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63.レンの死
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しばらく暗闇に支配されていたが、突然に景色が変わった。
大きな建物の路地裏か?
道が硬くて黒い石のようなもので舗装されているが、どこの国だろうか。
こんなに綺麗に整備されている街並みは見たことがない。
つい物珍しさに支配されてキョロキョロと見回してしまう。
と、不意に求めてやまない愛しい声が近くで聞こえた。
『大丈夫····もう完成してる』
物珍しさに支配されていた意識は当然のようにその声にもっていかれる。
でも、レンより少し低い気がする?
言葉はまた知らないものだったが、やはり意味はわかる。
すると場面が変わって目の前には今のレンがもう少し大人になった姿で男に抱き締められるようにして立つ光景が目に入った。
レンの髪はギリギリ肩につかない長さになっていて、色気が今とは全然違う。
男は後ろ姿しか見えないが、人属の標準くらいの身長で黒髪だ。
(ちょっと待て!
誰だそいつ?!)
男の肩越しからのぞき見ると、レンが今着ている服は先ほどの物とは違って脱ぎ着しやすそうだが見慣れない形だ。
レースをあしらった詰襟で袖の無い上服と、どこかの国の式典なんかで履くような、けれどそれよりもっと軽い感じの薄手で布を巻いたような踝丈のスカートだ。
全体的に黒っぽい色合いで、それがレンの色気を更に引き出している。
レンは男の背中に手を回し、気だるそうにはぁっと息を吐く。
いや、何で抱きついてるんだ?!
『だけど····このまま、では····あの子は治験、の対象····な、らな····薬を作った、から、今度は私が邪魔、にな、る。
何、より今のあの子の状態で、は治験の開始にすら、このま、までは間に合わない。
だ、から、これで····な、くな····』
不自然に途切れさせながら言い終わると、ゴホッとむせて血を····吐いた?!
カラン、と金属音と共に足元に血が付いたナイフが落ちる。
『も、行け』
ビクリと男の肩が震えて体が離れ、2人はしばらく見つめ合う。
そして男が、男がレンに口付けやがった!
そのまま男はレンの向こうに走り去る。
障害物が無くなって分かったのは、服が体の線を際立たせていて胸はやはり膨らみがある事。
それから····レンが腹を刺された事。
ふらりとレンが後ろに倒れる。
しかし今度は違う男が走り寄って地面に叩きつけられる前に体を前方から抱えた。
レンの体を抱えて座り込んだ男の顔はまたしても死角になっていて見えない。
金髪で先ほどの男と背格好は似ている。
スカートが太股までめくれて黒い帯のようなものでふくらはぎまで巻かれた同色のサンダルを履いたレンの素足が艶かしいが、色気を纏う顔も見えなくしている。
左のふくらはぎに酷く目立つ古傷が見えた。
『下手くそが、殺すなら苦痛が長引かないように殺せよ』
苦々しそうに吐き捨てる低い声しか分からない。
『っは、ぁ····あいつは私達と、ち、がう。
迷いが、出る、の、は、しかた、ない。
何で、来た?』
ゴホッと苦しげに咳き込んで血を吐き出す。
血で窒息しないように抱き締めて上体を起こしている。
ヤバい、ヤバい、ヤバい!
レンが死んでしまう!
早く助けてくれ!
治癒魔法を!
早く!
『こうなると思った。
後始末も必要だろう』
『····ははっ、予想、通り、だ、な。
わ、るい····あと····治験、も····たの、む』
男が頷いて、おい、お前も口付けるのかよ!
レンをゆっくりと地面に寝かせて····待て、何でさっきのそのナイフをレンに向ける?!
おい、やめろ!
構えるな!
やめてくれ!
····トス。
ビクリとレンの体がビクリと震え、男がゆっくりと離れる。
レンの左胸に刺さったナイフは向きからいって心臓の動きを一瞬で止めただろう。
苦痛は長引かず、一瞬で殺され····。
(嘘だ····嘘だ!嘘だ!!)
ナイフを抜き取った男はさっきの男と同じ方向に歩いていなくなった。
レンの周りは血溜まりができている。
レンはピクリとも動かなくなった。
(レン!!レン!!レン!!)
何度も名前を呼ぶが、声は相変わらず出ない。
(あ、あああああああ!
殺してやる!
俺の番を殺した奴ら全員殺す!)
どれだけの間、殺意に囚われていたのか。
再び辺りは闇に支配された。
「これまでの自分の死に様をどれだけ見ても、僕の心にさざ波1つ起きない。
困っちゃう」
可愛らしい、馴染んだ声が静かに聞こえた。
大きな建物の路地裏か?
