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168.蓮香5
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「朔月と千年目の転生体だけは必ず愛する者の為に死ぬ事」
しばらくだんまりを決めてから、そろそろと口を開く。
それは朔月が寿ぎを手離した時に取り引きした事の1つだ。
いつの間にかそれぞれの手が腹と胸の辺りを握りしめ、額をトビの胸にくっつけて体を少し離している。
誰もが気づいていただろうが、誰もその事に触れない。
「蓮香はそれをずっと考えていたの。
だから自分の子供だけは作らないと決めてた」
その言葉にふと、レンによく似た青い目の子供を思い浮かべた。
「何故です?
愛する者が自分の子供かどうかわからないでしょう?」
「自分が赤の他人を心から愛する事はないって確信してたの。
多分朔月の記憶が強いからだと思う。
朔月は親之と鷹親を愛してはいたけど、子供への愛情は別格だった。
あの2人と子供達と、どちらかを選ぶなら朔月は間違いなく子供達を選んだと思うくらいには、子供達への母親としての愛情は強かったの。
かといって優劣をつけられるものじゃないよ?
もしそんな状況で子供達を選べば、朔月は後悔したと思うし、子供達の無事を確定させた後で2人の後を追うのは間違いない。
ただ愛した男の人達は特別だけど、子供達は唯一無二の存在で何があっても生きて幸せに、平和に暮らして欲しい存在だった。
それだけなんだ」
朔月は親之と鷹親の為に寿ぎを手離し、子供達の為に命を手離した。
どちらをより愛したかは、きっと朔月にもわからないのかもしれない。
優劣をつけられるものでもなく、愛情の種類が違う。
ただそれだけの違いなんだろう。
「その時の子供達への記憶があって、千年転生し続ける中で理不尽に晒されて殺され続けた記憶を持つ蓮香は、今世でも理不尽に晒されて殺されかけた体験をしたあの時点では他人に怒りしか感じなくなってしまってた。
けれど怒り続けるのも疲れてしまう。
結局最後は他人に期待も何もしなくなってたし、全部どうでも良くて最後の転生なんだからと開き直って好きに生きるって決めてしまった。
そんな自分がもし誰かの為に死ぬとしたら、それは子供以外には考えられないって、そう結論づけたの」
言い終わると何度か深呼吸する。
「地下牢から出て、足の傷を治療してた時に自分の血の事を知ったの。
本当なら輸血が必要な状況だったけど、すぐには輸血できなくて生死の境をさ迷ってた。
その時に夢見で····自分の子供が難病にかかって死ぬ未来、それから自分が死ぬ未来を見た。
夢見の中でも未来視だけは安定してなくて····だけど夢で見た自分の子供は····何よりも愛おしく思えた。
それでも····幼いうちに死なせてしまうくらいなら····あの子を助けられずに先に死んでしまうなら····最初から作らない方がずっとマシだと蓮香は考えて····だけど結局····あの日だけは孤独に耐えきれなくなって····あの1度だけは蓮香が彼を受け入れた。
それ以外ではずっと気をつけてたのに、あの1度で····妊娠してしまった」
「彼、とは····誰····なんだ?」
思わず声が上ずるが、番の蓮香の過去の男の話は聞かずにはいられない。
「地下牢の上にあった離れに火をつけさせた、蓮香にとっても遠縁の親戚にあたる兄の幼馴染み。
あの火事の後、蓮香が祖父と叔父を使ってあの一家に制裁を加えてからは兄の方とは疎遠になったみたいだけど、兄と同じで10才年の離れた人」
「その人はどんな人でしたか?」
副団長の言葉に少しの間沈黙してから口を開く。
「穏やかな、人。
蓮香が彼をどう利用しても、悪態ついて罵っても、怒りをぶつけても····彼の伴侶にはならないと何度諭しても、ただ側で寄り添って蓮香の望みを聞き続けてくれた人。
蓮香が地下牢から出た後も····死ぬまで····多分、死んだ後もずっと支えてくれてる。
地下牢から出てしばらくの間は怒りで荒れ狂ってた蓮香が絆されたくらい····優しくて、どれだけ傷つけるような事をしても裏切るような真似をしても蓮香を一途に想い続けて····だからきっと····最期の最期に····蓮香の望みを叶える為に狂わせた」
小さくすすり泣く声が洩れ、ぱたぱたと大粒の涙が下に落ちる音が微かに聞こえ、トビがそっと背中を擦る。
『····ふざけた事を言わないでよ!
私の事を知らないから!
だからそんな軽はずみな事が言えるんだ!
