《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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166.蓮香3トビドニアside

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「そうして地下牢で6才を迎えたの。
その少し前にいつも以上に妻の機嫌が悪くて、両足を何度も鞭で打たれた。
特に左足は肉も裂けてたし、膿んで一向に治らなかった。
高熱もずっと続いて患部の腫れも酷くなっていくから、このままだと死ぬのは間違いないって直感して、蓮香は1人で足掻いてた。
元々この1年を乗り切れば助かる可能性があっただけに余計危機感もあって、少しずつだけど取り込む呪力も増やしてた」
「どういう事だ?」

 隣の団長が不思議そうに尋ねてくる。
助かるかもしれへんのに、危機感がある?

「国の法律でね、義務教育制度があるの。
7才になる年から学校に通うんだけど、その時の為に6才になると身体検査があるんだ。
国には自治体っていう····領をもっと細かく分けて治めてるんだけど、それまでの自治体主体の検査は受けさせなくても誤魔化せるけど、この時の検査には直接子供を連れて行かないといけないの。
蓮香はそれまでの転生体の記憶があったから、そこに希望を持ってた。
それと同時に、下手をすればそこで虐待がばれる前に殺す選択肢を妻が取る可能性を考えてた。
少なくとも父親とその妻でもめたとばっちりは来ると踏んで、呪力を高めて夢見で誰かと繋がろうとずっと必死になってたんだ」

 レンちゃんの痩せた体がまた緊張してきてんな。
蓮香ちゃんとか同じ体や言うてたし、思い出すんがかなり堪えてるんやろか。

「だけど蓮香が呪力をつけ始めれば、それに触発されて堕ちた神や悪魔も寄ってくる。
神継の病んだ人達の心を唆して憎悪や妬み、嫉みを更に大きくしようともしてくる。
蓮香はそれを取り込みつつ、いくらかは浄化もしてたけどまだ体も小さいし、痩せ細った状態ではなかなか上手くできなくて····そんな矢先に····多分あの日にその通達が来て、予想通り父親と妻とでもめた」

 レンちゃんはふうっと大きくため息を吐いて、深呼吸を何回かして、また話し始めた。

「ちょうどその時に兄の幼馴染みで親戚に当たる少年が本邸に泊まってたんだけど、夢見が偶然彼と繋がった。
そこからはひたすら夢見の力を彼から広げていって、ずっと力を使い続けて····やっと全ての状況を把握した。
母親は鬼逆に戻って翌年には自殺して亡くなってた事も、祖父が神継の叔父と連絡を取って蓮香の安否を確かめようとしてた事も····世の中が虐待された子供にどういう反応を示すのかも」

 またふうっと息を吐く。
胸に感じてる息づかいが、気づいたら浅くなるみたいやな。
少しでもかまへんから体の緊張が取れたらええのやけど。
そう思って背中を擦ってみる。

「蓮香は夢見で祖父と叔父に自分の状況を見せた。
だけどその頃には父親だけじゃなく妻とあの兄も悪意から蓮香の存在を隠してたし、神継の家は敷地も含めて大きくて、個人が簡単には侵入もできない。
血の繋がりがあったせいか父親と兄に夢見を使うのが当時はうまく出来なくて、妻は交遊関係が外にはほとんどなかったから他に助けを呼べるほどの繋がりを見つけられなかった。
何の証拠もないのに公的な機関も入れなくて、正直手詰まりに近い状況で····。
魔法もないから転移なんてできないし、蓮香が使えるのも当時は夢見だけだったから····。
だから今度は兄の幼馴染みに自分の状況を夢で見せて地下牢の上にある離れに火を着けるよう頼んだの。
それを祖父と叔父に知らせて、賭けに出た」

