《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
63 / 210

63.レンの死

しおりを挟む
 しばらく暗闇に支配されていたが、突然に景色が変わった。

 大きな建物の路地裏か?

 道が硬くて黒い石のようなもので舗装されているが、どこの国だろうか。
こんなに綺麗に整備されている街並みは見たことがない。
つい物珍しさに支配されてキョロキョロと見回してしまう。

 と、不意に求めてやまない愛しい声が近くで聞こえた。

『大丈夫····もう完成してる』

 物珍しさに支配されていた意識は当然のようにその声にもっていかれる。
でも、レンより少し低い気がする?

 言葉はまた知らないものだったが、やはり意味はわかる。

 すると場面が変わって目の前には今のレンがもう少し大人になった姿で男に抱き締められるようにして立つ光景が目に入った。
レンの髪はギリギリ肩につかない長さになっていて、色気が今とは全然違う。

 男は後ろ姿しか見えないが、人属の標準くらいの身長で黒髪だ。

(ちょっと待て!
誰だそいつ?!)

 男の肩越しからのぞき見ると、レンが今着ている服は先ほどの物とは違って脱ぎ着しやすそうだが見慣れない形だ。
レースをあしらった詰襟で袖の無い上服と、どこかの国の式典なんかで履くような、けれどそれよりもっと軽い感じの薄手で布を巻いたような踝丈のスカートだ。
全体的に黒っぽい色合いで、それがレンの色気を更に引き出している。

 レンは男の背中に手を回し、気だるそうにはぁっと息を吐く。

 いや、何で抱きついてるんだ?!

『だけど····このまま、では····あの子は治験、の対象····な、らな····薬を作った、から、今度は私が邪魔、にな、る。
何、より今のあの子の状態で、は治験の開始にすら、このま、までは間に合わない。
だ、から、これで····な、くな····』

 不自然に途切れさせながら言い終わると、ゴホッとむせて血を····吐いた?!

 カラン、と金属音と共に足元に血が付いたナイフが落ちる。

『も、行け』

 ビクリと男の肩が震えて体が離れ、2人はしばらく見つめ合う。
そして男が、男がレンに口付けやがった!
そのまま男はレンの向こうに走り去る。

 障害物が無くなって分かったのは、服が体の線を際立たせていて胸はやはり膨らみがある事。
それから····レンが腹を刺された事。

 ふらりとレンが後ろに倒れる。
しかし今度は違う男が走り寄って地面に叩きつけられる前に体を前方から抱えた。

 レンの体を抱えて座り込んだ男の顔はまたしても死角になっていて見えない。
金髪で先ほどの男と背格好は似ている。
スカートが太股までめくれて黒い帯のようなものでふくらはぎまで巻かれた同色のサンダルを履いたレンの素足が艶かしいが、色気を纏う顔も見えなくしている。
左のふくらはぎに酷く目立つ古傷が見えた。

『下手くそが、殺すなら苦痛が長引かないように殺せよ』

 苦々しそうに吐き捨てる低い声しか分からない。

『っは、ぁ····あいつは私達と、ち、がう。
迷いが、出る、の、は、しかた、ない。
何で、来た?』

 ゴホッと苦しげに咳き込んで血を吐き出す。
血で窒息しないように抱き締めて上体を起こしている。

 ヤバい、ヤバい、ヤバい!
レンが死んでしまう!
早く助けてくれ!
治癒魔法を!
早く!

『こうなると思った。
後始末も必要だろう』
『····ははっ、予想、通り、だ、な。
わ、るい····あと····治験、も····たの、む』

 男が頷いて、おい、お前も口付けるのかよ!
レンをゆっくりと地面に寝かせて····待て、何でさっきのそのナイフをレンに向ける?!
おい、やめろ!
構えるな!
やめてくれ!

 ····トス。

 ビクリとレンの体がビクリと震え、男がゆっくりと離れる。
レンの左胸に刺さったナイフは向きからいって心臓の動きを一瞬で止めただろう。
苦痛は長引かず、一瞬で殺され····。

(嘘だ····嘘だ!嘘だ!!)

 ナイフを抜き取った男はさっきの男と同じ方向に歩いていなくなった。
レンの周りは血溜まりができている。
レンはピクリとも動かなくなった。

(レン!!レン!!レン!!)

 何度も名前を呼ぶが、声は相変わらず出ない。

(あ、あああああああ!
殺してやる!
俺の番を殺した奴ら全員殺す!)

 どれだけの間、殺意に囚われていたのか。
再び辺りは闇に支配された。

「これまでの自分の死に様をどれだけ見ても、僕の心にさざ波1つ起きない。
困っちゃう」

 可愛らしい、馴染んだ声が静かに聞こえた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

処理中です...