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316.幻の冬寒天と健康クッキーと兎の花をつける食虫植物〜ガウディードside
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『これ、美味しいですね。
従兄様のカフェで幻の冬寒天として販売してはいかが?』
アリーは初めてアリリアと赤カバオ瓜のミックス果実水を飲んだあの日、そう言ってくれた。
寒天にする事で、切ると1日で駄目になる赤カバオが数日は日持ちもする。
元々ひと月ほど寝かせるから、数個程度なら先着予約販売という形で在庫管理もしやすい。
定番化するには数が足ない、とはいえ元々瓜臭さもあって廃棄されていたような代物。
それを加工して商品価値を高めた事で、今ではただのカバオ瓜よりもずっと高値がつくようになった。
本当にうちの従妹のフォンデアス領への貢献度は群を抜いて高いよね。
うちの領の為にもアリーにはこれからも末永く、できるだけ健康的に生きてもらいたいと心から思っている。
そんなアリーは昨年の夏頃、食欲が一段と落ちていた。
それでも母上の特製クッキーは尽力した甲斐あって受けつけたらしく、俺は特に足繁くグレインビル邸に通って届けた。
毎年秋から冬にかけては時間が取れなくなるのもあって、アリーの夏の体調管理に焦点を当てていたんだ。
毎年秋にある商業祭の前後はそれぞれの国に帰路につく商人達のカフェや領への問い合わせと商談が舞い込んでかなり忙しくなってしまう。
冬は冬でここ何年か成人の儀の手土産にケーキの依頼が王家から舞い込むから、その打ち合わせもある。
時間ができる頃にはグレインビル領がこの国でどこよりも早く雪に閉ざさされてしまう。
王都の方で晴天の時に行ってみようかとも考えた事はあったんだけどね。
冬のグレインビル領は隣国のヒュイルグ国ほどではないにしても、天候は侮れないんだ。
山間地だからいつ吹雪くか正確にはわからないし、下手に行くと遭難する。
雪解けが始まる今の時期でないと可愛い従妹の顔を見に行けなくて断念するしかない。
結果的に何かを贈る事しかできなくなってしまう。
もちろん今年の冬は母上のクッキーに加えてアリリアの実と赤カバオ瓜で作った寒天を贈ったよ。
悪魔な従弟達に渡せば進んで届けてくれる。
アリーにあーん、て食べさせる口実ができて悪魔達も喜んで受け取ってくれたんだけど、俺の中の父性からかな。
初めてアリーがカバオ瓜を食べて笑ってくれた時みたいに、俺もあーんしたいなって思ってしまった。
でも俺はその他大勢と同じ。
悪魔達みたいに転移魔法は使えないから仕方ない。
まああんな魔法を使えて、大容量のマジックバックなんてバカスカ作れるグレインビル家の悪魔達がおかしいんだけどさ。
そうそう、母上のクッキー。
昨年1年、母上は可愛い姪の為に栄養だけじゃなく味を飽きさせないように長年仕える専属侍女と研究した、あの卑しいオッサンも大好きなクッキー。
『従兄様、材料を安いのに変えて庶民や学生向けに健康クッキーで売り出すのはどう?』
なんて言いながら特に美味しくて売れそうだと感じたクッキーのリストと助言をアリーから貰ったんだ。
商業祭前で、アリーと顔を合わせたのは去年はあれで最後だった。
もちろん助言に従って母上のレシピを元に一部を安い材料に変え、昨年後半から販売してみた。
まずは学園、コード領、ブルグル領にある学生や職人の利用する食堂で先行販売。
そうしたらすぐに人気に火がついた。
この春から王都のカフェでも平民、貴族に限らず買い求められるように王都のカフェでも販売できるよう調整してる。
そんなこんなの1年だった。
そして恐らく懇意にする商会長達もアリーが帰国してからはそれぞれが試作品や手土産と称して食べ物を定期的に持ちこんでは色々と助言を貰いながら、少しでもたくさん食べさせようと密かに競い合った。
だからかな。
商業祭前までは従妹の頬もいくらかはふっくらしてきていた。
食用花はそのお礼だと思う。
元々アリーは珍しい花の苗を集めるのが趣味なんだ。
中には食虫植物なんていう、虫を食べる植物もある。
余談だけど叔母上と実の従妹のルナチェリアのお墓にあの植物を見た時は引いた。
愛馬のポニーちゃんやお馬さん3兄妹に干し草食べさせる時の顔で草に餌やりしてうっとりしているのを見て、いや、見なかった事にした。
まあそんな感じで集めた花の中から人が食べられる小花とシュガーコーティングを教えてくれた。
間違っても虫を食べる草は混ざっていなかった。
そこは念入りに確認したから間違いない。
そして冬はやはり体調を崩す事が増えたと聞き、予想通り王城で行われる成人の儀、令嬢達はデビュタント式と言って白を基調にしたドレスで華やかに踊って貴婦人の仲間入りを祝う王家主催の場にはいなかった。
わが国の第2王子と共に誘拐された際に王子を庇い、いち早く無傷で逃した事による報奨によってアリアチェリーナ=グレインビルの名が読み上げられたけれど、従兄様としては少し寂しく感じた。
だって赤子の頃から虚弱体質のせいで必死に生きて、やっと成人まで成長した従妹なんだよ?