道が硬くて黒い石のようなもので舗装されているが、どこの国だろうか。
こんなに綺麗に整備されている街並みは見たことがない。
つい物珍しさに支配されてキョロキョロと見回してしまう。
と、不意に求めてやまない愛しい声が近くで聞こえた。
『大丈夫····もう完成してる』
物珍しさに支配されていた意識は当然のようにその声にもっていかれる。
でも、レンより少し低い気がする?
言葉はまた知らないものだったが、やはり意味はわかる。
すると場面が変わって目の前には今のレンがもう少し大人になった姿で男に抱き締められるようにして立つ光景が目に入った。
レンの髪はギリギリ肩につかない長さになっていて、色気が今とは全然違う。
男は後ろ姿しか見えないが、人属の標準くらいの身長で黒髪だ。
(ちょっと待て!
誰だそいつ?!)
男の肩越しからのぞき見ると、レンが今着ている服は先ほどの物とは違って脱ぎ着しやすそうだが見慣れない形だ。
レースをあしらった詰襟で袖の無い上服と、どこかの国の式典なんかで履くような、けれどそれよりもっと軽い感じの薄手で布を巻いたような踝丈のスカートだ。
全体的に黒っぽい色合いで、それがレンの色気を更に引き出している。
レンは男の背中に手を回し、気だるそうにはぁっと息を吐く。
いや、何で抱きついてるんだ?!
『だけど····このまま、では····あの子は治験、の対象····な、らな····薬を作った、から、今度は私が邪魔、にな、る。
何、より今のあの子の状態で、は治験の開始にすら、このま、までは間に合わない。
だ、から、これで····な、くな····』
不自然に途切れさせながら言い終わると、ゴホッとむせて血を····吐いた?!
カラン、と金属音と共に足元に血が付いたナイフが落ちる。
『も、行け』
ビクリと男の肩が震えて体が離れ、2人はしばらく見つめ合う。
そして男が、男がレンに口付けやがった!
そのまま男はレンの向こうに走り去る。
障害物が無くなって分かったのは、服が体の線を際立たせていて胸はやはり膨らみがある事。
それから····レンが腹を刺された事。
ふらりとレンが後ろに倒れる。
しかし今度は違う男が走り寄って地面に叩きつけられる前に体を前方から抱えた。
レンの体を抱えて座り込んだ男の顔はまたしても死角になっていて見えない。
金髪で先ほどの男と背格好は似ている。
スカートが太股までめくれて黒い帯のようなものでふくらはぎまで巻かれた同色のサンダルを履いたレンの素足が艶かしいが、色気を纏う顔も見えなくしている。
左のふくらはぎに酷く目立つ古傷が見えた。
『下手くそが、殺すなら苦痛が長引かないように殺せよ』
苦々しそうに吐き捨てる低い声しか分からない。
『っは、ぁ····あいつは私達と、ち、がう。
迷いが、出る、の、は、しかた、ない。
何で、来た?』
ゴホッと苦しげに咳き込んで血を吐き出す。
血で窒息しないように抱き締めて上体を起こしている。
ヤバい、ヤバい、ヤバい!
レンが死んでしまう!
早く助けてくれ!
治癒魔法を!
早く!
『こうなると思った。
後始末も必要だろう』
『····ははっ、予想、通り、だ、な。
わ、るい····あと····治験、も····たの、む』
男が頷いて、おい、お前も口付けるのかよ!
レンをゆっくりと地面に寝かせて····待て、何でさっきのそのナイフをレンに向ける?!
おい、やめろ!
構えるな!
やめてくれ!
····トス。
ビクリとレンの体がビクリと震え、男がゆっくりと離れる。
レンの左胸に刺さったナイフは向きからいって心臓の動きを一瞬で止めただろう。
苦痛は長引かず、一瞬で殺され····。
(嘘だ····嘘だ!嘘だ!!)
ナイフを抜き取った男はさっきの男と同じ方向に歩いていなくなった。
レンの周りは血溜まりができている。
レンはピクリとも動かなくなった。
(レン!!レン!!レン!!)
何度も名前を呼ぶが、声は相変わらず出ない。
(あ、あああああああ!
殺してやる!
俺の番を殺した奴ら全員殺す!)
どれだけの間、殺意に囚われていたのか。
再び辺りは闇に支配された。
「これまでの自分の死に様をどれだけ見ても、僕の心にさざ波1つ起きない。
困っちゃう」
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