《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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105.内乱裏話2~トビドニアside

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「その夜リドラビル帝国の人間は立場関係なく全員悪夢を見た。
ある者は就寝中、ある者はうたた寝中、ある者は白昼夢としてな」
「それ程の力がレンカにはあったのか?」
「みたいやで。
言うたやろ、その頃のレンカちゃんは荒れ狂ってた。
元々持ってた呪力以外にも自家発電したんかもしれへんよ」

 昔、夜中に泣いてたんはレンちゃんやったと思ってたけど、もしかしたらレンカちゃんやったんかもしれんと不意に思い当たる。
『シイカ』に黒い感情が湧きそうになるのを堪え続ける。

「悪夢は先帝の正妃、つまり当時の皇太后が不貞を働いて自分と同じ猫属の子供を産んだところから始まった。
先帝は気づいてたけど不貞の証拠はないまま、その子はやがて皇太子となった。
帝位継承権を持つ弟妹全てを殺してな。
その数年後、皇太后が夫やった先帝を事故死に見せかけて殺害して子供を帝位につかせた。
その直後に皇帝は昔から目をつけてた先帝の専属侍従やった黒持ちの人属を側妃に迎えて妊娠さした。
それを妬んだ皇帝の正妃と後の皇太子によって冤罪にかけられて奴隷に落とされた元側妃は拷問を受けて亡くなった。
先帝の遺言に従ったかつての側近が牢から連れ出したその日の事やった。
亡くなる間際、側妃は細目の虎属の子供を産んだ。
鎖国してる2人は知らんやろうけど、先帝は虎属の皇帝やってん。
それから約30年後、その当時の現在、それからほんの少しの未来まで悪夢の時間が一気に進む。
悪逆と贅沢の限りを尽くす皇帝一族と貴族達。
圧政と増税だけでなく飢饉や疫病に苦しむ国民達。
そんな中で1人の細目の虎属の青年が仲間達と立ち上がる。
せやけど一握りの国民達が皇族や貴族、ましてや皇帝の不正を明らかにして国を正そうとすれば殺されてまう。
立ち上がった彼らは拷問された後、処刑された。
それから数年後、多くの国民が亡くなった。
それでも圧政を止めず一握りの者達のせいで国力が疲弊しきった頃、帝国はそれを見計らって同盟を組んだ周辺国に蹂躙される。
帝国は滅亡し国土は分断され、各国の属国になって国民の半分くらいは奴隷のような扱いを受けんねん。
帝国、ていうても国民は自分らが生き延びるんが精一杯やったから関係あらへんかったけど、他国にも無理難題を押しつけては金品や嗜好品を献上させてたから、その時の鬱屈したリドラビルへの感情がそっちに向くんは当然や。
やがて朝が来て、帝国中が絶望の中で目を覚ました」

  そこで当時を思い出して一旦話を区切る。
思わずため息がこぼれてまう。

「それは····その悪夢で見た過去の不貞は事実なのか?
確か側妃が先帝の子供を産んだのは本当だったはずだが····」
「どうやろな?
証拠はあらへんよ。
ただ後日裁判の場で引きずり出された皇帝の正妃は自分達は被害者やと言い、張本人の皇太后は泣き叫びながら否定して、それを見てた皇帝は項垂れてたらしいわ」

 それは証拠の無い、間違いない事実。
レンカちゃんは皇太后や正妃達、それに当時はレジスタンスのリーダーやった今の国王の夢を繋ぎ合わせて帝国中にばらまいただけや。
俺に関わる部分だけを切り取って。

「そっからはさっき言うてた通り。
レンカちゃんは皇太子に刀持たして一芝居うった。
ただあの刀は主の意思で生身の人間を物理的には傷つけへんようにもできるし、レンカちゃんは転移の前に負った傷以外はどこからも出血してへん。
実際に事が終わって師匠に引き連れられた俺と爺さんが城で合流したら普通に自分で刀引き抜いてたで。
自分でズルズル刀抜く無表情の小っちゃい子供の絵面見た事ある?
ちょっとエグすぎて恐怖やったわ。
その後はレンカちゃんが師匠と爺さんに怒られて、逆に怒り返してた。
行動が遅すぎるってな。
傷はその時に師匠が治したけど、レンちゃんに戻った後は出血が多くて数ヶ月ふせってたわ」

 俺はその時、6年ぶりに今の国王とその番と顔を合わせた。
国王は目の色以外は自分とそっくりな細目の顔やった。
先帝の時代までの直系の皇族は細目が多かったらしいけど、最後になった皇帝とその子供達は猫目のくりっとした目ばっかりやったらしいわ。

『死んだと思っていた。
すまない、あの時この人は私を助けるので精一杯だったんだ。
許して欲しい。
戻ってきて一緒に暮らそう。
お前がいればこの人が私以外の伴侶を迎える必要もないんだ。
家族水入らずで、ね?』
『今更だと思うが、戻って来てくれないか。
番との○○を身代わりにした情けない○○のままでいたくない。
○○として罪滅ぼしをさせてくれ』

 今更血の関係を理由にすり寄られるのに腹が立った。
今でも思い出したらどす黒い何かが胸に蠢く。

 もっと早くに探し出す事もできたのに、そうしなかったのは同じ顔の俺を身代わりにしたお前達だ!
舌を失った時の痛み、恐怖。
どれだけ待っても戻らない、血だらけの自分を薄汚い鍵の壊された牢に1人残して手を取り合って去ったお前達への失望と絶望。
何1つ忘れてない!
忘れられるはずがない!

『2度と関わるな。
お前の大事な番か側妃とさっさと次を作れ』
『やはり、喋れるようになったのか····それなら』

 喜色を浮かべる同じ顔に、腹立たしい身勝手な期待を感じとる。

『やっぱり知ってて不要だから捨てたのかよ!
必要になったらすり寄ってくるあたり、お前も腐った皇族と同じだな!』

 憎しみのこもった目で睨み付けようとして、レンカちゃんと師匠が割って入った。

『トビドニア、君のしがらみは私が断ち切ると言ってあっただろう』

 腹に抱きついてきた小さな体は血を失いすぎてて心なしか冷たいし、体力も限界なんか立つのもやっとみたいに足も震えてて、思わず抱き上げた。
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