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92.見たことのない治療~ベルグルside
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「····ケチなの。
でも、ありがとう、レイブさん」
口を尖らせて素直じゃない顔で礼を言うが、そんなにお爺ちゃんと言いたいのか。
だがさっきより少し素がでてるような気がするのは少なからずレイブの言葉に感化されたからかもしれない。
レイブの頬も少なからず弛んでいる。
しかし照れ隠しなんだろうが、ふて腐れた小さな反抗が小動物じみてて可愛らしいな。
「俺もレイブと同じくそう思っている。
忘れてくれるなよ」
忘れられないように形の良い頭を撫でておくか。
手の平に軽く収まるくらいに小さい頭だな。
「ん、ベルグルさんもありがと。
あのね、僕····その、今はホントはお薬が飲めないの。
ていうか今は飲み物も食べ物も受け付けられなくて、モンテ君が、あ、そこの狼の人なんだけど、お部屋で起きた時にお水飲ませてくれたんだけど、その時も吐いちゃったの。
その後建物が急に崩れてきて、僕の事覆い被さって庇ってくれたから降ってきた瓦礫でモンテ君が背骨を粉砕して、そこを通る神経を傷つけちゃって。
ただの切り傷とか切断くらいの怪我だけならそんなに魔力も使わないで元に戻せるけど、粉砕した背骨とかその中に通ってる神経を再生させるのは特に魔力を消費するんだけど、所々挫滅してたから再生に更に消費しちゃって。
短距離だけど転移も2人でしたから今は魔力も少なくなってて、体の気を魔力で補えなくなってて、だから、えっと、内臓も少し弱ってる状態で、えっと、だから薬を飲み込めても消化できずに吐いて余計体力を削っちゃうと思うの」
「「「····」」」
その話のどこからつっこむべきだろうか。
俺達は全員絶句する。
とりあえずレンなりに甘えてみようと努力したのはわかったが、それはきっと状況説明で厳密には甘えてないように思う。
まぁ小さな一歩か。
にしてもまず、普通は切断したら元に戻らないんだぞ。
言ってる事が根本的に規格外だ。
グランが言ってた通り、本当にレンの治癒術は異能とは違うんだろうか。
挫滅した神経を治すとか、本来ならあり得ない。
レンの言う事が本当の事なら、間違いなくそこに転がってる狼属の少年は死んでるし、万が一助かったとしても何かしらの麻痺が残る。
それに魔力で気を補うって何だ?
人属は獣気ではなく気を体に巡らせているってのは聞いた事があるが····。
内臓が弱って何も受け付けない?
レン、お前思ったよりずっと体がヤバいんじゃないのか?!
『レンカが15年ぶりに表に出てきたのはレンだけでは対処できず、このままだと死んでしまうからだと言っていました』
グランの言葉が頭をよぎる。
俺達がレンと再会してからは少なくともレンカと呼んでいた人格は出ていない。
そもそもレンカというのに会った事もないんだが、命の危機は脱しているのか?
今更だがレンの状態にぞっとする。
「そっか。
なら薬はしまっとくね。
ちゃんと自分の状態言えてエライね。
そういうの絶対言わない子だったのに、妬けちゃうなぁ、もう!」
フードを目深に被っているから表情はわからないが、大の大人がむくれているようだ。
にしてもやっぱりコイツ軽いな。
「でもそろそろあっちも何とかしないと死んじゃうかもしんないんだけど、例のあれ、実験がてらあいつらに試していい?」
男は摘まんでいた丸薬をどこからか出した透明の小瓶に入れて腰のポーチにしまう。
例のあれ?
「うん。
僕の手持ちは別で使っちゃったから、持ってるなら試してみて良いよ。
でもあの状態で飲ませたとしてもうまく吸収しきれないんじゃないかな。
僕より酷い状態で内臓の動きがほとんどないよ。
ねぇ、もっと近くに連れてって。
僕獣人さんと違って満月の明かりだけで見えるほど夜目はそんなに利かないよ」
そう言いながら男に小さい手を伸ばすとそのまま抱き移る。
そうだな、満月だから月明かりもしっかりしてて気づかなかったが、どっぷり日も暮れてるから人属では不便だろう。
素直に手離したレイブの顔がだいぶ残念そうなんだが、多分レンには見えてないんだろうな。
「うわ、思ったより熱高いじゃんか。
追っかけてごめんね」
熱を確めるのに片手でレンの襟元を少し緩めて細首に触れると驚いて慌て始める。
首筋に革紐が見えたが、あれがレンの商会証だろう。
「副会長がこういう時の為に作ってた飴だよ。
効果は液体のよりは落ちるけど、味にこだわって作った解熱剤。
吐き気止めも少し入ってるって。
これなら口にできるんじゃないかな」
ポーチから出した包み紙から琥珀色の飴を取ると、レンの口元に近づける。
吐くかもしれない危惧からか恐る恐るではあるが、今度は大人しく小さな口を開ける。
「ん、美味しい」
眉尻を下げて幾分ほっとした顔で飴を含むのを確認すると男はそのまま暴れる2人の側に行く。
「どうしたらいい?」
「んー····なるべくすぐに効果は出したいけど、もう末期だよね。
獣人さん用の眠り薬と鎮静剤を2つずつ、それとあの試薬を1瓶出して。
それから····」
レンが男に指示を出し、始まった治療行為を眺めながら思い出す。
『元の世界は魔法はありませんがこちらよりもずっと進んだ文明で、レン、いや、レンカは医者であり薬学者でした』
グランのあの言葉は、多分本当なのだろう。
