《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
67 / 210

67.気の枯渇

しおりを挟む
「レンに獣気を渡しに来た」

 トビに目的を告げて人化すると、トビがため息を吐きながら奥の部屋に入ってすぐに戻ってきた。

「俺のやけど、ひとまずこれ着て」

 投げ渡されたスラックスとシャツを無言で身につけ、薄手の上掛けをはぐって眠るレンを抱き抱える。
呼吸は荒いが汗はかいている。
随分と高い体温を散らすように風をおこしてやると、幾分体に入っていた力が抜けた。

 少し前にゼノリア神からレンについて幾つかの話を聞かされた。
中でも命に関わる事を知ってのんびりなんてしていられるはずがない。

 今のレンは体内の気(獣人ならば獣気)が枯渇しかけているのをいつも通り魔力で無理矢理に補助しようとしたらしい。
しかし人属の気は血に多く宿って体を循環している為、ここ数ヶ月で物理的に血を多く失ったレンは体内の気がとにかく少なくなってしまった。

 そういえば魔石の作り方を聞いた時にもそんな話を聞いたが、まさかそれが元で可愛い番を危険にさらすなんて考えもしなかった。
そのせいで魔力の滞留が小さな体の循環しきれなくなった所から起きて魔力が暴れて内側から傷付け、むしろあるべき気を散らせて悪循環に陥っているのだと知ってしまえば自分を責めずにはいられない。

 魔力は体内の気が呼び水や潤滑油の役割をしてこそ体内を滑らかに巡るので気が少なくなるにつれ滞りが起き、完全に枯渇すれば循環しなくなる。
その上全身の滞りが栓となって過剰に溜まった魔力を排出もできなくなってしまい、今度は体外へ出ようと暴れ出すせいで本人の手に負えなくなるらしい。

 魔力で気の役割は補えるが、それは体内に気があるからこそできるのであって、気が枯渇しそうな時は他者から与えて貰い体内の気を満たしつつ暴れる魔力を落ち着けてやらなければならない。
ただし気の分け合いは基本的に番同士でなければできないという事だった。

 今までに何度かそんな状態になったらしいが魔の森にファルがいて常に竜気を浴びていたから命の危機に陥るほどにはならずに暮らしていけたらしい。
あのクソ不味····白竜直伝の薬を定期摂取させていた事も良かったみたいだ。
本人は本気で逃げていたようだが。

 正直番の獣気や竜気にそんな役割があったなんて初めて知った。
だからこの国に来てからレンが魔力暴走を起こしそうになったのだと言われてしまえば納得してしまう。
本能的に少しでも体内の過剰な魔力を外に出そうとして起こすようだ。
幼い子供ほど獣気を上手く扱えない話や魔力の多い子供が魔力を暴走させる話はたまに聞くが、この事が関係しているのだろう。

 そしてこの事は絶対口外するなと約束させられた。
番至上主義に拍車をかけそうな事は望まないらしい。
王子だった俺も実はそうした事で苦い過去を持つ。
もちろん即同意した。

「獣気を?
って事は何か聞いたん?」

 誰かに、とは聞かないのか。
トビは気と魔力の関連性を知っていたのか?

「ああ。
だが今は言えない」
「····なるほどな」

 そう言って何も追求せずに奥の部屋に行こうとする。

「トビ」

 ドアに手を掛けたところで呼び止めるとそのまま顔だけ振り向く。

「····お前は知っているのか?」

 静かに問うと苦笑された。

「兄さんにそういう顔さすんはレンちゃんが望まへんのとちゃう。
俺も全部は知らへん。
せやけどレンちゃんはただのほほんと生きてきてないんくらいは察してるよ。
兄さんが白い人外に会ったんも、何かを聞いたんやろうなってのもな」

 今度は体ごと振り返る。
白い人外がゼノリア神だとは知らないのだろうか。

「何かに苦しんでるんも絶望してんのもレンちゃんや。
兄さんはそれに引きずられてそんな顔せんと笑っててあげてや。
能天気にちょっと変態入ってるいつもの兄さんでちょうど良いし、そういうところにレンちゃんは安心するんちゃうの」
「おい、変態は余計だ。
だが····まぁ、ありがとう」

 素直に礼は伝える。
トビは手をヒラヒラと振りながら今度こそ出て行った。

 獣気を少しずつ小さな体に流しながら、少なからずあった気の循環をサポートしてやる。
そして気づく。

 胸と腹、あの夢で刺された場所には気が循環していかない。
無理にしようとするとそこから気が微量に漏れ出て滞りが広がりそうになる。

(こんな事あり得るのか)

 聞いてなかった現象に驚く。
仕方なくそこは避けて循環させていけば、広がった滞りは狭くなった。

 しばらく続けていると、レンの体から魔力の滞留が消えていき、呼吸が落ち着いてきたのでほっとする。

「レン、何があっても俺はお前の味方でいる。
自分を赦せないなら、俺が赦し続ける。
だから····自分を追い込んで傷つけるのも絶望して全てを拒絶するのもほどほどにしてくれ」

 聞いてはいないからこそ口にできる。
それくらい、あの夢で見た数多の死に様は壮絶だった。
そしてゼノリア神からちょっとだけだよぉ、なんて軽い口調で教えられたレン自身の過去は····悲惨でしかなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...