《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
62 / 210

62.たくさんの死

しおりを挟む
 目を開けると真っ暗な闇の中だった。

(ここは····夢、か?)

 声を出そうとして、出せない事に気づく。
俺の体はどこにもなく意識のみがただそこにあった。

 と、何の前触れもなく辺り一面に何十ものほのかな光を放つ球体が出現する。

 俺はその球体に近づく。
といっても体はなかったが。
頭2つ分くらいの大きさの球体の1つを覗き見て、絶句した。

 今、まさに産まれたばかりの血だらけの赤子が何者かの手によって取り上げられた。
誰かはわからないが、大人のふくよかだけど皺の入った手だ。
その手が何かを確認するように赤子の股を広げたかと思うとボールを投げつけるかのように床に叩きつけ、赤子は絶命した。

(ぐっ····)

 体はないが胃がせり上がるように吐き気が込み上げた気がした。
もう1度覗き見ると絶命したばかりの赤子には本来必ずあるはずの雄がない。

 他の球体も覗き見たが、全て何者かによって何者かが殺されている。
その方法は様々だが、全てが惨たらしい。
そして登場する者は皆人属で、殺されるのは若く、大体は子供で一様にフィルメのような外見をした者ばかりだ。
子供は判別がつかないが、ある程度の成長を遂げていた者は胸に膨らみがあり、いつかの夜に触れたレンの胸を思わず想像してしまう。

(もしかして全て雌、なのか?
それよりも何故だ?!
何故こんな球体が····)

 そう思っていると今度は不意に球体が消え、再び暗闇に支配された。

(何だ?!)

 妙な焦燥感を覚えた瞬間、目の前でゴウッと火柱が上がる。

 暗闇の中で真っ赤に燃えるその中心に、見たことがない衣を着た白くて長い髪の人属が俯き、素足に手は後ろ手に柱にくくりつけられていた。
襟元は衣が幾重か重なり、服の袖は長く長方形で熱風に煽られて旗のように舞っている。
ザガドが持っていたような花の形をした飾り紐が腰に揺れていて、凄惨な光景なのにそれに惹かれて見入ってしまう。
身体中にある切り傷や刺し傷は徐々に焼け爛れてわからなくなっていく。

 ふと顔を上げた。
平素なら間違いなく美しく、左目は泣き黒子がある少し垂れ目で色気が醸し出される面立ちに色の薄い、けれど血のような独特な赤い目····。

(····俺はこの目を知っている?)

『今すぐこのように酷い仕打ちはお止めください!
私と違い貴方様は朔月さくげつ様と血の繋がった親子なのですよ!』
『母上、何故なにゆえですか。
私はあなたをこんな風に殺したかったわけではありませぬ。
女の身でありながら一族を興し、深紫の衣までも賜りながら、何故····。
今上きんじょうに申し開きし妃として仕えさえすれば、これまでの忠義を鑑みると····』

 青年にしてはまだ少し高い、制止する声と震える声が後ろから聞こえ、そちらを見やる。
黒目黒髪でレンのような乳白色の肌をした2人の人属の青年がいた。
1人は後ろ手に上半身を縄で縛られ必死にもう1人に詰め寄っている。
詰め寄られる青年は歯がゆそうな、泣きそうな、感情を持て余した様子で立っていた。

 2人の話す言葉は聞いた事がない言葉だった。
しかしどうしてかわからないが、何を話しているのかはわかる。

 パチリと火がはぜる音がして白く、色の薄い人属へと視線を戻すとふわりと優しい笑みを浮かべていた。

『『母上!』』

 2人の青年が駆け寄ろうとしたところでけたたましい轟音を轟かせて落雷が落ちた。
激しい光に包まれた瞬間、その光景は闇に消えた。

(····俺はどうしてあの人属を知っている気がするんだ····)

 頭の中に白くて可愛らしい泣き黒子のある垂れ目の顔がいくつも浮かぶ。
笑顔、困惑顔、少しいじけた顔。
そのどれもが幼く痩せているが、泣き黒子のせいかどこか色気を感じさせる。

(そうだ、夢で何度か見た子だ)

 少しずつ成長していくその顔に愛しさが込み上げる。
しかし最後に浮かんだのは涙を流し、絶望に支配され、何かを叫びながら上から覗き込んでいる成長した顔だった。

(一体何なんだ?!
チ·カ·ユ·キ?
タ·カ·チ·カ?)

 口の動きを読むが、チカユキ、タカチカとしきりに泣き叫んでいる事以外は訳が分からない。
けれどその絶望した泣き顔に体が無いながらも心臓を鷲掴みされたような感覚に支配された。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...