妹のクラウディアの時とはまた違った感慨があるんだ。
エスコートやファーストダンスは魔王やあの悪魔達の誰かがしただろうけど、何番目かのダンスは一緒に踊りたかった。
そんな思いと成人のお祝いを込めて、贈り物はかなり奮発したと思う。
それから····食虫植物も贈った。
アリーでなければ間違いなく縁を切られそうな代物。
兎のような可愛らしい花をつける植物をオギラドン国に行った時にたまたま見つけたら、実は食虫植物だったんだ。
まだ南の商会のカンガルー属のチャガン会長はアリーが食虫植物を愛でるのを知らないから、先手を打てて良かった。
俺の所にあの果実水が返礼の品として贈られたという事は、喜んでもらえたという証拠だ。
そしてそれを見た時、今俺の所に持ち込まれている案件も含めてアリーに解決してもらう時だと馬を走らせた。
※※※※※※※※※
後書き
※※※※※※※※※
これにてガウディードsideは終了です。
ウサギゴケっていう食虫植物が本当にあるんです。
花が兎っぽくて可愛らしいので、1度検索してみて下さい。
従兄様のカフェで幻の冬寒天として販売してはいかが?』
アリーは初めてアリリアと赤カバオ瓜のミックス果実水を飲んだあの日、そう言ってくれた。
寒天にする事で、切ると1日で駄目になる赤カバオが数日は日持ちもする。
元々ひと月ほど寝かせるから、数個程度なら先着予約販売という形で在庫管理もしやすい。
定番化するには数が足ない、とはいえ元々瓜臭さもあって廃棄されていたような代物。
それを加工して商品価値を高めた事で、今ではただのカバオ瓜よりもずっと高値がつくようになった。
本当にうちの従妹のフォンデアス領への貢献度は群を抜いて高いよね。
うちの領の為にもアリーにはこれからも末永く、できるだけ健康的に生きてもらいたいと心から思っている。
そんなアリーは昨年の夏頃、食欲が一段と落ちていた。
それでも母上の特製クッキーは尽力した甲斐あって受けつけたらしく、俺は特に足繁くグレインビル邸に通って届けた。
毎年秋から冬にかけては時間が取れなくなるのもあって、アリーの夏の体調管理に焦点を当てていたんだ。
毎年秋にある商業祭の前後はそれぞれの国に帰路につく商人達のカフェや領への問い合わせと商談が舞い込んでかなり忙しくなってしまう。
冬は冬でここ何年か成人の儀の手土産にケーキの依頼が王家から舞い込むから、その打ち合わせもある。
時間ができる頃にはグレインビル領がこの国でどこよりも早く雪に閉ざさされてしまう。
王都の方で晴天の時に行ってみようかとも考えた事はあったんだけどね。
冬のグレインビル領は隣国のヒュイルグ国ほどではないにしても、天候は侮れないんだ。
山間地だからいつ吹雪くか正確にはわからないし、下手に行くと遭難する。
雪解けが始まる今の時期でないと可愛い従妹の顔を見に行けなくて断念するしかない。
結果的に何かを贈る事しかできなくなってしまう。
もちろん今年の冬は母上のクッキーに加えてアリリアの実と赤カバオ瓜で作った寒天を贈ったよ。
悪魔な従弟達に渡せば進んで届けてくれる。
アリーにあーん、て食べさせる口実ができて悪魔達も喜んで受け取ってくれたんだけど、俺の中の父性からかな。
初めてアリーがカバオ瓜を食べて笑ってくれた時みたいに、俺もあーんしたいなって思ってしまった。
でも俺はその他大勢と同じ。
悪魔達みたいに転移魔法は使えないから仕方ない。
まああんな魔法を使えて、大容量のマジックバックなんてバカスカ作れるグレインビル家の悪魔達がおかしいんだけどさ。