見た事のない治療を男に手伝って貰いながらも手慣れた様子で施していく。
治癒魔法は一切使わなかった。
でも、ありがとう、レイブさん」
口を尖らせて素直じゃない顔で礼を言うが、そんなにお爺ちゃんと言いたいのか。
だがさっきより少し素がでてるような気がするのは少なからずレイブの言葉に感化されたからかもしれない。
レイブの頬も少なからず弛んでいる。
しかし照れ隠しなんだろうが、ふて腐れた小さな反抗が小動物じみてて可愛らしいな。
「俺もレイブと同じくそう思っている。
忘れてくれるなよ」
忘れられないように形の良い頭を撫でておくか。
手の平に軽く収まるくらいに小さい頭だな。
「ん、ベルグルさんもありがと。
あのね、僕····その、今はホントはお薬が飲めないの。
ていうか今は飲み物も食べ物も受け付けられなくて、モンテ君が、あ、そこの狼の人なんだけど、お部屋で起きた時にお水飲ませてくれたんだけど、その時も吐いちゃったの。
その後建物が急に崩れてきて、僕の事覆い被さって庇ってくれたから降ってきた瓦礫でモンテ君が背骨を粉砕して、そこを通る神経を傷つけちゃって。
ただの切り傷とか切断くらいの怪我だけならそんなに魔力も使わないで元に戻せるけど、粉砕した背骨とかその中に通ってる神経を再生させるのは特に魔力を消費するんだけど、所々挫滅してたから再生に更に消費しちゃって。
短距離だけど転移も2人でしたから今は魔力も少なくなってて、体の気を魔力で補えなくなってて、だから、えっと、内臓も少し弱ってる状態で、えっと、だから薬を飲み込めても消化できずに吐いて余計体力を削っちゃうと思うの」
「「「····」」」
その話のどこからつっこむべきだろうか。
俺達は全員絶句する。
とりあえずレンなりに甘えてみようと努力したのはわかったが、それはきっと状況説明で厳密には甘えてないように思う。
まぁ小さな一歩か。
にしてもまず、普通は切断したら元に戻らないんだぞ。
言ってる事が根本的に規格外だ。
グランが言ってた通り、本当にレンの治癒術は異能とは違うんだろうか。
挫滅した神経を治すとか、本来ならあり得ない。
レンの言う事が本当の事なら、間違いなくそこに転がってる狼属の少年は死んでるし、万が一助かったとしても何かしらの麻痺が残る。
それに魔力で気を補うって何だ?
人属は獣気ではなく気を体に巡らせているってのは聞いた事があるが····。
内臓が弱って何も受け付けない?
レン、お前思ったよりずっと体がヤバいんじゃないのか?!
『レンカが15年ぶりに表に出てきたのはレンだけでは対処できず、このままだと死んでしまうからだと言っていました』
グランの言葉が頭をよぎる。
俺達がレンと再会してからは少なくともレンカと呼んでいた人格は出ていない。
そもそもレンカというのに会った事もないんだが、命の危機は脱しているのか?
今更だがレンの状態にぞっとする。
「そっか。
なら薬はしまっとくね。
ちゃんと自分の状態言えてエライね。
そういうの絶対言わない子だったのに、妬けちゃうなぁ、もう!」
フードを目深に被っているから表情はわからないが、大の大人がむくれているようだ。
にしてもやっぱりコイツ軽いな。
「でもそろそろあっちも何とかしないと死んじゃうかもしんないんだけど、例のあれ、実験がてらあいつらに試していい?」
男は摘まんでいた丸薬をどこからか出した透明の小瓶に入れて腰のポーチにしまう。
例のあれ?
「うん。
僕の手持ちは別で使っちゃったから、持ってるなら試してみて良いよ。
でもあの状態で飲ませたとしてもうまく吸収しきれないんじゃないかな。
僕より酷い状態で内臓の動きがほとんどないよ。
ねぇ、もっと近くに連れてって。
僕獣人さんと違って満月の明かりだけで見えるほど夜目はそんなに利かないよ」
そう言いながら男に小さい手を伸ばすとそのまま抱き移る。
そうだな、満月だから月明かりもしっかりしてて気づかなかったが、どっぷり日も暮れてるから人属では不便だろう。
素直に手離したレイブの顔がだいぶ残念そうなんだが、多分レンには見えてないんだろうな。
「うわ、思ったより熱高いじゃんか。
追っかけてごめんね」
熱を確めるのに片手でレンの襟元を少し緩めて細首に触れると驚いて慌て始める。
首筋に革紐が見えたが、あれがレンの商会証だろう。
「副会長がこういう時の為に作ってた飴だよ。
効果は液体のよりは落ちるけど、味にこだわって作った解熱剤。
吐き気止めも少し入ってるって。
これなら口にできるんじゃないかな」
ポーチから出した包み紙から琥珀色の飴を取ると、レンの口元に近づける。
吐くかもしれない危惧からか恐る恐るではあるが、今度は大人しく小さな口を開ける。
「ん、美味しい」
眉尻を下げて幾分ほっとした顔で飴を含むのを確認すると男はそのまま暴れる2人の側に行く。
「どうしたらいい?」
「んー····なるべくすぐに効果は出したいけど、もう末期だよね。
獣人さん用の眠り薬と鎮静剤を2つずつ、それとあの試薬を1瓶出して。
それから····」
レンが男に指示を出し、始まった治療行為を眺めながら思い出す。
『元の世界は魔法はありませんがこちらよりもずっと進んだ文明で、レン、いや、レンカは医者であり薬学者でした』
グランのあの言葉は、多分本当なのだろう。
見た事のない治療を男に手伝って貰いながらも手慣れた様子で施していく。
治癒魔法は一切使わなかった。
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