 蓮香ちゃん、6才の子供が命張って賭けに出るってどんだけ過酷な状況やってんやろな。

「結果は蓮香がぎりぎりで勝ったというか、負けたというか····」

 何となく昔を懐かしむみたいにレンちゃんが苦笑した。

「結局祖父や叔父は駆けつけたけど、その時にはもう火が地下牢にも回ってきてた。
だけど火を着けるだけのはずだったその幼馴染みがどうしてか危険を省みず地下牢に助けに来て、外に連れ出したんだ。
その後は····消防····消火活動する人達と一緒に敷地内に押し入った祖父や叔父が神継の一家より先に保護して····」
「足は無事じゃったのか?」

 ベル爺もそこは気になってんやな。
聞く限り、切断したんちゃうやろか?

「足は····危うく切断するところだったけど、たまたま腐った食事に湧いてた蛆を一か八かで膿んだ足に寄生させたおかげで免れたよ」
「蛆を····何故····」

 副団長がかなりドン引いた顔になった。
あの人そういうの苦手そうやな。

 つうか何や、腐った食事て?!
年考えても俺の奴隷時代よりよっぽど過酷やったんちゃうの?!

「蛆は腐った所だけを食べる性質があって、あっちの世界では医療現場で使われる事もあるの。
もちろん医療用の蛆じゃないし、失敗すれば切断どころじゃなかったかもしれないけど、兄の幼馴染みが本当に火を着けてくれるかも、祖父達がいつ助けてくれるかもわからない状況で、やれる事を全部やって延命に繋げていかないと····いつ死ぬかわからないもの。
僕達の千年はそういう事の繰り返しで、気を抜けばすぐに足元を掬われて死に繋がるし、気を抜かなくても比較的すぐに····殺される····から」

 いやいや、レンちゃん?
場の空気完全に凍ってもうたやん。

「蓮香の足には大きい傷痕と障害が残ったけど、そこからは祖父や叔父と公の機関、世論を使って父親一家を社会的に抹殺した。
1度国外に出て必要な学位や資格を飛び級····巻きで取っていったんだ。
そうやって国外で過ごしながら神継が経営してた会社は全部乗っ取っていって、15才で国内に戻って事実上の神継の当主になった。
その後すぐ叔父に代を譲って家名を鬼逆に戻したら、再び外国で過ごした」
「蓮香はどう思ってたんだ?
やはり憎かったのか?」

 そう言う兄さんはほの暗い顔してるな。
レンちゃんが目の前におるから殺気はかろうじて抑えてるけど、獣気はちょこっと漏れてるで。

「憎しみは特に無かったよ。
神継も鬼逆も朔月の愛した息子達の子孫だもの。
ただ歪んでしまった神継から呪力云々の部分を取り去りたかったんだ。
呪いは周りだけじゃなく、自分も蝕むし、科学の発達したあの世界にはもう呪力なんて必要ないもの。
それに神継が歪んでいったのは長い間呪力っていう概念が身近にあった背景が大きいの」
「どういう意味だ?
呪力はこちらで言えば魔法のようなものじゃないのか?」

 全員の疑問を団長が代弁してくれる。

「うーん····あの国には人を呪わば穴2つって言葉があってね。
穴っていうのは墓穴の事で、誰かを呪い殺す時には自分も呪いの返しが来て死を迎えるから墓穴が2つ必要になるっていうところからきてるの。
呪力って、諸刃の剣みたいなものなんだ。
実際、朔月を呪った人達は皆死んでたでしょう。
朔月も呪詛を行った後、死んでる。
因果応報とも言うかな。
今もだけど、蓮香は誰かを憎んだ事はないよ。
むしろ両親も妻も兄も、祖父や叔父にすらもどこかで呆れてた。
ただ····怒りだけはずっと持ってて····多分それは始まりの朔月にはない感情で····転生体の中で少しずつ蓄積していった感情なんだと思う。
終わりの蓮香の代でそれが爆発しちゃったの」

 レンちゃん、今までにないくらいの特大のため息吐いたけど、何や呆れてへん?
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