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66.世話の焼ける家族~トビドニアside
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「レンが全く目を覚まさん」
通された客室で待ってたら予想通りに慌てて駆け込む様子に思わず苦笑いしてまう。
会ったのは魔の森と今回で2回だけやのに、この2人の心を掴むやなんてレンちゃんの人たらしめ。
「そうなってると思てたわ。
とりあえずレンちゃんそこ寝かして」
血の気の無い顔色と人属にしてはまだまだ高めの熱にポーカーフェイスを崩しそうや。
まぁ汗はかき始めたみたいやから、熱に関してはこのまま寝かしてたら引いてくやろうけど、問題は気枯れやな。
念の為首から下げてるプレートに昔レンカちゃんから教わった鑑定魔法をかければ予想通り重度の貧血に気枯れの文字が浮き上がる。
それに深眠中かぁ····異能を使用してんな。
本人は異能ちゃう言うてたけど、詳しくも話さんから異能って事にしてる。
にしても最悪あの時みたいにレンカちゃんが出てきそうなんが怖いわ。
それにしてもこの弟弟子、いや、妹弟子はどんだけ自分を大事にせえへんのや。
ちょっとイラッとしてまうわ。
起きたら口に師匠直伝の薬突っ込んだろか。
「眠ってるだけみたいやな。
汗も出てるから無理させへんようにしてこのまま寝かしてたら熱も下がってくるし、そのうち起きるわ」
嘘やない。
「「そう(です)か」」
団長と副団長がほっと息を吐く。
「それよりあの側近の竜人はどないしたん?
てっきり一緒に入ってきて寝てるレンちゃんに悪態くらい吐いてくる思てんけど」
「あの者なら途中で双子の兄に引き留められた」
「にしてもあちらが病気にしたくせにうちのレンに悪態を吐くなど許せません!
その時がきたら容赦しませんからね」
どうやら道中に何かあったみたいやな。
予想できるけど。
にしても双子の兄ねぇ。
確かボンクラの元側近やったな。
「まぁ今はレンちゃんも安定してるみたいやし、こっちで看病するんは暗黙の了解やから不安要素が減って良かったわ。
それより兄さんは大人しくレンちゃん渡せたん?」
そういやこの2人に敬語に戻すん忘れてたなぁ。
ま、どさくさ紛れにもうえっか。
「あぁ。
多分拳から血が出てたと思うが大人しくしていた」
団長の言葉にほっとするわ。
弱りきってる番を目の前に人属見下す乱暴な男が連れてったら暴れかねへんからな。
「そら良かったわ。
ほな予定通り俺はレンちゃんの様子見てるから、そっちはそっちでお仕事してや」
言いながら魔法鞄からレンちゃんの薬箱を取り出す。
俺ら獣人からしたら脆弱どころか毎日が瀕死レベルの妹弟子の為に必ず持ち歩くようにしてる。
俺ってホンマよくできた兄弟子やわ。
『トビ、私の愛し子をいつも気にかけてくれてありがとう』
不意に白銀の髪と目をした師匠を思い出して胸が締め付けられる。
もし····もし俺がまだ魔の森で一緒に暮らしてた時に口が聞けてたら····。
アカンな。
どうしても師匠への気持ちの整理がまだつかへん。
あれから5年も経ったのに。
ついたところで師匠とはもう会えへんのに。
それに····。
「師匠の愛し子やからやないねん」
つい口をついてまう。
いつからかわからん。
レンちゃんが俺を庇って大怪我したあの時からなんか、レンカちゃんが出てきて俺の口がきけるように治した時からなんか····。
いや、ちゃうか。
レンちゃんが爺さんに連れられて森に来たんが確か5才で、それにしては全然言葉も分かってなくて魔力が師匠に劣らんくらいあるのに生活魔法も全然知らんみたいやから魔法なんか何も使えてなくて。
