秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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288.好々爺と禿げ上がらせたい衝動と長男の心の抉り〜ヘルトside

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「早くお嬢様のお迎えに上がりましょう」

 どうでもいいが、セバスチャンがやたら張り切って野営セットに大槍と大鉈と、レイヤードがこれまでの彼の誕生日に贈ったらしい罠系統の魔具をいそいそと準備し始めたんだが、どこに狩りに行くつもりだったんだろうか?

 更にどうでもいいがうちの子供達はセバスチャンが昔から大好きで、セバスチャンもバルトスが産まれた時から子煩悩好々爺執事へと変貌した。

 昔は亡き父、先代グレインビル当主の右腕として大槍片手に戦場を駆け回り最前線で敵を屠っていた。

 更に更にどうでもいいが、私に好々爺だった事は1度としてない。

 好々爺、違った、執事長の奇抜な準備物のお陰で少し冷静になった。

 もちろんあのロリコン野郎が邪魔するなら、いつでも一線交えて可愛い愛娘は返してもらうつもりだ。
手加減なんぞしてやらん。

 もし直後に狸と宰相が元部下のネビル=マクガレノと転移して来なければ、今頃は純白のムササビ娘と気ままな冒険旅をしていただろう。
そう思うと、それはそれで残念だ。

 先触れを握り潰して邸の侵入防止の結界を張り直せば良かったな、と今更ながらに多少後悔してしまう。

 奴らの頭頂部を炎で炙ってチリチリに禿げ上がらせたい衝動をどうしても抑えきれなかった私の落ち度だ。

 だがそんなもので気が済むはずもない。

 余談だがその後しばしの間は狸があまり人前に出なくなり、宰相は城にあてがわれている自らの執務室に籠城したとか、しないとか。

 国王は滅多にしなかった王冠を深く頭に被り続け、宰相の表業務は補佐を務める息子にさせるようになったとか、しないとか。

 ざまあみろ。
もちろん、当然に、そんな事で、娘を想う父のこの怒りが治まると思うなよ。

 だからアドライド国、ヒュイルグ国の両国の狸とロリコン野郎な国王に承認させた。

 もしもヒュイルグ国にいる息子か娘が私かバルトスに何らかの助けを求めた場合には、今度こそ私達のどちらかが駆けつける事。
その際に起きる何らの混乱の責も問わない事。

 本来の親善外交の期間を過ぎた後、娘との再会をどのタイミングで行うかの判断はグレインビル侯爵家の采配に任せる事。

 これらを書面にさせてやっと矛を収めてやった。
いつで矛は構えているがな。

 狸達はまさか妹に泣きつかれたバルトスが王太子を引き連れてヒュイルグ国への入国を強行するとは思っていなかっただろう。

 可愛くも我慢強い天使が泣きつく可能性の低さはもちろん、まさか真冬に、あの雪に閉ざされる最北端の国に渡れるはずがないとでも考えていたはずだ。

 まあ私もそう考え、行くとしたらそれができる私だと高を括っていた。
あのエセ野郎、いつか殺す。

 それにしてもここ数年の狸達はたかが一貴族令嬢のはずのアリアチェリーナ=グレインビルに干渉し過ぎだ。

 確かに色々と目立つ行動を取ってしまった事は否めない。

 それでも王族の仲間入りをさせようとしたのは行き過ぎではないだろうか。
あの子はグレインビル家の血を引いていない元孤児という素性だし、何より魔力が全く無いのは王家からすれば由々しき問題だろう。

 グレインビル侯爵家の令嬢であり、他ならぬ私が認める私の娘だという理由だけでは····まさか····。

 そう考えて、まだ断定するには早すぎると頭を振った。

 どちらにしても、娘が望まない事を強要するのだけは何人たりとも許さない。

 そう心に誓ったその日の、バルトスが弟妹達と合流した夜。

『父上、俺のめそめそ天使は可愛いかったぞ!
それに再会した時にデレデレに甘えてくるのも、すやすやに眠る寝顔も全部天使だ!
ふっ、俺の勝ちだな、父上!』
「くっ、私の可愛い娘はちょっぴり父親と距離を置きたいお年頃なだけだ。
私の方が毎日長時間通信をしていた!」

 やたら興奮して連絡してきた。

 息子の勝利宣言に思わず魔具をそのまま握り潰しそうになった。
ちょっとメキッて鳴った気がするが、空耳だろう。

 兄と妹の戯れに嫉妬するはずが····。

『ふっ、父上。
今回は俺が役得だな』
「うぐっ、バルトスめ」

 長男からの心の抉りがハンパない。
ノリに乗っているな。
何かあったのだろうか?

 父の心が血を流しているぞ。
だが私の屍はまだ越えさせてやらん。
だが私も混ぜてくれ。

『それから、ちゃんと受け入れられたみたいだ』
「そうだな」

 目覚めてすぐにあの子と話した私も、直接話す息子達もそれぞれがそう判断したのなら、間違いないのだろう。

 心の歪みが無くなったとまでは思わないが、せめて誰かの為の行動で罪悪感を覚えたり、そこからくる苛立ちは無くなればと親として切に願っていた。

『あの懐中時計を数週間後に使うらしい』
「そうか。
体は耐えられそうか?」
『大丈夫だ。
あのエセ爽やか野郎の力を借りるらしいしな。
まあそれでも倒れると思うが、今は俺もレイヤードもニーアもいる』
「頼もしいな。
心の方はどうだ?
大事な者を喪う覚悟は?」
『覚悟の方は問題ない。
父上もわかっているように、俺の可愛い天使は先の事はちゃんと見ている。
だけど喪ったらまた傷つくのは間違いない。
ココと母上の件から長く葛藤して、やっと爆発して、今度は今の天使が1番執着している精霊を喪う事になるからな。
それに、前世だったか?
その頃の自分に戻れば、また胸の内で何かが変わるかもしれない』

 前世か。

 初めてその話を聞いたのはミレーネが亡くなってすぐだ。
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