《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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59.謁見1~ペネドゥルside

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「それで、先に第1王弟に挨拶した理由は何だ」

 ビビット商会副会長のトビドニア=エトランの挨拶もそこそこに問いかける。
陛下が休眠前に何度か顔を合わせた事があったが、話すのはこれが初めてだ。

 絨毯の上に商品を陳列し左膝を立てて座り右手を胸に添えて我が国の礼の姿勢を取る、焦茶短髪に青灰色の細目の虎族で商人らしく笑顔を崩さない。
男の後ろには従者だろう熊族と兎族の男達が同じように礼の姿勢を取り、こちらは顔を伏せている。

 しかし商品が随分少ない。
貴金属、化粧品、反物、茶葉か。
恐らく品質的には1番の売りになる物だろうが、私の知り得る限り、いつもならこの20倍は並ぶ。

「たまたま他国でお会いして、目的地も登城の日にちもほぼ同じであった為にご一緒、というよりは半ば強引に転移する事になりましてん。
正規のルートでお伺いするとお断りしてましたんやけど、気付いたらこちらに。
お陰で同行するはずやったうちの商人達もお持ちする商品も大半が置いてけぼりになりましてん。
今は至急でこちら国に運ぶよう手配しております」

 困ったように細い目を更に細くして顔を作っているが、商人ごときが随分とふてぶてしい事だ。

「貴様、不敬だぞ!」

 後ろに控えていたラジェットが前に出て長剣を真正面から商人の首筋に添わせる。

「お気に障ったんならすんまへん。
せやけどこちらも商売。
世界各国を相手に信用を持って取引しております。
失礼を承知で申し上げますけど、こちらの準備を無視したザガド様の今回の行動は目に余る物がありますのや。
特に貴国においては鎖国の諸事情もあって何度も出入りができまへん。
今回お持ちした商品は厳選した中でも一級品ではありますが、あらかじめ許可頂いたこの後の城下での販売も含めて今日の為に仕入れた商品分までは補えまへんやろう。
国王陛下夫妻との謁見もできひんとお伺いしておりますし、今こちらに向かってる残りの商品搬入の許可とザガド様も多いに興味を持たれた花茶の原料をペネドゥル様よりお持ちするよう指定された真意をお聞かせ願いたいところです」
「貴様、分をわきまえよ!
商人ならば言われた商品を売るだけすれば良いのだ!
余計な詮索など、やはり商人とは下賤だな!」

 ラジェットが剣に力を込める。
首筋に赤い滴が出来る。
しかしこの男、全く動じんな。

「下賤であろうと私は各国の王族方とも馴染みの商会の副会長です。
信念と信用を第一に考えて商売し、せやからこそ極秘に扱える商品もあるとお考え頂けますか。
今回の原料があるという事は、ペネドゥル様がお求めになる情報や別の商品も手に入る可能性があると考えております。
せやけどここに商会の権限全てを持つ会長がおらんのは副会長の私がどうなるかを見てるという事であり、裏を返せば取引相手に不足がないかを替えの利く私で見定めてはりますのや。
下賤であっても経済の一端を担う商人なれば、信念なく貴賤な各国の王族方との取り引きなどできましょうか。
また立場は揺るぎなくそちら様が上ですけど、信用のある無しはこちらも求める事やとお考え頂きたい」

 真っ直ぐに私を射ぬく目も、言葉にも信がこもっている。

「····このっ····」
「下がれ、ラジェット」
「しかし!」
「良い、下がれ」

 気迫をもって制する私の言葉に一瞬気後れしたラジェットを後ろに下がらせ、副会長に近づく。

「たかだか10年にも満たぬビビット商会が何故古参の商会を押し退けて各国の王族お抱えになったか垣間見た。
しかし此度の我が臣下の非礼は詫びぬ。
互いに非礼を働いたとして水に流す」
「承りました」

 私が差し出したハンカチを受け取り、赤い滴を拭って男が立ち上がる。

「ここの商品は全て買い取る。
ビビット商会の城下への搬入も許可してやる。
後でラスイードというこの近衛と同じような顔をした者を寄越す故、これら商品の説明と今後の城下での商売等はその者と直に相談せよ。
それよりもお前の申した花茶について詳しく聞きたい。
そこの男達と共に応接室へ行く。
ついて参れ」

 従僕達に目配せして応接室へと入り、机を挟んで椅子に腰掛ける。
ラジェットと熊族、兎族はそれぞれの主の後ろに控えた。
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