ホンマ最初から世話焼ける子すぎて、いっつもニコニコ笑って本心なんかちっとも見せへんくせに、俺が師匠と爺さん見て胸痛いなー思ってる時には抱っこせがんでギューギュー抱きついてくるもんやからすっかり絆されてた。
最初はガチウザイ時もあったし、顔にも出してたからわかってたはずやのに、それでもいっつも笑ってて、それが余計腹立って。
せやけどある時たまたまレンちゃんが魘されて夜中に起きて声殺して泣いてたん見て、それがかなりの頻度であるって気づいた。
『····シイカ』
小さな嗚咽の合間に洩れる言葉は何度も聞いてる内に誰かの名前やと解った。
思慕と郷愁と他にも多分色んな感情が混ざった声音。
濡れた黒目が今まで絶対見せんかった絶望に淀んでた。
どうしようもなく守りたい思ったんはこの頃からやった。
レンちゃんに肉欲は全く感じへんし、完全に庇護欲と手に入らん誰かを求める同志のような感情。
今はもう妹やとしか思えへん。
実の親兄弟の事なんか何とも思わへんのに、血も繋がってないあの子はそう思えてるんが不思議やけど。
このまま番の2人と家族になってもならんでも、あの小さい可愛らしい訳ありの妹は一生俺の大事な家族や。
コツン。
不意に窓に何かが当たる音を拾って外を覗く。
いつの間にか雨が激しくなってて、どんだけ物思いに耽ってたんやろかと苦笑した。
「ん?!
兄さん?!」
外にはずぶ濡れの獅子が下から2階のこの窓を見上げてる。
あの人何してんの?!
計画ではザガドと行動共にするんちゃうん?!
思わず窓を開けると雨が降りこんでくる。
獅子が後退って助走をつけて壁と窓枠を器用に使って走り込んできた。
2階いうてもこの造りはそれなりの高さがあるのに軽々と入って来たんは流石やけれども!
鬣の雨水で絨毯ベシャベシャやし!
「ちょっ、ブルブルせんといて!」
本能的なんやろうけど、体揺らせて水しぶきが飛んできた!
「ふん、レンと2人きりでいるからだ」
····いや、拗ねられても。
てか本能ちゃうんかい。
思わずため息ついてしまうわ。
「で?
兄さん何しに来たん?」
ホンマにレンちゃん絡みは世話焼けるわ。
通された客室で待ってたら予想通りに慌てて駆け込む様子に思わず苦笑いしてまう。
会ったのは魔の森と今回で2回だけやのに、この2人の心を掴むやなんてレンちゃんの人たらしめ。
「そうなってると思てたわ。
とりあえずレンちゃんそこ寝かして」
血の気の無い顔色と人属にしてはまだまだ高めの熱にポーカーフェイスを崩しそうや。
まぁ汗はかき始めたみたいやから、熱に関してはこのまま寝かしてたら引いてくやろうけど、問題は気枯れやな。
念の為首から下げてるプレートに昔レンカちゃんから教わった鑑定魔法をかければ予想通り重度の貧血に気枯れの文字が浮き上がる。
それに深眠中かぁ····異能を使用してんな。
本人は異能ちゃう言うてたけど、詳しくも話さんから異能って事にしてる。
にしても最悪あの時みたいにレンカちゃんが出てきそうなんが怖いわ。
それにしてもこの弟弟子、いや、妹弟子はどんだけ自分を大事にせえへんのや。
ちょっとイラッとしてまうわ。
起きたら口に師匠直伝の薬突っ込んだろか。
「眠ってるだけみたいやな。
汗も出てるから無理させへんようにしてこのまま寝かしてたら熱も下がってくるし、そのうち起きるわ」
嘘やない。
「「そう(です)か」」
団長と副団長がほっと息を吐く。
「それよりあの側近の竜人はどないしたん?
てっきり一緒に入ってきて寝てるレンちゃんに悪態くらい吐いてくる思てんけど」
「あの者なら途中で双子の兄に引き留められた」
「にしてもあちらが病気にしたくせにうちのレンに悪態を吐くなど許せません!