軽はずみな事を言えば身を滅ぼすだけだっていい加減わかりなよ!』
『····あ、愛なんか····無駄、だ。
そ、れに····もう····だれ、も····傷つ、狂わせ、な····もう····もう、いやだ············怖い』
癇癪を起こしながら怒りと絶望に飲まれるままに吐き出した、あの時のレンの言葉を思い出す。
最期の最期····恐らくレンの言うその彼とは····慣れない手つきで蓮香の腹を刺した黒髪の男だ。
しばらくだんまりを決めてから、そろそろと口を開く。
それは朔月が寿ぎを手離した時に取り引きした事の1つだ。
いつの間にかそれぞれの手が腹と胸の辺りを握りしめ、額をトビの胸にくっつけて体を少し離している。
誰もが気づいていただろうが、誰もその事に触れない。
「蓮香はそれをずっと考えていたの。
だから自分の子供だけは作らないと決めてた」
その言葉にふと、レンによく似た青い目の子供を思い浮かべた。
「何故です?
愛する者が自分の子供かどうかわからないでしょう?」
「自分が赤の他人を心から愛する事はないって確信してたの。
多分朔月の記憶が強いからだと思う。
朔月は親之と鷹親を愛してはいたけど、子供への愛情は別格だった。
あの2人と子供達と、どちらかを選ぶなら朔月は間違いなく子供達を選んだと思うくらいには、子供達への母親としての愛情は強かったの。
かといって優劣をつけられるものじゃないよ?
もしそんな状況で子供達を選べば、朔月は後悔したと思うし、子供達の無事を確定させた後で2人の後を追うのは間違いない。
ただ愛した男の人達は特別だけど、子供達は唯一無二の存在で何があっても生きて幸せに、平和に暮らして欲しい存在だった。
それだけなんだ」
朔月は親之と鷹親の為に寿ぎを手離し、子供達の為に命を手離した。
どちらをより愛したかは、きっと朔月にもわからないのかもしれない。
優劣をつけられるものでもなく、愛情の種類が違う。
ただそれだけの違いなんだろう。
「その時の子供達への記憶があって、千年転生し続ける中で理不尽に晒されて殺され続けた記憶を持つ蓮香は、今世でも理不尽に晒されて殺されかけた体験をしたあの時点では他人に怒りしか感じなくなってしまってた。
けれど怒り続けるのも疲れてしまう。
結局最後は他人に期待も何もしなくなってたし、全部どうでも良くて最後の転生なんだからと開き直って好きに生きるって決めてしまった。
そんな自分がもし誰かの為に死ぬとしたら、それは子供以外には考えられないって、そう結論づけたの」
言い終わると何度か深呼吸する。
「地下牢から出て、足の傷を治療してた時に自分の血の事を知ったの。
本当なら輸血が必要な状況だったけど、すぐには輸血できなくて生死の境をさ迷ってた。
その時に夢見で····自分の子供が難病にかかって死ぬ未来、それから自分が死ぬ未来を見た。
夢見の中でも未来視だけは安定してなくて····だけど夢で見た自分の子供は····何よりも愛おしく思えた。
それでも····幼いうちに死なせてしまうくらいなら····あの子を助けられずに先に死んでしまうなら····最初から作らない方がずっとマシだと蓮香は考えて····だけど結局····あの日だけは孤独に耐えきれなくなって····あの1度だけは蓮香が彼を受け入れた。
それ以外ではずっと気をつけてたのに、あの1度で····妊娠してしまった」
「彼、とは····誰····なんだ?」
思わず声が上ずるが、番の蓮香の過去の男の話は聞かずにはいられない。
「地下牢の上にあった離れに火をつけさせた、蓮香にとっても遠縁の親戚にあたる兄の幼馴染み。
あの火事の後、蓮香が祖父と叔父を使ってあの一家に制裁を加えてからは兄の方とは疎遠になったみたいだけど、兄と同じで10才年の離れた人」
「その人はどんな人でしたか?」
副団長の言葉に少しの間沈黙してから口を開く。
「穏やかな、人。
蓮香が彼をどう利用しても、悪態ついて罵っても、怒りをぶつけても····彼の伴侶にはならないと何度諭しても、ただ側で寄り添って蓮香の望みを聞き続けてくれた人。
蓮香が地下牢から出た後も····死ぬまで····多分、死んだ後もずっと支えてくれてる。
地下牢から出てしばらくの間は怒りで荒れ狂ってた蓮香が絆されたくらい····優しくて、どれだけ傷つけるような事をしても裏切るような真似をしても蓮香を一途に想い続けて····だからきっと····最期の最期に····蓮香の望みを叶える為に狂わせた」
小さくすすり泣く声が洩れ、ぱたぱたと大粒の涙が下に落ちる音が微かに聞こえ、トビがそっと背中を擦る。
『····ふざけた事を言わないでよ!
私の事を知らないから!
だからそんな軽はずみな事が言えるんだ!
軽はずみな事を言えば身を滅ぼすだけだっていい加減わかりなよ!』
『····あ、愛なんか····無駄、だ。
そ、れに····もう····だれ、も····傷つ、狂わせ、な····もう····もう、いやだ············怖い』
癇癪を起こしながら怒りと絶望に飲まれるままに吐き出した、あの時のレンの言葉を思い出す。
最期の最期····恐らくレンの言うその彼とは····慣れない手つきで蓮香の腹を刺した黒髪の男だ。
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