《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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191.私の夢~ドゥニームside

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「ヨハン」
「ドゥニーム?」

 気がつけば、真っ白な空間でヨハンを抱えて座り込んでいた。
あの飾りが愛しい伴侶の精神の核で合っていたのだと胸をなでおろす。

「良かった。
本当に····」
「俺····あ····これも····」

 久方ぶりに見る伴侶の碧い目に安心感と愛しさが沸き起こる。

 だが私とは正反対にヨハンを抱きしめる腕にはガタガタと震える様子が伝わってくる。
悪夢の続きと混同しているのだろうか。

「違う。
確かにここは多分夢の中だが、私の夢の中だ。
もう悪夢は襲って来ない」
「····本当?」

 不安げな、縋るような上目遣いに庇護欲が爆発しそうだ。

「ああ、本当だ。
すまない、ヨハン。
私が自分の事しか考えなかったせいでお前があんな悪夢に····」
「ううん、違うんだ。
俺が両親の事をもっと考えていれば良かった。
俺さ、ずっと両親に愛されてて、それが当たり前に思ってた。
だけどこっちの世界にきて、ドゥニーム以外に頼れる人がいなくなって、それてまた病気を再発したってわかった時に気づいたんだ。
それがどれだけ有難い事で、俺にとって支えだったのか」

 ヨハンが暗い顔で俯いた。
まだ少し震えている。

「あっちの世界にいて、まだレンカさんと知り合ってそんなに間がない状況で外国に手術してもらいに行った時にさ。
あんまり苦しくて怖くて寂しくて····でも両親は俺がさっさと死んで楽になりたいんじゃないかって当時は思ってしまってた····。
一緒に付き添ってくれてた母さんにそう言ったら泣かれて、でも謝るだけだったからやっぱりそうなのかって····。
そしたらその時に近くにいたレンカさんにゲンコツ食らっちゃって」

 顔を上げて懐かしむように苦笑する。
初めて聞く話だ。
ヨハンはあえてこの話を今までしなかったんだろうか。

「病室だったし、手術してくれるイケメン執刀医は何でか爆笑しちゃうし、踏んだり蹴ったりだったんだけど、その後レンカさんに言われたんだ」

 イケメン執刀医····確かイケメンとは顔の良い男だと言っていたな。
外見がタイプだったとかなり前に聞いた事があるが、まさか惚れていたんじゃないだろうな。
初恋の番殿よりも、むしろそのイケメンという男の存在の方が許せない。

 ヨハンは密かに嫉妬する私の気持ちに気づく事もなく続けた。

「親が自分を愛してくれるのを当たり前に思うな。
親だって人間だ。
不健康で可愛げない子供より健康で可愛げのある子供の方が愛しやすいに決まってる。
だけどお前は先行き絶望的な病気でも、可愛げなくても、わざわざこんな所で手術を受けさせようと大金ポンと払ってくれてるだろう。
わざわざ付き添ってんのにお前のひねくれた一言に涙流して傷ついて。
それでもお前を責めもしないだろう。
こんな事愛してもない子供にできると思うな。
で、また1発」

 番殿はやはり脳筋のようだ。
あの刀でしばかれた時の衝撃を思い出す。
まあか弱い力だったから衝撃はあっても痛みはすぐに引いたが。

 ただヨハンの夢をのぞいた後だからこそ、多分番殿が言いたい事が何だったのかはわかってくる。

「ずっとあの時の痛みを思い出しては、言ってる意味を今になって心底理解して····自分が何も恩返しもせずに····それどころか本当の事も言わずに逃げるみたいにこの世界にきて、後になってあんなに大きな愛情を両親がどんな思いで与えてくれてたか自覚して····苦しかった····ずっと····」

 涙が伴侶の頬を伝う。

 愛しい伴侶の涙を指で拭ってやりながら積もりに積もっていただろう胸の内を吐露するそれを静かに聞き続ける。

「再発したのはきっと罰だろうって。
苦しいのも仕方ないって····そう思う事にしたら、楽になれた。
でもずっと悪夢を見てて、それすらも傲慢だって····両親にちゃんと向き合いたいって····だけどそれも、もうできない。
俺は····もうどうしたらいいか····わからないんだ」

 こちらの世界に渡ればもう2度と元の世界には帰れない。
私の魔力と生命力を全て使っても無理だ。
それにあの魔法はあちらからこちらに召還する一方通行の魔法だ。

「すまない」

 嗚咽する伴侶を抱きしめて謝る事しか私はできない。

「すまない、ヨハン」

 伴侶がどれほど嘆いても、願いを叶えてやれない。
涙が乾くまで抱きしめ続けるから、泣いていいから、少しでも胸の内を軽くして欲しいと心から願う。
けれど私の伴侶はそれすら望まないだろう。

 どれほどそうしていたのか。

「ヨハン?」

 不意に聞きなれない、少し高めの声が聞こえて顔をあげる。
いや、聞いた事はある。

「ヨハン、か?」

 次は低い男の声だ。
これも、聞き覚えがある。

 目の前にはあちらの世界の人属の雌雄、男女というものが寄り添ってこちらを見ていた。

「母さん····父さん····」

 ヨハンの呆然とした声が耳に響く。

 そう、目の前の男女は夢で見たヨハンの両親だった。

「ヨハン!
ヨハンなのね!」

 女、違うな。
義母殿がヨハンに抱きつく。

 条件反射のようにヨハンは母親を抱き留めた。

「うん、ヨハンだよ!
母さん、父さんも····会いた、かった」
「ヨハン」

 涙が込み上げるヨハンを義父殿も義母殿ごと抱きしめた。

 そんな3人を邪魔しないようにそっと立ち上がって後ろに下がる。

「これは夢?!
あなたに会えるなんて!」

 義母殿が歓喜にふるえる。

「わからない。
でも、ごめんなさい。
ずっと会いたかったんだ。
自分勝手にいなくなってごめん!」
「本当だ!
俺達がどれだけ心配したか!
だけど今はいいんだ。
とにかく無事で良かった」

 謝罪もあり、責めもして。
だけど間違いなく親子の再会を喜んでいる。

 それにしても、ここは私の夢の中のはずなのに何故この2人が出てくるんだろうか。
ヨハンが喜んでいるのは正直私も嬉しいが、私は正直義理両親をよく知らない。

 3人はひとしりき泣いた後、ぐずぐずと鼻を鳴らしている。
何となく、親子だなと微笑ましく感じてしまった。

 それからほどなくして、義理両親は私を見た。

「ヨハン。
あなたは今どこにいるの?
彼はどなた?」

 義母殿が口火を切る。
私は愛する伴侶を得た赦しを真摯に乞おうと説明を始めた。
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