その時がきたら容赦しませんからね」
どうやら道中に何かあったみたいやな。
予想できるけど。
にしても双子の兄ねぇ。
確かボンクラの元側近やったな。
「まぁ今はレンちゃんも安定してるみたいやし、こっちで看病するんは暗黙の了解やから不安要素が減って良かったわ。
それより兄さんは大人しくレンちゃん渡せたん?」
そういやこの2人に敬語に戻すん忘れてたなぁ。
ま、どさくさ紛れにもうえっか。
「あぁ。
多分拳から血が出てたと思うが大人しくしていた」
団長の言葉にほっとするわ。
弱りきってる番を目の前に人属見下す乱暴な男が連れてったら暴れかねへんからな。
「そら良かったわ。
ほな予定通り俺はレンちゃんの様子見てるから、そっちはそっちでお仕事してや」
言いながら魔法鞄からレンちゃんの薬箱を取り出す。
俺ら獣人からしたら脆弱どころか毎日が瀕死レベルの妹弟子の為に必ず持ち歩くようにしてる。
俺ってホンマよくできた兄弟子やわ。
『トビ、私の愛し子をいつも気にかけてくれてありがとう』
不意に白銀の髪と目をした師匠を思い出して胸が締め付けられる。
もし····もし俺がまだ魔の森で一緒に暮らしてた時に口が聞けてたら····。
アカンな。
どうしても師匠への気持ちの整理がまだつかへん。
あれから5年も経ったのに。
ついたところで師匠とはもう会えへんのに。
それに····。
「師匠の愛し子やからやないねん」
つい口をついてまう。
いつからかわからん。
レンちゃんが俺を庇って大怪我したあの時からなんか、レンカちゃんが出てきて俺の口がきけるように治した時からなんか····。
いや、ちゃうか。
レンちゃんが爺さんに連れられて森に来たんが確か5才で、それにしては全然言葉も分かってなくて魔力が師匠に劣らんくらいあるのに生活魔法も全然知らんみたいやから魔法なんか何も使えてなくて。
ホンマ最初から世話焼ける子すぎて、いっつもニコニコ笑って本心なんかちっとも見せへんくせに、俺が師匠と爺さん見て胸痛いなー思ってる時には抱っこせがんでギューギュー抱きついてくるもんやからすっかり絆されてた。
最初はガチウザイ時もあったし、顔にも出してたからわかってたはずやのに、それでもいっつも笑ってて、それが余計腹立って。
せやけどある時たまたまレンちゃんが魘されて夜中に起きて声殺して泣いてたん見て、それがかなりの頻度であるって気づいた。
『····シイカ』
小さな嗚咽の合間に洩れる言葉は何度も聞いてる内に誰かの名前やと解った。
思慕と郷愁と他にも多分色んな感情が混ざった声音。
濡れた黒目が今まで絶対見せんかった絶望に淀んでた。
どうしようもなく守りたい思ったんはこの頃からやった。
レンちゃんに肉欲は全く感じへんし、完全に庇護欲と手に入らん誰かを求める同志のような感情。
今はもう妹やとしか思えへん。
実の親兄弟の事なんか何とも思わへんのに、血も繋がってないあの子はそう思えてるんが不思議やけど。
このまま番の2人と家族になってもならんでも、あの小さい可愛らしい訳ありの妹は一生俺の大事な家族や。
コツン。
不意に窓に何かが当たる音を拾って外を覗く。
いつの間にか雨が激しくなってて、どんだけ物思いに耽ってたんやろかと苦笑した。
「ん?!
兄さん?!」
外にはずぶ濡れの獅子が下から2階のこの窓を見上げてる。
あの人何してんの?!
計画ではザガドと行動共にするんちゃうん?!
思わず窓を開けると雨が降りこんでくる。
獅子が後退って助走をつけて壁と窓枠を器用に使って走り込んできた。
2階いうてもこの造りはそれなりの高さがあるのに軽々と入って来たんは流石やけれども!
鬣の雨水で絨毯ベシャベシャやし!
「ちょっ、ブルブルせんといて!」
本能的なんやろうけど、体揺らせて水しぶきが飛んできた!
「ふん、レンと2人きりでいるからだ」
····いや、拗ねられても。
てか本能ちゃうんかい。
思わずため息ついてしまうわ。
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