そうそう、母上のクッキー。
昨年1年、母上は可愛い姪の為に栄養だけじゃなく味を飽きさせないように長年仕える専属侍女と研究した、あの卑しいオッサンも大好きなクッキー。
『従兄様、材料を安いのに変えて庶民や学生向けに健康クッキーで売り出すのはどう?』
なんて言いながら特に美味しくて売れそうだと感じたクッキーのリストと助言をアリーから貰ったんだ。
商業祭前で、アリーと顔を合わせたのは去年はあれで最後だった。
もちろん助言に従って母上のレシピを元に一部を安い材料に変え、昨年後半から販売してみた。
まずは学園、コード領、ブルグル領にある学生や職人の利用する食堂で先行販売。
そうしたらすぐに人気に火がついた。
この春から王都のカフェでも平民、貴族に限らず買い求められるように王都のカフェでも販売できるよう調整してる。
そんなこんなの1年だった。
そして恐らく懇意にする商会長達もアリーが帰国してからはそれぞれが試作品や手土産と称して食べ物を定期的に持ちこんでは色々と助言を貰いながら、少しでもたくさん食べさせようと密かに競い合った。
だからかな。
商業祭前までは従妹の頬もいくらかはふっくらしてきていた。
食用花はそのお礼だと思う。
元々アリーは珍しい花の苗を集めるのが趣味なんだ。
中には食虫植物なんていう、虫を食べる植物もある。
余談だけど叔母上と実の従妹のルナチェリアのお墓にあの植物を見た時は引いた。
愛馬のポニーちゃんやお馬さん3兄妹に干し草食べさせる時の顔で草に餌やりしてうっとりしているのを見て、いや、見なかった事にした。
まあそんな感じで集めた花の中から人が食べられる小花とシュガーコーティングを教えてくれた。
間違っても虫を食べる草は混ざっていなかった。
そこは念入りに確認したから間違いない。
そして冬はやはり体調を崩す事が増えたと聞き、予想通り王城で行われる成人の儀、令嬢達はデビュタント式と言って白を基調にしたドレスで華やかに踊って貴婦人の仲間入りを祝う王家主催の場にはいなかった。
わが国の第2王子と共に誘拐された際に王子を庇い、いち早く無傷で逃した事による報奨によってアリアチェリーナ=グレインビルの名が読み上げられたけれど、従兄様としては少し寂しく感じた。
だって赤子の頃から虚弱体質のせいで必死に生きて、やっと成人まで成長した従妹なんだよ?
妹のクラウディアの時とはまた違った感慨があるんだ。
エスコートやファーストダンスは魔王やあの悪魔達の誰かがしただろうけど、何番目かのダンスは一緒に踊りたかった。
そんな思いと成人のお祝いを込めて、贈り物はかなり奮発したと思う。
それから····食虫植物も贈った。
アリーでなければ間違いなく縁を切られそうな代物。
兎のような可愛らしい花をつける植物をオギラドン国に行った時にたまたま見つけたら、実は食虫植物だったんだ。
まだ南の商会のカンガルー属のチャガン会長はアリーが食虫植物を愛でるのを知らないから、先手を打てて良かった。
俺の所にあの果実水が返礼の品として贈られたという事は、喜んでもらえたという証拠だ。
そしてそれを見た時、今俺の所に持ち込まれている案件も含めてアリーに解決してもらう時だと馬を走らせた。
※※※※※※※※※
後書き
※※※※※※※※※
これにてガウディードsideは終了です。
ウサギゴケっていう食虫植物が本当にあるんです。
花が兎っぽくて可愛らしいので、1度検索してみて下さい。
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