はファルの魔法で転移した。

「ファル、自分で歩くよ」
「自分を過大評価するな。
そう言って去年はそこの坂を華麗に転がっただろう」
「····レン、そのまま抱かれていろ。
あの緑の蕾みたいなのがそうか?」
「うん、ふきのとう!」

 ふきのとう····確か緑竜の牙じゃなかったか?
レンが適当に名付けたのか?

「レン、あれには毒があったはずだぞ?」
「そうだよ。
そのまま食べるとお腹痛くなるんじゃなかったかな。
根っこは特に毒性が強いから、新芽だけ取ってね」
「····本当に食うのか?」
「熱を加えたら毒はなくなるよ!
独特の苦味がたまらないの!
もちろん食べる!」
「取ってくるから、そこにいろ」
「え、山菜は自分で取らなきゃ山菜じゃないんだよ!
ファル降りる!」

 何だ、その山菜ルール。
レンがファルの腕の中でジタバタしているが、離す気は無さそうだ。

「そこはお前には急だからグランに任せろ。
お前はあっちの斜面に見えなくもない所のをウォンと取れば良い」
「あ、あっちもいっぱい!」

 切り替え早いな。
やっと地面に降ろされて走り出すのをウォンが追いかける。
うん、時々雪に足を取られている、そんな後ろ姿も微笑ましいぞ。

 俺は雪をかき分けレンが言うふきのとうの芽を取りながら更にその下を見やる。
幼い人属の体からすればこの斜面はそれなりに急····なのか?
獣人の子供なら多分大丈夫なんだが····本当ににレンはここを転がり落ちたのか····。

 まだ距離はあるがここを下ればワルシャマリ国とを隔てる川が流れ、この川を南に抜ければ海にも合流する。

 レンよ、こんな所で転がるとかどんだけうっかりさんなんだ。
俺は1人ひっそりとレンの運動能力を心配した。
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